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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第二章 王都学園編
25/50

第25話 王都

 近くの街に例の人たちを預けて、王都への道へと戻る。

 その後は幾度かの魔物の来襲はあったが、無事に王都の姿を地平線の先に収めることになる。


「凄い……」


 この世界で見た街の中でもダントツ、桁違いの大きさだ。

 王都へと伸びる街道に建物が増えてきたなぁーって思っていたら、目の前一面に建物が広がっている。その中央には城壁で囲まれた城が見える。


「始めは壁の中だけの街だったのが、今ではこれだけ人が集まっているんだ。

 魔物もまず寄っては来ないからな」


「北側の壁沿いは少し治安が悪いから気をつけてね」


 師匠と先生から王都の説明を受ける。

 未だに周囲に集まってくる人は多いんだけど、きちんと管理する手が回っていないせいで、やや治外法権的になっている場所もあって、そういう場所には近づかないようにきつく言われた。

 冒険者であることは最高に近い身分証明になるから、冒険者の証は失くさないようにと改めて注意を受ける。


 今更ながら冒険者のランクについてと自分の立ち位置を確認しておく。

 自分は現在準冒険者クラス。冒険者としてはもっとも未熟な位置づけだが、一人では冒険者扱いを受けない随行冒険者の上、見習い的な位置づけだが、立派な冒険者と成る。

 その次は初等冒険者、中等冒険者、上等冒険者、下級冒険者、中級冒険者(師匠と先生)、上級冒険者、最上級冒険者、特級冒険者となる。

 下級なんて名前がついているけど、冒険者として生きていく一つの目的は下級冒険者に成ることって言われていて、依頼などをこなして生きていく生き方から、文字通り冒険をして自分たちの生計を立て、時として大成功を収める。冒険者らしい生き方が出来る証とも言われている。

 この世界、思ったよりも人が多い、そして土地がとんでもなく広い。

 王政を取ってるけど、地方になるとその影響力を感じることは少ない、ただ、今回のうちの街のように国にとって重要な物が発見されれば、それなりに影響力はかざしてくる。

 まぁ不条理ではないし、国というシステムに組み込まれることでメリットも大きいので争いごとになったりは少ない。

 国家間の争いもほとんど生じないらしい、そんなことより日々の飯と安全。

 人間同士で争っている暇はない、って感じだ。


 そんな事を考えていると、馬車は城門にたどり着く。

 これだけの巨大建造物を作るのにどれだけの人と時間を有したか……

 この壁によって人間の最後の砦が守られていると思うと、大樹に寄りたい人々の気持ちもよく分かる。それだけの人智によって作られた巨大な防壁の存在感は凄い。


「カイト、一度降りて審査を受けるぞ」


「はい!」


「と言ってもそれを照会するだけでおしまいよ」


 冒険者証を専用の道具で調べればそれで身分証明はおしまい。

 ノアも同様だ。

 調べていた兵士の人がノアを見て破顔したのを見逃さない、そうでしょうそうでしょう、うちのノアは可愛いでしょう。


 門を抜けると、雑多だった町並みが綺麗にと整えられている。

 大通り沿いに同一の作りの建物が並び、それらの店が元気に売り込みをかけている。

 通りを歩く人の数も……今までに見た街とは桁違いだ!


「これが、王都!」


「すごいだろ?」


「ええ、ここまでとは思わなかったです!」


「ギルドの規模にも驚くわよ」


「楽しみです!」


 ノアも頭の上でキョロキョロと周囲を見回している。

 街を歩く人達がノアを見つけては指を指して微笑んでいる。ノアの可愛さは王都でも通用する。

 街を歩く人達の身なりも整っているし、何よりも元気が凄い。

 この国がまだまだ伸びていくということを肌で感じる。


「おおお……」


 目の前に巨大な建造物がある。

 現代日本で言えば幼い頃に行った巨大な美術館とかそういう規模だ。

 王国の冒険者ギルド本部。

 申し訳ない、想像以上だった。

 建築規模も装飾レベルも想像していた数段上だった。

 師匠と先生に続いて大きな扉を開けてギルド本部へと入る。

 たくさんの冒険者がこちらを一瞥し、再び会話を再開させる。

 たくさんのテーブルで、時には食事、酒を煽りながら冒険の話に華を咲かせているのだろう……

 カッコいい!


 受付でガーランドさんからもらった書面を渡すとしばらく待たされる。

 それから各々の冒険証を確認され、手続きは終わりだそうだ。


「あちらの掲示板が依頼などがはられている、あっちが依頼を受注する場所、そして依頼報告はこちらだ。魔獣などの素材を買い取ってもらったり査定はあっちになっている」


 師匠の説明を熱心に聞いていると、熟練の雰囲気を出しているパーティが依頼の報告に並んでいる。


「随分と可愛い相棒さんね」


 そのうちの一人、多分魔法使い風の女性がノアを優しく撫でてくれる。

 うん、いい人決定。


「ありがとうございます」


「小さな冒険者さん、頑張ってね」


 優しく俺の頭も撫でられる。なんというか、カッコいい。これぞ冒険者って感じだ!

 オネの街に来る冒険者は一攫千金を夢見て血気盛んな人が多かった。

 それもまたカッコいいけど、言ってみれば都会の洗練されたかっこよさではここの人たちのほうが上だ。


「王都は特に高報酬、高難易度な依頼も多いからな」


「自然とレベルの高いパーティが多くなるわ、あとはダンジョン近くのギルドね。

 もし将来強い仲間を見つけたいならそういうところで探すといいわ」


「俺達も5日後にダンジョン攻略パーティに所属する」


「カイトのおかげで、分不相応ないい装備も手に入ったし……

 必ずあなたの目標となれるような上級冒険者になってみせるわ」


「二人なら大丈夫! 俺も必ず追いつきますから!」


「そうだな、手続きは先だが、学園を見てから宿に向かおう」


「そうね」


 師匠と先生、別れの時は確実に近づいている……



 


明日も17時に投稿いたします。

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