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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第三章 冒険者編
40/50

第40話 成長を実感

「……ミーーーーーーーーーナーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 ダスおじさんが猛烈な勢いでミーナに突進してきた。

 ミーナはダスおじさんの目の前から姿を消し、背後に回り込み、くるっとダスおじさんを回転させ、ぎゅっと一度抱きしめて。


「ただいま、お父さん」


 と言って身を離す。

 あまりの早業にダスおじさんは何が起きたのか理解できないでその場に立ちすくんだが、再び再稼働して抱きしめようとしたとき、すでにミーナは自分の家に向かって歩きだしていた。


「ダスおじさん、今のミーナの動きを捉えられるのはS級冒険者くらいだよ。ただいま」


「お、おう……おかえりカイト、それにノア!

 すっかりでかくなったな……ミーナはやらん「もういいから」」


 俺も見慣れない街を昔の記憶を頼りに家に帰る。

 多くの冒険者で街は賑わっている。

 知らない人のお店も多く、本当にネオの村なのか不安になる……

 しかし、見慣れた家を見つけると、その不安もかき消えた。


「にゃにゃ!」


「ああ、行こう!」


「あとでなカイト!」


「ダスおじさんも少し落ち着いたほうがいいよ」


 へいへいといった感じでスキップしながら家に帰っていった。

 ダスおじさんも嬉しいんだな……

 うちはどうだろう? 俺は不安な気持ちを隠しながら扉を開く。


「「おかえりなさい&卒業おめでとう!!」」


 扉の中が真っ暗で一瞬ドッキリしたが、照明がつくと同時に抱きしめられた。

 ……魔法で探知していたので知っていたけど、無粋なことはしない。


「ただいま父さん、母さん」


「にゃにゃにゃ!」


「あらー、ノアちゃんも、それにカイトもすっかり大人になっちゃって……」


「……もう父さんではカイトの相手にならないな、励んだんだな。偉いぞ」


 二人の言葉がぐっと心を熱くした。

 

 それからは家族水入らずでたくさんのことを話した。

 学園での数々の話を聞いた親は、少し引いていた。

 よ、よく生きて帰ったね。と引きつった笑顔になっていた。

 それでも、この心地の良い時間は、俺の凝り固まった心をゆっくりと解してくれるようだった。


 流石に少しゆっくりしようと考えていたが、そうも行かなかった……

 学園Sクラス卒業者で冒険者志望、今急速に株が上がっている他属性使い、しかも全属性の魔法使い。

 さらには回復魔法が使える冒険者のコンビ……


「君がカイトくんだろ!? うちのパーティ孤高の鷹は君たちの参加を心から歓迎するよ!?」


「今ならパーティ参加で報酬5%アップ!」


「三ヶ月パーティに参加してくれたら王都の有名レストランのお食事券をつけるよ!」


「どうかな、一ヶ月だけお試しということでうちのパーティに入ってくれたら、王都で大人気のホテル宿泊券つけちゃうよ!?」


 ……新聞の勧誘だろうか……

 外に出るとこんな調子で勧誘合戦が開始されてしまう。

 しばらくしたら収まるだろうと思っていたけど、一向に収まる気配もない。

 結局俺とミーナは身体をなまらせないためにもペアでダンジョンに挑むことにした。

 ダンジョン内でのほかパーティへの過度な干渉はギルドから厳しい注意を受けるので、それを無視する冒険者はいない。


「はぁ……ようやく静かな日々を手に入れたわね……」


「ダンジョンの中が平穏っておかしいよね」


「にゃー……」


「ノアちゃんともゆっくり過ごせるし。

 でも、この階層だと少し退屈ね……」


「ははは、一応駆け出し冒険者何だけどね俺たち、あの学校ですごい人達を見てきたからね」


「ただ、油断はしないわ!」


「にゃ!」


 以前師匠と先生と歩いたこの道を改めて歩く。


「……こんなに狭かったっけ?」


「うーん、私は初めてだから……こんなもんじゃない?」


「そうか、そうだよなぁ……」


 あっさりと第一階層を抜ける。


「少し休憩して、もう少し進んでみようか?」


「ええ、まだまだ全然疲れてないから大丈夫よ」


「にゃにゃーん!」


 疲労感もなくリラックスできている。

 まぁ、超人達の中で自分の実力以上の場所に何度も突入してきたからか、大抵のことには冷静に対応できている。

 

「……うーん……今何階層だっけ?」


「14階層よね?」


「間違ってないよな……こんなに楽でいいのか?」


「あら、油断はいけないわよ? でも、まぁ、そういう感想になるわよね」


「にゃ……」


「あそこがどれだけ異常だったか今更痛感した」


「彼らが子供扱いされる場所が国の中枢だと思うと、頼もしいわね」


「確かに」


「さて、そろそろ帰ろうか」


「そうね、いい運動になったわ」


「今36階層が最高記録だっけ?」


「ギルドではそう聞いたわね」


「ミーナ」


「な、なに?」


「真面目にパーティ組んで、踏破を目指さないか?」


「あ、そっちの話。うーん、パーティ選びとか色々あるだろうけど……

 挑戦してみるのもいいわね。

 12階層でも諦めた素材も多いし、もったいないしね」


 やはりペアだと持てる道具も、持ち帰れる道具も限界が早い。

 今回の探索でも、前半の素材を捨てながらこの階層の素材を持って帰っている。

 そこまで高価なものはないが、せっかくお金になるなら持ち帰りたい。


「これからは、こういう収入で、自分で生きていかないといけないんだもんな……」


「なに悲観的な顔してるの、もうすでに昔だったら数年分の収入を背負っているのよ?」


「……そうだね、今日はごちそうだなノア!」


「にゃにゃにゃん!!」


 帰り道も丁寧に魔物を処理しながら、驚くほどあっさりと地上に戻って来た。

 地上部に作られた迷宮入り口周囲の前線基地に魔物が殺到していることもなかった。


「おお、初めてのダンジョン探索なのに5日も戻ってこないから心配したぞ」


「軽い運動のつもりが、少し様子を見てきました」


「そうかそうか、さすがは学園卒業生だな。素材は買い取るか?」


「はい、今回のは全部お願いします」


 特に希少な品もなかったので、俺とミーナが背負っていた素材をすべてギルドに渡す。


「……カイト……何階層まで行ったんだ?」


「12階層ですよ?」


「……学園って凄いんだな……」


「俺もそう思います」


 村の一般の生活をしている人の5年分の年収を手に入れた。

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