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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第二章 王都学園編
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第31話 師匠の絆

「あなた達は、自分たちを過小評価しているのよ」


「えっと……リカ先生それはどういうことでしょう……」


「にゃあ……」


 戦闘実習の授業が終わり、明日はまた地下に行こうとノアと話しているとリカ先生に告げられた。


「カイトはノアを活かすように振る舞うし、ノアはカイトを活かすように振る舞っている。

 一見すると正しい行動に見えるけど、それは自分自身に自信がない現われよ」


「でも、ノアのほうが魔法の扱いは上手いから……」


「ニャニャ……」


「カイトの強さは近接戦闘も出来て、あらゆる状況に対応できる多彩な魔法の組み合わせよ。

 ノアの魔法に合わせるんじゃなくて、カイトの良さを最大限に引き出すためにノアを使うの。

 きちんと従魔を活かしなさい。今のままだとノアの良さもカイトの良さも半減しているまんまよ。

 カイト、もっと自分の実力を認めて責任を持ちなさい」


「責任……」


「あなたにとってノアが大切な存在なのはとても良くわかる。

 でもね、あなたの戦闘能力はノアよりも上、それは間違いない、あなた達のコンビがもっと生かされるのは、カイトがメインで立ち回って、それを全力でノアがサポートするスタイルよ」


「にゃん!」


「……そうなのか? ノア……」


「たぶん小さな頃からノアのために、って気持ちが強すぎたのね、カイトが成長していてもノアを優先する気持ちが先に出てしまって、結果として二人の実力を抑え込んでいる状態ってところね……

 その理由は、強い敵と戦っていないから……じゃないかしら?」


「……確かに、安全を何よりに慎重に……」


「それは決して悪いことじゃないし、むしろ冒険者として何よりも大事なこと。

 あなたぐらいの年齢でそれを徹底していることは感嘆に値するわ、でも、成長には壁が必要なの……そうね、明日、どうせ地下に行くんでしょ?」


「は、はい」


「5時にギルド前に集合にしましょう。

 さすがにこの話をして一人で無茶されて将来の有望な冒険者を失ったら、学園クビになっちゃうもん」


「それって……」


「明日は遺跡の最下層部まで行くわよ、中級冒険者がどういう場所で戦っているか、その身で味わってもらうわ」


 リカ先生が可愛らしい笑顔でとんでもない提案をしてきた。

 それでも、こんなにありがたいことはない……キメラ級の敵がウヨウヨしている最下層部で俺は、何かを掴まなければいけない!


「ありがとうございます!」


「あと、装備はもう隠さなくていいから最高の物を揃えなさい、あなたはそれに見合う実力があるわ、この店にコレ持っていきなさい」


 リカ先生がお店の位置が書かれた紙と手紙を渡してくれた。


「ふふ、あなたの師匠にお礼を言いなさい、きっとあいつはそろそろ壁に当たる。ってわざわざ連絡してきたくらいあなたのことを気にかけているのよ」


「師匠が!?」


「セタスの怪我を治してくれてありがとうカイト、その御礼に私が一線を超えた世界を見せてあげる。それじゃ、明日ね」


 ひらひらとモンロー・ウォークでリカ先生は去っていった。


「そうか……師匠……俺、頑張ります!」


 師匠が大変なダンジョン攻略中でも俺のことを気にかけてくれていたことが何よりも嬉しかった。

 そして、弟子として、その期待に全力で答えなければ!


 とりあえず、夕暮れの王都を指定されたお店へと向かった。

 なんというか、やや治安のよろしくない鍛冶場地帯のさらに奥の、なんとうか看板も出ていない場所が指定された店だった。


「ここか……」


 ドアを軽くノックする。

 しばらくするとドアに備え付けられた小窓が開き……


「ここはガキが来るような場所じゃねぇ、帰れ」


 取り付く島もない野太い声で追い払われる。


「これ……」


 リカ先生の手紙を渡す。すぐに奪い取られ、しばらくすると扉が開く。


「さっさと入れ」


「はい……うひゃっ」


 部屋に入って扉を閉めると、妙に背の低い、ガッシリとした体格に深いヒゲ、鋭い目、丸い大きな鼻、そうか、これがドワーフ族とすぐに気がついたが、いきなり全身を触りだした……


「動くな……ふん、左右のバランスもいい、わけーからしなやかだな……

 剣も魔法も使うのか……従魔の方は……ふ、ふん、なかなか、愛らしいな……」


 それから撫でるように探るようにノアの全身も確かめている。少し長い。


「座って待ってろ」


 用意された椅子に座って改めて室内を確かめる。

 轟々と火のたかれた炉、鍛冶場は整然としていて想像とは違った。

 刀匠の番組を見たことがあるが、それに近いのかも知れない。


「ああ、坊主、金あるらしいな?」


 俺は使う予定のなかった収益、ほぼ全財産を机に置いた。


「……リカの手紙には書いてあったが……苦労したんだな坊主」


「師匠と先生が良いのと、悪運のおかげです」


「いいだろう。この範囲で最高のものを用意してやる」


 隣の部屋から帰ってきたドワーフの親方はすでに完成している作品を担いできた。


「これをお前らに合わせて作り直す」


 ドシンと椅子にかけると防具を手に取る。

 大地から凄まじい魔力が防具に注がれ、グニャリと防具が形を変える。

 それが踊るように色々な素材と混じり合って再び防具の形を取る。

 なんだかたくさんの小人が協力して作り上げているような、不思議な光景が広がる。


「なんだなんだノーム共の機嫌がいいな……良かったな坊主、こりゃ逸品だぞ」


 こうして、俺はこの時は知らなかったが、王都で一番の鍛冶師バッカル氏の名を打った装備を手に入れた。

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