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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第一章 オネの村編
22/50

第22話 踏破

 歩く、歩く、歩く……


 歩く、戦う、歩く、食べる、歩く、戦う、食べる、寝る、起きる、歩く、歩く……


 もう、どれくらいたったのかわからない、もうずーっとこんな生活だ……

 来ていた服はボロボロになって、動物の革を処理して簡単な服を作る羽目になった。

 ははは、裁縫も上手くなったよ……


 はっきりという。


「師匠も、先生も、やりすぎなんだよー!!」


 一応朗報もある。

 腕輪の光が少しづつ強くなってきた。

 村の方向と思われる方に向けると周囲がほのかに明るくなるレベルだ。

 夜なんかはそれを見ながら……泣いている。


「ノア……」


 最近は毎日泣いている……

 寂しい……


 ただ、不安もある……


「まだこのレベルの魔物が出るのか……」


 戦闘を終えて魔石の大きさに少しうんざりする。

 ダンジョン周囲かそれ以上の魔石が出る。

 荷物もかなり増えてきて、荷台を作って引いている状態だ。

 あの剣のおかげで木材加工をかなり精密に出来るので、クギを使わず木製の素材の特性を生かした、匠の作品を作り上げた。

 タイヤも木製だが、しなりのある板を組み合わせることで足場が悪くてもそれなりに引きやすい。


「いやさ、楽じゃないとは思っていたけど……俺まだ12歳だよ?」


 少し愚痴も多くなる。

 完全なノア不足で限界だ。

 布で作ったノア人形も日々の改善で随分と猫の姿を模してきた。

 瞳に魔石を使ったので神秘的な瞳がノアにそっくりだ。


 ノアにそっくりだ……


「ちがーーーう!! こんなものノアじゃない!!

 ああ、違うんだよ、ごめんね急に大きな声出して……大丈夫、僕は大丈夫だよ……」


 毎晩こんなことを繰り返している。

 ノア……ノア……ノア……ノア……ノア……


 森を歩く時もノアの幻影を見ることも多くなった。

 ふふふ……幻影でも可愛いな……


「ノア!?」


 目の前にノアが舞い降りた。

 俺の存在に気がついたノアは全力で逃げ出した。


「ノア!! どうしたんだ!? 僕だよ!!」


 俺は必死でノアを追いかける。

 引っ張る車がガタガタとうるさいが、そんな事は気にしない。

 ノアが木を登り逃げようとするが、俺のセンサーからは逃げられない、ピッタリと地面をついていく。


「ノア、ノア、ノア、ノアー!!!」


 たまらずノアが木から飛び降りてヤブに突っ込んでいく!


「ノアー!!」


 俺も続いてヤブを突破する!


「おわぁ!!」


「ノア!?」


 ヤブを抜けると開けた場所に出て、ノアに囲まれているノアたちが……


「カイトォ!?」


 うん? ノアはしゃべるようになったのか?

 さすがはノア……って……ん? 人間?


 俺の目に映るノアが、ハイエナの姿に変わり、ノアに囲まれていたノアは人間の形に変わっていく。


「これは……」


 ハイエナの群れに襲われている冒険者たち……?


「か、加勢します!」


 とにかく、魔物を倒そう。

 突然の俺の出現に慌てて混乱していた魔物を倒すことは簡単だった。


「カイト!! 無事だったか!!」


「ええと、ここは……?」


 周囲はきちんと石で打たれた街道に見える。森にこんな場所あったかな?


「ここはダンジョンまでの街道よ! そんなことよりカイト、無事だったのね!」


「もしかして、ミーナ?」


「そうよ、大丈夫!?」


「なんでミーナが森に?」


「街道が整備されて入口付近は入れるようになったのよ……カイトォ!」


 ミーナが俺に抱きついて離れず泣いている。


「ミーナが心配するのも仕方ないさ、お前は3ヶ月も森にいたんだからな……」


「セタスさんとマルアさんは毎日森の奥深くまで探しにいっていたんだが……よく帰ってきたな」


「なんで師匠と先生が探してるんですか? これ試験なんですよね?」


「そうだよな、知るわけないもんな、実はな……」


 それからは驚きの内容だった。

 先生が知らないのも問題ないのだけど、この森の上空にはとんでもない強さの風が流れていたらしい、俺が巻き込まれたあの突風は先生が用意したものではなく、自然に発生しているものだった……

 本来なら一晩も耐えれば帰ってこれる場所に送るはずだった俺が、とんでもない速度で飛んでいくのを見て、二人はそりゃーもう焦ったらしい。

 その日から直ぐに探索を始めて、腕輪のおかげで俺が移動しているのはわかっていたけど、登録地点は動かせないから、俺の動きを予想して毎回村から探すしか無かったみたいで……

 

「あまりに異常な速度で移動するから魔物にでも食べられたんじゃって話になったりもした、ただ、常に村に近づこうとしている動きだったから、万が一にも生きていると信じて……毎日……」


「そうだったんですね……」


 ミーナはまだ抱きついて泣いているけど、冒険者の皆さんと村へ帰るために森の出口に向かって歩いていく。

 精工なノア人形をみて冒険者の方々が生暖かい目で俺を見ていたが、気のせいだろう……


 タタタタタタタッ


 俺の心臓が跳ね上がる。

 気がつけば、ミーナのロックをすり抜けて、その音のする方へ駆けていた。


「にゃーーーーーーーーー!!」


「ノアーーーーーーーーーー!!!!」


 ボフンと俺の胸に夢にまで見たノアが飛び込んできた。


「カイトぉ!!?」


「カイト!!」


 その後に走ってきた二人に抱きしめられた。


「ごめんなさい、ごめんなさいねカイト!!」


「良かった、本当に良かった!!」


 師匠と先生が泣いていた。

 だが、俺は全力を持ってノアの感触に集中するのだった。

明日は17時に投稿いたします!

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