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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第二章 王都学園編
38/50

第38話 これぞ冒険

「ティルト! 右から追加で3体!」


「ベリアさん! 左をお願いします! 右仕掛けます!」


「ノア、追加の奴らを止めるぞ」


「にゃ!」


 試験会場であるダンジョンは洞窟型の典型的なダンジョンだ。

 中は大変広く、入り組んでいると言うよりは巨大な空洞を壁や柱で支えているような作りになっている。天井も高く閉塞感も受けにくい、天井や壁が薄っすらと発光しているので洞窟なのに視野は確保されている。

 一方で、場合によっては魔物が四方から寄ってきてしまい思わぬ連戦を余儀なくされたりする。

 俺たちは、俺とノアによって音を防ぎ、戦いの気配が広がることを防いでいる。

 それでも断続的な戦闘の持続は珍しくない。


「ふぅ、片付いたな」


「剥ぎ取りは任せてね!」


「怪我はない? 今のうちに水分なんかの補給もしておいてね」


 ミーナは、実は強い。

 メイスを使っているけど、あれ、俺でも振り回される重量がある。

 父親からしっかりと受け継いだ力がある。

 しかし、重量のある打撃武器は盾の天敵だな、さっきの大盾を持ったゴブリンも盾ごと粉砕されるとは思わなかったろうに……

 同じ盾使いとしてティルトもちょっと引きつった笑いが出ていたのを俺は見逃さなかった。

 実はあの武器は俺が考案した。

 非戦闘時は3キロほどだ、戦闘時に魔力を通すと周囲の土や石を取り込み巨大なハンマーメイスに変化する。魔力による物質変化の実験で作った試作品だが、色々と応用が効きそうだ。


「実習でも魔物相手はしているけど、これだけハードなのは初めてだな」


 バイトは自慢の大剣の血糊を大まかに取って俺に渡してくる。

 洗浄魔法で細かな汚れや脂を取りきる。刃こぼれなどが有れば魔力で直しておく。

 刃こぼれをそのままにしておくとその場所から剣がだめになっていく。

 もちろん冒険が終わったらきちんと時間と素材をかけて調整が必要だけど、この魔力によるなんちゃって研ぎは剣の寿命を伸ばしてくれる。

 これも、遊び半分で考えたら今では魔法使いの大事な仕事になっている。

 魔法使いの仕事が増えたが、価値も上がったので論文は高く評価された。

 もちろん本職の職人による調整の重要性は熱く語ったので、そっちの職人さんから糾弾されることもなかった。鍛冶は浪漫だよ!

 と、言うわけでみんなの小休止と装備の整備も終わり、またダンジョンを進んでいく。


「まさにRPG……燃える……」


「にゃ!」


 この冒険している感は、やはり男の子として惹かれるものが有る!


「にゃにゃ!」


「ベリア、ミシア前方にオークの集団、数は……12、気がついてないから数を減らすよ」


 鎧で武装した豚人間、オーク。食欲旺盛で力も強い、集団で移動していることも多く、偶発的に戦闘になると結構危ない相手だ。


「わかった」


「わかったわ!」


 ベリアの弓は音もなくオークの額を貫く。

 ビクリと身体を震わしその場に倒れ込む、強化しているけど、凄まじい腕前だ。

 オークが異変に気がつくと同時に死体が火に包まれて火炎が竜巻のように沸き起こりオークを包み込んでいく。逃げ遅れた数体が巻き込まれた。

 風と火の魔法は相性がいい。

 音と熱、光はノアが周囲から隠している。

 俺は全員の補助をしながら前衛の二人についていく。

 火炎から逃れたオークがこちらに向かってくるが、一体は額に矢を撃たれ崩れ落ちる。

 風の刃で足を落とされ、オークの集団、数の優位を削っていく。

 ティルトは3体のオークの注意をひきつけ、見事に受けきっている。

 バイトの大剣は確実に敵を仕留めていく。

 俺は前衛二人を補助するように敵を牽制しながら後衛への注意をそらしていく。

 ノアと俺の二人の目と頭で見落としは起きないのだ!


「私も出ます!」


 圧倒してきたのでミーナがティルトが抑えていた一匹の頭を粉砕した。

 ティルトの顔がひきつったのを見逃さない。

 わかる。バイトもちょっと複雑な表情だ。

 わかるぞ、あの聖女、前衛で良いんじゃないか? って思うよな……


「ぐっ!」


 一瞬気を引かれたせいで、ティルトが変な受け方をしてしまう。

 オークは殲滅されたが、怪我人が出てしまうのは問題だ……


「済まない……」


 いや、あれはちょっと仕方ない。心ではそう思ったが……


「一番危ない役目なんだから、気をつけて行こう」


「ああ……」


 実は医療魔法は、こういった捻挫とか打撲系の怪我に弱い。

 回復魔法の出番だ。

 ミーナの魔法で一瞬で怪我は回復する。


「……こんな贅沢なパーティあっていいのか? 馴れないようにしないと」


「確かに、怪我を恐れなく成るのは危険だな」


 俺とノアとミーナがいれば、たぶん腕や脚が飛んでもなんとかなる。

 流石に首はどうしようもない、あとは頭部も人間の知恵でどうにかなるもんじゃないから、即死してしまうと回復魔法でもどうにもできない……

 脳組織の修復なんて、出来るはずもない……


 その後もパーティで慎重にダンジョン探索を続けていく。

 命の危険があることも承知しているが、正直、最高に楽しい。

 6人フルパーティでの探検は、楽しい。

 お互いがお互いの役目を完全にこなした時は、ノアとぴったり息があった時と同じかそれ以上に快感だ。

 場数を踏むごとに段々と息があっていく感覚も、目に見える成長を感じられてとてもいい。


 階層が深くなってきて、敵もだんだんと手強くなってきているが、俺達の快進撃は続いている!



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