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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第二章 王都学園編
37/50

第37話 卒業

 自分でも驚いている……


 まさか、学園生活の6年間を、徹底的に勉強と実技と治療に明け暮れて、学生生活っぽいイベントがまったくなく終了しようとするとは……


「おかしい……今回の人生、勤勉に過ぎるだろ……」


「にゃ?」


「いや、独り言です……ノアと成長できたことは本当に嬉しいから、いいんだ……」


 始めのうちはミーナも元気に絡んできていたけど、途中からは一人の冒険者見習いとして対等な仲間として学んでいる。

 というか、とにかく回復魔法研究のレポートやら実験やらが、多すぎる!

 いや、おかげで俺が用いる医療魔法、神の奇跡に近い回復魔法とは区別され医療魔法と名付けられた、医療魔法に関しては、自分のドラマとかで手に入れた医療知識とともに、実用できる人が増えてきている。

 0から1を作られる回復魔法と違い、身体の組織を利用する医療魔法は、使用場所が限られるが、とくに回復魔法と合わせて用いることで、お互いの足りない点を補えると今、王国でもっとも熱い学問となっている。

 

 個人的な見解としては、魔力によって肉体が再生されたり操作されていることを考えると、この世界の人間の構成要素に魔力が強く関わっているんだろうなと思っている。

 まぁ、魔法なんてものがあるんだから、その原動力である魔力が身体の細胞と密接に関係しているのは当然だろう。身体強化魔法なんてのだって、そう考えれば説明も付きやすい。

 自分の過去の知識の細胞と魔力と混ざりあったこの世界での細胞があるようなイメージなんだろう。あんまり細かくは、俺の知識ではわからない……所詮はマンガアニメ小説ドラマと中高レベルの知識でしか無いからな……不思議と過去の知識は無くならない、その変わり、考え方や行動は、身体の年齢に引っ張られている自覚がある。

 最近は同年代の友達と絡むことも多いので、若い頃の気持ちが蘇っている気がする。


 そしてこの現象は人間や動物の肉体だけではない。

 すべての物質が魔力というものと融合していると考えている。

 魔力による土の操作、一部金属も非常に魔力と適合しやすかったり、なかなかおもしろい。

 学問としての魔法にはまる魔法使いが多いことも頷ける。

 危うくそっちの道に進もうかとも思ってしまったが、俺はあくまでも冒険者としてこの世界を旅する生き方をしていきたい。ノアがつまらないだろうからね!


「カイトー! そろそろ移動しないと間に合わないわよー!」


「はーい、わかりましたー!」


 卒業論文的な報告の最後の一文には、『この研究が多くの人を救うことを信じて』、と結んでおいた。


 学園卒業者のうち、冒険者志望の生徒の総仕上げ、パーティを組んでのダンジョン挑戦。

 ここで冒険者の過酷さを知って、研究職や王国での公務員的な仕事を選ぶ生徒も少なくない、というか、それも狙いの一つらしいが、それくらい冒険者という生き方が過酷であるということを知ってもらう意味があるらしい。

 王国からすれば、最高の知識と技術の粋を注ぎ込んで育てた学生を、いつ死ぬかわからない冒険者にはさせたくないという素直な気持ちもあるんだろうなぁ、と思う。


 王都から馬車で3日、卒業試験会場がある街へと到着する。

 Sクラスから冒険者希望は俺とミーナだけだ。

 ミーナは、泣き落としで教会にも所属することは決まっている。兼業冒険者だ。

 俺も教会関係者からどんな事があってもミーナだけは守るようにと、何度も何度も何度も通達や面会があった……言われなくても、ミーナは守るけど、みんな必死で怖い。

 それぐらい回復魔法は希少だ。

 俺の医療魔法は、すでに俺以上の使い手も居るし、適正があり、勉強さえすれば使える物になっている。

 もちろん、ノアと二人で行う医療魔法は、世界一だと自信が有る。

 俺とノア以上のコンビはいない。


 各クラスからバランスよくパーティが構成されていく、が、俺とミーナはちょっと特別扱いになっている。


「Aクラスのティルトです。守りには自信があるので皆さんの盾として頑張ります」


 大柄な剣士、片手剣とラウンドシールドのバランスの良い装備。

 茶髪を短く整えて、なんというか落ち着いた雰囲気を放っている。

 20歳で最年長。両親ともに冒険者で、フルプレートの鎧はダンジョン産の一級品だ。


「同じくAクラスのバイトだ。俺はこの大剣で分かる通り攻撃だな」


 身の丈はありそうな両手剣を軽々と扱う剣士、赤毛を後ろで束ねている。

 少しきつそうな見た目と口調だが、ノアにふれる手は優しい人柄がにじみ出ている。

 19歳、地方領主の5男坊で、家に帰って衛兵として生きるより自由を選んで冒険者となることを選んだそうだ。


「Aクラスのミシアです。火と風の魔法を使います」


 短い杖の先には美しい魔石が光る。美しい黒髪を肩のところで綺麗に揃えており、ローブと革鎧で隠しきれないスタイルの良さ、そして品の良い顔立ち。

 両親は普通に王都で商売をやっている商家の娘だが、魔術の才能を見初められて学園に入った。

 彼氏であるバイトと共に生きると決めて冒険者の道を選んだらしい。

 おしとやかな見た目とは裏腹に熱い女性だ。


「Aクラスでベリア、弓と斥候係なら任せてほしい」


 抜群の身体能力を誇る小柄な女性。獣人族で、耳とか腕とか足は被毛で覆われている。

 爪とかも鋭いんだけど、手先が器用で罠の解除なんかもお手の物らしい。

 周囲の気配に敏感でまさに斥候にはうってつけだ。

 切れ長の瞳とモフモフ感、一部の人には大人気になりそうだ……


「Sクラスのカイトです、こっちはノア、前衛でもある程度戦えるし、魔法全般、医療魔法もできる便利屋なので、頑張ります」


「Sクラスのミーナです。回復魔法が使えます。よろしくおねがいします」


 周囲の生徒からも回復魔法という発言に注意が集まる。

 もともとの姿でも目立っていたから余計だな……ま、ミーナもノアも有名だからな。

 そういうわけで、自分たちのPTはAクラスでも最上位の人が集められている。

 学校への教会の圧力が伺える。

 

「さ、みんなパーティの紹介は終わったかしら?

 これから各個人の実力を判断して作戦を立案、明日からダンジョンに挑んでもらうわ。

 ここも大切なことだからね、冒険者は準備が9割よ」


 引率はリカ先生だ。

 他にも何名かの熟練冒険者がサポートに付いている。

 余程のことがなければ介入してこないけど、最終安全装置的な位置づけだ。


 それからはギルドの訓練場で各パーティがメンバーの戦力分析と戦術を考えていく。

 流石はAクラスのトップ勢、Sクラスの化け物たちを見すぎていて麻痺していたけど、全員それぞれスペシャリストだ。


「俺とノアは補助役になっていざって時の余剰戦力として臨機応変に立ち回るから、それぞれが役目を果たせば、良いパーティになるね」


「回復魔法が使えるパーティなんて、贅沢だな」


「ノアちゃんってほんとに魔法使えるのね!」


「カイトも充分戦える剣士じゃないか! さすがSクラスだ!」


「今の所ルーキーの最高記録は12階らしいから、俺たちで塗り替えよう!」

 

 学園生活最期のイベント、精一杯挑んでいく。

  




 



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