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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第一章 オネの村編
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第2話 オネの村

 満足するまでさんざんノアを撫で回して、ちょっと気になることがあったのでノアを地面におろして立ち上がる。


「ノアなんだよね?」


 今更ながら確認してみる。

 確かに見た目は若かりし頃のノア。

 真っ黒な体に右前足と左後ろ足の先としっぽのさきっぽが白い。

 大きな瞳は金色に輝いている。

 どこからどう見てもノアだ。


「にゃ~~」


 鳴きながら体を擦り付けてくる。

 うん、間違いない。ノアだ。


「ノアは()についてきてくれるの?」


「にゃー!」


 当たり前だよ! と答えるようにしっぽを僕の足に巻きつけてくる。


「それじゃあ一緒に村に帰ってくれる?」


「にゃにゃ!」


 僕の周りをノアがくるくると歩き回る。


「凄いな、言葉がわかるみたいだ」


 ただ甘えるだけじゃなくて僕の言うことに反応するノアに驚いてしまう。

 凄い甘えん坊だったけど、こういう反応はしたことがないから感心する。


「にゃー」


 どこかドヤ顔で僕の前に座るノア、そうと決まれば村へ帰ろう。

 本当は森に入るのは危ないから禁止されているんだけど……ってそうだった!


「癒やし草がいるんだった!」


 記憶が混濁して忘れていたけど、僕が森に入った理由は癒し草を手に入れるためだ。

 昨日パパが魔物に襲われて怪我をしちゃったから薬の材料探しに来たんだった。


「でも、もうお昼すぎになっちゃったな……」


 太陽がすでに傾き始めている。

 今から森を探索するのは危険だ。ノアに夢中になりすぎた……

 今までは当然疑問に思わなかったけど、地球の知識を手に入れた今は、この世界でも太陽の仕組みとか色んな類似点が有ることに気がついた。

 どうも余計なことを考えてぼーっとしていると、ノアが僕のズボンを引っ張っている。


「ああ、ごめんごめん、二人分の知識って混乱するんだよ……って、コレって……」


「にゃんにゃん!」


 ノアがいつの間にか集めてきた咥えている草を僕の足元に置く。

 まわりの草とは明らかに異なる青っぽい葉に可愛らしい小さな花、癒やし草だ!


「凄いぞノア! 探してきてくれたの?」


「にゃーん!」


 花つきの癒やし草が二束ぐらいは有るから、コレを使えば10人分ぐらいのキズぐすりが出来るぞ! 


「こんなに成長した癒やし草はもっと森の奥にしか無いと思ってたのに……凄いなノアは!」


 僕は持ってきた袋に草をしまい、ノアを撫でまくる。


「よーし、村に帰ろう! これからはずーっと一緒だからね!」


「にゃん!」


 村へ向けて有るきだすとノアもトコトコと隣を歩いてくる。

 本当に嬉しい、またノアと出会えた。これからのノアとの暮らしが楽しみで仕方がない!



「カイト!!」


 森を抜けて村へと続く道を歩いていると遠くから大きな声で呼ばれた。


「あっ……」


 声の主を見つけて、嫌なことを思い出した。

 僕がしたことは、勝手に村から居なくなって、近づくことを禁じられている森に入って、しかも日が傾く時間まで帰っていない。

 それは村のみんなに心配をかけてしまう……そのために昼前には戻るつもりだった……

 声の主は隣の家のダスおじさんだ。

 ママが僕が居ないことに気がついて探すようにお願いしたんだろう。

 この先の僕の運命は……ダスおじさんのげんこつとお説教+ママのシクシクと泣きながらの長時間の小言を正座で聞くと決まっている。

 僕は必死に考える。


 そして……


「ごめんなさい!!」


 僕は近づいてきたダスおじさんがげんこつを作る前に、癒し草を出して掲げながら土下座して謝った。


「……これは……森に行ったのか……」


「ごめんなさい。父さんのために癒やし草を取るためとはいえ、それを言わないで行っちゃいけないと言われている森に入りました! 申し訳ございません!」


 こういう時に誤魔化しはいけない。

 全て話して、素直に謝り誠意を見せる。それしかない。


「ふぅ……カイトも嘘つかずに謝れるじゃねーか……

 そうか、コールのためか……」


 げんこつ一発は覚悟していた頭にダスおじさんの大きな手が優しくぽんっと乗せられる。

 それからゲシゲシと髪の毛をぐちゃぐちゃにされる。


「あんまりララさんに心配かけるなよ。うちのライナもそれにミーナも心配したんだからな」


 ライナおばさんはダスおじさんの奥さん、ミーナは同い年の幼馴染だ。


「ごめんなさい」


「にゃー……」


 僕の隣でノアも頭を下げてまるで謝っているようだ。


「ん? こいつはなんだ? フォレストキャットにしては小さいし、変わった柄だな」


「森で見つけたノアだよ。これから一緒に暮らすんだ!」


「にゃー!」


「カイト、もしかしてテイムしたのか?」


 テイムと言う言葉をカイトの記憶から引き出す。

 動物使いや魔物使い、テイマーと呼ばれる職業が行う動物や魔物、魔獣と結ぶ契約のことだ。

 普通は職業につかないと出来ないはずだけど……


「カイトはギフトがあったのか!」


 後天的な努力で手に入れるスキルと、先天的、生まれたときから持っているギフトがある。

 一般的にはギフトのほうが上位の能力まで伸びていくので、ギフト持ちはそれだけで成功する可能性が上がる。ギフトが明らかになるのは15歳の時に教会で信託を授かると知れるけど、たまにそれ以前に発動して知ることも有る。ギフト持ちは1000人に1人くらいで珍しい。


「もう発動したなら調べられるな! すぐ帰るぞ!」


「うわっ!」


 僕の体を軽々と担いでダスおじさんは村への道を走る。


「うわっうわっ!」


 ダスおじさんは村一番の力持ちで、体技スキルも持っている。

 僕を肩車してすごい速さで村に走っていく、ちょっと怖いけど気持ちがいい。

 すぐに村が見えてくる。村は木の柵で囲まれていて、周囲には堀が作られている。

 堀には水が流れていて、川からの水を迂回させて貯めていて、生活の水にも利用される作りになっている。

 現代日本の知識を手に入れてみると、原始的な作りの建物が並んでいる。

 ここが僕が生まれたオネの村だ。

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