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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第三章 冒険者編
41/50

第41話 合間

 冒険者は、たしかに収入が多い……しかし、冒険のための支出がとても多い。

 そして、それをケチる冒険者は早死する。


「……わかった、なかったものは取り寄せておく。

 しかし、カイトは凄いな……俺なんかは一生触れることも無い高級品や、魔石をこんなに……」


「やっぱり高級品は品質や使い心地が違うので、それで生き死にが決まります。

 魔石も、つかうのをケチると、死にますからね」


「息子を冒険者にしようかと思ったが……やめとこう」


「本人次第ですよ、何事も」「にゃーん」


 道具屋に次のダンジョン探索のための発注をする。

 その品物、魔石の量に驚かれてしまう。

 武器防具屋でも装備の質や、それを直す費用に引かれてしまう……


「カイトは凄い仕事をしてるんだな……」


「そう考えると、危ないのに儲からないのねー」


「お金のためにやるならもっと違う仕事したほうが良いよね、それこそギルドの指導に回ったり、貴族の子供の家庭教師とか……そのための箔付けにダンジョン攻略を頑張る冒険者もいるからね」


「父さんも母さんも全然知らなかったよ……カイトは凄いな」


「そうよぉカイトは自慢の息子なんだから、だからお願いだから命は大切にね」


「わかってる。ノアもいるし、ミーナに何かあったら帰ってきてもダスおじさんに殺されるからね」


「ダスはなぁ……二人がダンジョンに行くと毎日深酒につきあわされて……」


「はぁ……荷物が届いたら、今度は一週間は戻ってこれないからね、父さんも体壊さないでくれよ」


「き、気をつける」


「お店に行かないで家で飲めばいいのに」


「そうだなぁ、ダスんちは……駄目だな、たまにはうちで呑むかな」


「母さんも大変だな。

 少しは家にもお金入れられるから、あと、家魔道具今回発注したから届いたら工事だよ」


「あら~いい息子を持って私、幸せ」


「肩身が……」


 命をかけているから、多少は同じ年の人間よりは親孝行できたりはする。

 学校に行けるのも親のおかげだからな……


「それじゃあ行ってくるよ」


「ああ、ミーナちゃんによろしくね」


「ダスは俺が抑えておくから……頑張れ!」


「いや、今度の打ち合わせだからなぁ……」


 俺は親と別れて教会へと向かう。

 教会も何やら大きくなっている。

 冒険者への対応する場所も必要だし、冒険者からの寄付も増えている。

 ミーナはここにいる間は聖職者として教会の手伝いもする。


「お疲れ様ミーナ」


「ちょっとカイト、急いで来て、ノアちゃんもお願い」


「けが人か?」


「うん、数人……いい?」


「もちろんだ」


 こんな感じで俺も手伝うことも多い。

 回復魔法と医療魔法、お互いの足りないところを補うことで、より効果は高まる。

 長期のリハビリで戦線を離脱する冒険者が早期に復帰できたりと、非常に恩恵は大きい。

 俺も暇さえあれば協力をできるだけしていくつもりだ。

 医療魔法も研究が始まって使える人間も増えていくだろうけど、まだまだ希少な魔法であることは確かだし、正確な人体構造に対する理解が有ればあるほど効果が上がる。

 研究のために徹底して使いまくった俺とノア以上の使い手は、絶対にいないという自信がある。


 数名の欠損を含む冒険者の重症例を治療して外に出るとすっかり暗くなっていた。


「ちょっと遅くなっちゃったけど、ご飯にしよっか」


「そうだね。新しい店も増えたから選ぶ楽しみもできた」


「そう言えば、大きな街から来たっていう料理人がはじめたお店行ってみない?」


「よし、そこにしよう。ノアが駄目だったらいつもの店だね」


「そうね。入れると良いわね」


 少し馴れてきたが、まだ見慣れぬ街の中を歩く。

 俺の頭上とミーナの肩を楽しそうに渡り歩き身体を擦り寄せるノアの愛くるしさと、ミーナの美しい容姿がすれ違う人々の視線を集める。

 目的の繁華街は教会からそれほど遠くない、自然と飲食店系の店が並ぶ場所が出来上がっていたという。村は急速に発展したせいで雑多な印象を受けるが、それぞれ自然と以前お店があった場所に店が集まるといった具合で自然と区画ができていた。

 繁華街はまさに書き入れ時と行った感じで賑わっている。

 冒険者たちは今日の冒険譚をつまみにグラスを傾けて、生きて帰れた幸運を喜び合っている。

 ただ単に酒が好きな人間は、彼らの冒険譚を楽しみに集まっている。


「外の席ならいいって!」


「いいね、ちょっと寒いけど……俺とノアでなんとかしちゃおう」


 件のレストランは外にウッドデッキがあってその席ならノアもいても良いことになった。

 少し肌寒いので店の中は大盛りあがりだったが、ウッドデッキは空いていた。


「ノア、適当に風遮って暖かくしようか」「にゃ!」


 俺とノアでデッキ部分に結界を展開して外からの風を防いで、心地よい温度にコントロールする。

 

「別に戦うわけでもないから、強度はつけなくていいよね」「にゃー」


「空も見えるし、最高ね」


「いらっしゃいませー……って、あれ? なんか温かい??」


「注文お願いします」


「あっはい!」


 とりあえずおすすめなんかをいろいろと頼む。

 店員さんは頭をかしげながら戻っていった。


「と、いうわけで注文した品が届き次第、次のアタックの日取りを決めよう」


「ごめんね全部任せちゃって」


「いいよいいよ、でも、やっぱり二人だときちんと準備しても一週間が限界だね」


「パーティかぁ……」


「お互い勧誘は凄いよね……二人でって誘いも多いんだけど……」


「……今まで組んでたのが、Sクラスメンバーだからなぁ……」


「学園は規格外だよね……」


 やっぱり冒険者はピンからキリまでいる。むしろこんな地方都市の低級新興ダンジョンに挑むとなるとキリの方が多くなる。


「前衛盾、前衛剣、俺が中衛バランス、ミーナも中衛で回復、普通に考えれば後衛の火力、うちにはノアがいるから火力2枚かな、理想は物理と魔法だよね」


「カイトとノアは支援・撹乱に徹底したときが一番ハマるんだけどね……」


「ミーナの前衛・回復も凄いんだけど、流石にもう一枚回復が必要になっちゃうからねぇ……」


 ミーナの重武器による蹂躙はSクラスの学友たちも感心していた。


「一度冒険都市に行くしか無いかなぁ……」


「それが現実的かもね……」


「おまたせしましたー……って、絶対ここ温かいですよね!?」


 店自慢の食事に舌鼓をうって、店員さんからの質問攻めとともに、夜は更けていく……




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