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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第一章 オネの村編
15/50

第15話 判断

 初めてのダンジョンの感想は……


「広い!!」


 正直森の入口に出るような魔物を倒しながら延々と歩いていると、変な疲れ方をする。

 一番きつい作業は、戦闘前に荷物をおろして、終わったら担ぐ作業だったりする。


「凄い大きさね……これは深さも凄そうね」


「確かに、ただ、この感じだと流石にそろそろ第一階層は終わりっぽいな」


 自動的に地図を作成してくれる道具を二人で覗き込んでいる。

 例の砂、魔石の粉を利用した道具だ。

 あの砂は様々な道具に利用されており、アイデア次第ではいろいろな可能性がある。

 まだ発表はしていないが、箱に詰めた砂の中に素材を埋めて、魔法操作で素材の形態を変化させる道具なんかを作ったりしている。3Dプリンターから着想を得てみた。

 消費魔力が膨大なのに、時間がやばいほどかかるのでお蔵入りしている。


 話を戻すと、師匠の言ったとおりさらに暫く歩くと、行き止まりに扉が見えた。

 入り口同じようにドーム状の作りの行き止まりの部屋、いかにもこの階層の最期であることを表現しているようだ。


「なるほどなぁ、この大きさでは確かに深部まで行くのは大変だな……」


「ダンジョンの外に大きな拠点を作るまでは難しそうね」


 今までの足取りからこの階層を一つ進むのに10時間以上はかかっている。

 正直雑魚しか居なかったので、戦闘を考慮する必要はなくてもそれだけかかっている。

 途中軽食を歩きながら腹に入れたが、すでに少し空腹になっている。


「あの辺りは強い魔物も多いですからね」


「にゃにゃん」


 ノアが頭の上から降りてきて足にすり寄ってくる。


「ん? お腹すいたの?」


「とりあえず安全な場所に移動しよう、そして、少し早いがキャンプを張る」


「……第二階層が同じぐらいだった場合、早朝くらいまでかかりそうですもんね」


「その通りだ。そこらへんを読み間違えるとダンジョン内で野営するはめになる。

 常にダンジョンでは自分と階段の位置には気をつけろよ」


「はい、師匠!」


 扉を開けるとはじめに入った場所と同じように廊下が伸びている。

 

「人気のダンジョンだと浅い階層はギュウギュウ詰めだからな、ここはまだまだダンジョン自体にアタックしてるパーティも少ない」


「今日は私達だけですからね。普通制覇狙いなら新月の翌日にアタックするのが定石です」


「今日はもう新月から15日過ぎていますね」


「そう、深い階層まで進んで帰り道がわからなくなるなんて恐怖、わかるでしょ?」


「はい……」


 廊下は人が3人も並ぶと窮屈に感じるほどだが、不思議と寒くも暑くもなく過ごしやすい。


「扉の向こうが火山地帯だろうが極寒の雪山だろうがこのエリアは常にこんな気候だ。

 火も炊けるし、奥にある脇道の先には穴があって何でも捨てられる。

 催したらこのエリアでそれを利用するか、ダンジョンに吸収させるかだ」


「だ、大事な話ですね」


「肝に銘じておくように!」


 絶対に忘れないようにしよう。


 まだ時間も早かったが、お腹は空いていたので食事を用意して、今日の反省などを話し合う。


「ま、今日はアレだな、特に言うことはないな」


「敵が弱すぎましたからね」


「そうですね」「にゃにゃ」


 ノアも頭上でウンウンとうなずいてる。


「さて、ここで一つカイトに決めてもらうことがある」


「はい」


「このダンジョンは今7階まで探索されている」


「はい」


「そして、7階までの報告を聞くと、森の中層あたりの魔物程度しか出てこない」


「ああ、そうなんですね……」


 少し、いや、肩透かしを食らってしまう。


「1階層の大きさを知って、7階層以下まで進むか進まないか、それを決めてほしい」


「う……」


 普通に現状の持ち込んだ道具を使って進めばどうなるか、行軍速度をはやめて……

 いろいろなシミュレーションをしてみるが、そこまでのリスクを背負って進むメリットは見つからなかった。


「いえ、引き返しましょう。

 7階層でそのあたりの敵なら8階層も大きく変わらない、さらには、この広大なダンジョンを7階層も進むとなれば、かなり急がなければいけません。

 今そこまでするメリットが無いです」


「うん。冷静だな。その考えが正しいと思う。

 お前は本当に年齢の割にしっかりとメリット・デメリットを基準にリスクを考えられるんだな」


「少し、達観しすぎて心配になるわね」


「本当は宝箱の一つでも開けてみたかったんですけどね」


「ああ、それも実は問題でな、宝箱には罠もあるから、俺も多少は見れるけど専門職は必要なんだわな」


「なるほど、どちらにせよ。ダンジョンというものを理解するには十分な訓練になったとしておきましょう」


「はは、ほんとに達観しすぎだろ」


「にゃー……」


 張り切っていたノアはがっかりしているけど……


「大丈夫だよノア、必ず、必ずこのダンジョンはいつの日か制覇してみせる!」


「おう、そうだぞ。今はセタスとマルアの弟子だが、いつの日かカイトの師匠だと呼ばれる日を楽しみにしているからな!」


「そうね、そんな日が来たら素敵ね」


「いやいや、まだ帰るまではそういう会話は止めましょう。

 ダンジョンはともかく、森から帰るのは結構大変なんですから!」


「うーん、お前は本当に可愛げないくらい冷静だなぁ……」


「出会ったことはまだ少しは可愛げがあったのに……」


「もう12歳ですからね、お二人から色んな事を学んだ賜物です!」


「にゃ!」


 初めてのダンジョン探索、ダンジョン内でのキャンプ、何事も初めては良いものだ。

 第二階層を覗いてみたが、第一階層と同じような作りなっていた。

 それを確かめて俺たちは帰路についた。


 なんのトラブルもなく、外に出られたが、トラブルは外で待っていた。

 

 駐留地が魔物に襲われていた。

今日は一時間後20時にも投稿します

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