第24話 この世界の闇
新章入ったのに……最初から内容が……
自分の育った村が、いかに辺境に位置していたのか思い知らされた。
行けども行けどものどかな草原が続いている。
王都までの道のりは2週間……
途中、村や街、野営も行って移動し続ける。
もちろん移動中に魔物に襲われることも多い、そして、聞いてはいたが、とうとう出会うことになる……
「カイト、まだお前は若いから、馬車だけ守っていてもいいぞ?」
「いえ、覚悟は出来ています」
「本当に無理はしないでね」
「ええ、正直、怖いです。でも、許せない気持ちのほうが強いです」
「にゃ!」
「わかった。なら、当てにするぞ」
盗賊の襲撃だ。
対人戦闘は訓練以外したことがない、命のやり取り、人を殺す可能性がある。
ブルリと体が震えた。
しかし、この世界では、少なくない、冒険者として生きていくのなら、珍しくないことだ。
するりと足元にノアが体を擦り付けてくる。
心配そうに見上げるノアを撫でる。
「大丈夫、行こう!」
外に出るとすでに戦闘が始まっている。
師匠はすでに何人かを斬り伏せている。
師匠の魔法が敵の弓矢を防ぎ、雷が敵を貫いている。
手心は加えない、半端な慈悲で命を落とす人は多く、盗賊は死。がこの世界のルールだ。
「な、なんだこいつら!? つええ!」
「くそっ! もう引けねぇ! 気合い入れろてめえら!」
「ガキがいるぞ! 人質にしろ!!」
明確な悪意がぶつけられる。
街の人々の暖かさに包まれて育った俺にとって始めての経験だ……
そして、恐怖よりも遥かに怒りが勝つことを知った。
「その努力を別に向けていれば死ぬこともなかったのに……」
せめて苦しまずに、俺は風の刃で近づいてきた盗賊の首を跳ねた。
「ま、魔法だと!? こんなガキが!!」
「く、くそぉぉぉ!!!」
思ったより、あっさりと人を殺してしまった。
ノアもすでに何人も魔法で葬っている。
「ノア、すこしだけごめん」
俺は剣を抜く。
ノアは俺の意図を読み取って地面に降りる。
「何だこいつ! ふざけんな!! 死ねぇ!!」
遅い……そして、醜い……
歪んだ目的、鍛錬もせずに弱者から奪うだけの集団……
あまりにも醜い力を目の当たりにして、心に残った日本人としての倫理観が、消え失せた気がした。
振り下ろす剣を軽くいなして、斬り上げるように切り裂く。
手応えは魔物と変わらない……
変に苦しめることはせず、返す刀で首を跳ねた。
数の有為がなくなり瓦解した盗賊団が逃げ出す暇も与えずに壊滅させた。
「大丈夫かカイト?」
「はい……想像より、大丈夫なことが大丈夫じゃないかも知れません……」
死体は集めて穴の中で燃やす。
名も知れぬ悪党たちは大地の養分になっていく……
「さて……もう一つやることが出来たわね」
「やっぱり、保護しに行く?」
「ええ、カイトのためにもやったほうが良いと思うの」
「そうだな……カイト、たしか魔法で人がいるか探る魔法使えたよな?」
「あ、はい」
「私とカイトとノアちゃんで周囲に大規模な探査をかけたいの、良いかしら?」
「……なるほど、やつらの根城が近くにあるんですね」
「そうだ、カイトは理解が早いな、ああいう輩は襲った集団に女性がいると、まあ、そのあれだ」
「なるほど、アジトに連れ去られて非人道的な扱いを受けるんですねわかりました。
合わせます」
「お願いね」「にゃにゃにゃ!」
基本的に魔力を使った超音波レーダーのような仕組みだ。
3人合わせて指向性を持って放てば、かなりの距離を探れる。
どうやら近くの森の奥に数人の人が守っている場所があった。
馬車を他の護衛に任せて、一時その場所を見に行く。
森に入って暫く歩くと、山肌に作られた洞窟の前に見張りが立っている拠点を簡単に見つけることが出来た。
「……行こうか」
黙ってうなずいて……俺らの魔法で見張りは息絶える。
洞窟の中には松明が置かれ、生活の跡がある。
俺たちを襲った人たちが出る前には彼らがここで生活していたのだろう……
部屋をひとつひとつ注意しながら調べていくと、奥の方で数名の女性と子供が部屋の隅で震えていた。
「……盗賊たちは、いなくなった……」
しずかに師匠が伝えると、半狂乱に笑い始めたと思ったら、突然糸が切れたように気絶してしまった。念の為に魔法で眠らせて女性と子供を洞窟の外へと連れて行く。
盗賊たちも楽な生活では無いようで、あまり蓄えとかもなかった。
「なんだか、誰も救われませんね……」
「そういうもんだ……」
「彼女たちもまともな生活に戻れるかどうか……自ら命を捨てる人も多いわ……」
「子どもたちも、多くは修道院などに保護される……」
「他人から奪うような選択をしなければ……」
「住んでいた村が魔物に襲われたり、飢饉が起きたり、色々とあることも多いんだよな……」
確かに、うちの村だって、天候的な問題や魔物の襲来、そもそも一度滅びかけていた……
ノアと出会っていなければ、父さんも死んでいただろうし、村の被害はもっと酷かった。
俺だって生き残っていなかった可能性が高い……
この世界の至るところで、今回の盗賊のようになってしまう可能性を常に抱える人々が必死に生きている。
王都に向かい、浮かれていた気持ちがぐっと引き締まったような気がした……
その夜の野営で、止められない震えや忘れられない感触も、ノアがそばにいてくれたので耐えられた。何度も様子を見に来てくれた師匠と先生の優しさを感じながら、俺は眠りについた……
明日は17時に投稿いたします。