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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第一章 オネの村編
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第3話 神託

「おー! ダス! カイトは無事だったか!!」


「ああ、それよりもララさんを呼んでくれ! カイトはギフト持ちかも知れない!」


「なんだって!? わかった、教会に連れて行く!」


 僕を肩に乗っけたままダスおじさんは村の真ん中にある教会にまっすぐに向かっていく。

 ノアのことテイムしてないって説明しようにも、あまりに急ぐから舌を噛みそうで話せない、すでに少し気持ちが悪い。

 ノアはこのスピードに簡単についてきている。そして、癒し草を咥えて持ってきてくれた。

 乱暴に連れてこられて途中で落としてきちゃったよ……


「神父様! ちょっとカイトを視てくれないか!?」


 村の中では一番立派で他の建物とは異なりきれいに揃えられた石で作られた教会の大きな扉を乱暴に開けながら大声で出すおじさんが神父さんを呼ぶ。

 祈りを捧げていた神父様が、咎めるようにダスおじさんに話し始める。


「ダス! ここは神聖な場所だぞ、もっと静かにしろ!」


 神父様はダスおじさん、パパと友達のベネスおじさん。

 町の大教会で修行して戻ってきてくれた実は結構な実力者らしい。


「良いじゃねーかベネス! そんなことより、カイトがギフト持ちかも知れないんだ、視てくれ!」


「そんなことって、ギフトー? 本当なのか?」


「ほらみろ、まだ6歳なのにそこの黒くて小さいのをテイムしたんだ!

 テイマー系のギフトだろ?」


 ようやく僕は開放されたけど、激しく揺らされたせいでくらくらする……


「カイト、君はそのフォレストキャット……にしては小さいが……テイムしたのか?」


「……よ、よくわかんないけど……の、ノアは友達です!」


「ふむ……どちらにせよ、ララさんかコールさんの許可がなければ診ることは出来ませんよ」


「大丈夫だ、今ララさんを呼んでいる。ああ、そうだ! 癒やし草!」


「ノアが持ってきてくれてるよ……」


 僕はフラフラしながらノアから癒し草を受け取りベネスさんに手渡す。


「ほう……これは素晴らしい状態の癒やし草だ!

 ちょうど薬も切れて材料もなかったが、これなら10人前は出来るだろう。

 すごいなカイトは、こんな立派な癒やし草……危ない目には合わなかったか?」


「うん、ノアが見つけてくれたんだ!」


「ほほう、それが本当なら、本当にテイムしているのかもしれんな」


「な? な? 凄いな! ギフト持ちが村から出るなんて!」


「カイト!」


 教会の扉が開いてまた名前を呼ばれる。

 振り返ると同時に抱きしめられた。

 母さんだ。


「良かった……もう、心配したんだから……」


「ごめんなさい、か、ママ……」


 優しく抱きしめられると、母さんのいい香りとぬくもりを感じる……

 目頭が熱くなってくるけど、我慢する。


「パパも心配してたわよ、後で謝りなさい」


「うん」


「ララさん、カイトが癒し草を取ってきてくれたので、後でコールのところに持って行かせるよ」


「まぁ、そうなの? 森へ行ったの?」


「ごめんなさい……」


「……危ないことしちゃダメよ……でも、ありがとう」


「それで、ララさん、カイトがそこのちっこいのをテイムしたんだ!

 ギフト持ちかも知れないぞってことで視てもらおうぜ! な?」


「ダスさん、ギフトなんて……本当なのカイト?」


「うーん、テイムしてるわけじゃないと思うんだけど……

 ママ、この子ノアって言うの、これから一緒に暮らしたい!」


「にゃー……」


「あらあら、こんなに小さいフォレストキャットは見たことないわね……

 本当によくなついているのね……良いわよ、一緒におうちに帰りましょう」


「やったー!」


「さぁさぁ、ベネス、早く視てくれ!」


「全くダスは……。いいかなララさん?

 お代はこの癒し草で十分だから視ることは出来るが……」


「金とるのかよ!」


「仕方ないだろ、決まりなんだから!」


「……そうね、もしギフトが有ればカイトの人生が良くなるのなら」


「わかりました。カイト、神像の前で祈りを捧げてくれるかい?」


「うん!」


 両手を高く広げている神像、この世界レグリナークを作ったとされる創造神レグナス。

 その前に立って手を組む。目をつぶり神様への祈りを捧げる。

 隣でノアも僕の真似をしてて笑いそうになった。かわいい。


「神よ、敬虔な信者に道を推し示し給え!」


 僕の背後からベネスさんが神に伺いを建てて信託を受ける。

 昔見たことが有るが、巻物をたかだかと捧げることで、神様がそこに文字を刻む。


 ……なんとなく、体が暖かくなってくるような気がする。

 そして、はっきりとノアとのつながりを感じることが出来るようになった。


「こ、これは!?」


「どうだった!?」


「……読めない……」


 僕は目を開けて祈りを止める。

 振り返ると、母さんとベネスおじさん、ダスおじさんが一枚の紙を除きながら妙な表情を浮かべている。


「どうだったの?」


「いや、どうやらギフトはありそうなんだが……読めないんだ」


 巻物をこちらに広げてくれる。

 そこに書かれた文字を見て、僕は吹き出しそうになった。

 そこには日本語でこう書かれていた。


『異世界転生。チートは無いよ』


『ノアとの魂の繋がり』


「チートとか、レグナス様ってお茶目なのか?」


 それでも、心から感謝して改めて祈りを捧げる。

 ノアと再び会わせてくれた。それだけで、何よりも嬉しかったからだ。

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