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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第二章 王都学園編
33/50

第33話 死と恐怖の先

 リカ先生は、力が全てのようにおちゃらけるが、実際にはとても繊細な立ち回りをする。

 俺に過度の負担がかからないギリギリの状態を作り上げて、一切の事故も起こさない立ち回り……

 正直、想像もできない。


 こっちは死にそうになりそうなギリギリで踏ん張りながら、必死で頭を使って、知恵を振り絞り続ける。ノアは俺の考えに必死についてきてくれている。

 死線を何度も超えるたびに、俺の考えとノアの行動の齟齬が無くなっていく……

 まるでノアと一体になったかのような感覚だ。


 ノアを信じて攻撃をすれば、寸分たがわぬタイミングでノアの補助(サポート)が入る。

 こうしてくれたらいい、と思うタイミングで行動が、いや、行動があってからなるほど、そうされると楽になるのかと気がつくほどだ。

 俺自身もノアがこうしてくれれば楽だなと思うような行動を先回りで取るようにして、お互いがお互いの意思に沿って距離が縮んでいく……

 それが当たり前のように行えていると気がついた頃、リカ先生がニコニコとこちらを見守っていた。

 いつの間にか、この階層をソロで戦えるようになっていた。

 戦場の隅々にまで意識が広がっている。

 そしてノアと文字通り一心同体に、二人でダンスでも踊っているかのように、何も考えなくても身体が動いていた。

 本来ならば、明らかに格上の魔物が次から次へと襲いかかってきているのだが、まるで負ける気がしない……俺達なら、大丈夫だ!


「あなた達はそれくらいの力を持っているのよ。ギリギリで仕上がって良かったわ」


 リカ先生のセリフが耳に、届くと同時に……

 視界が真っ暗になった。


 すべてが限界を超えて、ブラックアウト、気絶した。


 目が覚めると冒険者ギルドに寝かされていた。


 お腹の上ではノアが珍しく手足を伸ばして腹を出していびきをかいていた。

 目の前には周りに集まっていた冒険者たちのだらけた顔が並んでいる。


「目が覚めた?」


 リカ先生の言葉に集まっていた冒険者が蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。

 ノアはまだぐっすりと眠っているので抱っこしてリカ先生が座っているテーブルにつく。


「どうだった? 少しは自信がついた?」


「はい……自信……

 自信かどうかはわかりませんが、少しづつ実感していくと思います。

 なにより、リカ先生が何を言ってくれているのかは、わかった気がします!」


「うん、いい子ね。

 慢心せず、でも、過度には貶まず……とっても大事なこと……

 これからもその気持を大事にしなさい。

 そうすれば、あなた達はきちんと成長していけるわ。

 それと、残念だけどさっきの戦闘の魔石は渡せないわよ」


「もちろんです。

 あんな場所リカ先生がいなければ行けるはずもありませんし、最期も……

 命を救ってもらってありがとうございます!」


「……なるほどね、セタスが入れ込むわけだわ。

 素直で可愛いんだから」


 リカ先生におでこをツンとされた。

 まるで巨像に額を押されたかのようなパワーを感じた。

 飛び起きたノアが即座に肉体強化と絶対防御、回復持続魔法を駆けてくれなかったら、俺の人生の幕が落ちるところだった……


「リカ先生は、どうして先生をしているのですか?」


「んー? 私はね、知っちゃったの。

 自分が冒険するよりも楽しいことを」


「楽しいこと……それは?」


「ふふふ、秘密。

 今日も楽しかったわ。

 カイトにノアちゃん。二人の未来が楽しみで仕方ないわ!

 明日は休みなさい。

 想像以上に披露しているはずよ。

 今日も時間が飛ぶように過ぎたでしょ?」


「え、あ! 

 もうこんな時間!

 本当だ……」


「人間はね、集中次第で時間の流れも変えられるのよ、覚えておきなさい。

 来週のテスト、頑張りなさい!」


「はい! ありがとうございましたリカ先生!」


 リカ先生はひらひらと手を振りながらギルドを後にした。

 自分も続いて立ち上がろうとしたが、脚が震えて椅子から立ち上がれなかった。

 自らの肉体状況を冷静に見つめると、もうしばらくはその場から一歩も動けなかった。

 結局、ノアと魔力を練って肉体を無理やり回復させた…… 

 

「が、ぐぁ……」


「にゃ、にゃあぁ……」


 翌朝、気がつけば寮のベッドで眠りについていたが、全身の痛みで全く動けなかった……

 日々の鍛錬は怠ってはいないが、ここまで全身を酷使したことはなかった…… 

 意地と根性で頑張って食事を取り、柔軟や軽い運動で肉体の回復をはかることに丸一日をかけた。

 そのおかげで夕方ころには多少身体も動くようになったので、お金を払って街の大浴場で全てを出し切った……やっぱり、湯船は最高だ……


 それからテストの日まではとにかくノアとの相互理解に努めた。

 何が出来て、何が出来ないか、どこまで出来て、どこからは出来ないか。

 二人の溝を埋めていく。

 知らなかったノア、新しいノアを知ることは、とても嬉しかった。


 結局そのテスト、そして次のテストと連続で昇給し、ついにAクラス入りを果たすことになる。

 そして、迎えた3年目、俺は、驚きの再会を果たすことになる。


「……ミーナ?」


 15歳になって、大人っぽくなったミーナが、寮の前に立っていた。


 学園の寮の前に……

 

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