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猫好き冒険譚  作者: 穴の空いた靴下
第一章 オネの村編
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第11話 村の変貌と、うれしい誤算

 村は……すでに村ではなくなっている。

 街だね。うん。

 森よりも危険な魔物が多い山もすでに俺たちの修行場所になっている。

 おかげで鉱石や石材も森に供給されやすくなっている。

 辺境のいつ滅びるともわからない小さな村が、新規ダンジョンの発見というバブルによって突然急発展をするのだった……


「にゃー」


「キャー! ノアちゃんかわいいー!」

 

「あれが幸運のノアちゃんだ!」


 どこにいっても俺の頭上に居るノアは大人気だ。

 一時は誰もが撫でようと寄ってきて、あまりにしつこくてノアが切れて電撃を放出してから見るだけに変わったけど、どこに行っても大騒ぎ。

 ま、ノアは世界で一番可愛いから仕方がないよね。

 ノアが人気になったのは師匠と先生が俺たちの幸せの青い鳥はノアだー! と騒いだことに由来するんだけど、まぁもうお仕置きしたから許してあげているけど……

 一週間ノアに触るのを禁止したら、二度と言わないと約束してくれた。

 その結果、街では空前のペットブームが起きた。

 フォレストキャットやグラスドッグなどをテイマーがテイムしてそれを飼育する人が増えた。

 猫派と犬派は争うこと無く共存しているけど、今は猫派が多数派になっている。


「さて、今日はとうとう約束の日だ……」


「ついにこの日が来たわね……準備は完璧よ」


 そう、今日は俺の12歳の誕生日だ。

 冒険者登録、実際には仮登録、師匠と先生の随行員としての登録だけど、なんにせよ、これでダンジョンに入れる。

 結局森のダンジョンは、森の最深部にあるために、森の最深部まで到達できる実力がある上で、そこからダンジョン攻略が出来る準備ができていないといけない。という高いハードルによって、遅々として攻略が進んでいなかった。嬉しい誤算だ。


「カイト!」


 冒険者ギルドに向かって歩いていると女の子に呼び止められる。

 ミーナだ。

 赤みがかった髪が腰まで伸びて、同い年の女の子たちと比べて少し大人っぽいし、長身だ。

 俺も鍛錬のおかげで一般的な同い年の子たちよりも背が高い。

 少し大人っぽくなって来て、最近はダスおじさんが警戒してメンドクサい。

 正直今もまわりにダスおじさんが居ないか心配になる。


「おはようミーナ、市場にお使い?」


「……今日ダンジョンに行くんでしょ?」


「うん、やっとだよ」


「無理しないでね……」


「大丈夫、師匠も先生もいるし、それにノアがいるから」


「そうね、ノアちゃん、カイトをお願いね」


「にゃーーん」


 ミーナが伸ばした手にノアがすりすりする。

 周囲の冒険者から羨ましいって声が上がる。

 ミーナはしょっちゅうノアを撫でているからな、無粋なこともしないし。


「カイト、これ……」


 ミーナの手には綺麗に細工された革の腕輪。

 よく見ると魔石が使われていて、高級な品だとわかる。


「誕生日でしょ。あげる」


「いいの? こんな高そうなもの……」


「失くさないで、絶対に無事に帰ってきてね!」


「うん、ありがとう。大事にするよ!」


 嬉しそうに微笑むと、くるっと踵を返して人混みに混じってしまう。


「やるじゃねーかカイト」


「いいわねぇ……いい……」


「先生も師匠も何言ってるんだか……ダスおじさんに絡まれるよそんな事言ってると」


「うっ……」


「そ、それは勘弁してほしいわ……」


「父さん、母さんとも約束している。ちゃんと帰るんだ」


 腕輪をはめるとなんだか少し落ち着くような気がする。そういう効果が付いてるのかな?

 混じり合った考えは片やアラフォーに近づいているので、ミーナも親戚の娘的なポジションなんだよね……


「さて、ギルドへ行こう」


 真新しいギルドの建物に入ると周囲から注目を浴びる。

 古傷が治って現役に復帰した師匠と、全属性魔法を操り、複数属性の魔法を並行発動するという魔法界に革命を起こして、器用貧乏と考えられていた複数属性使いに希望を与えた先生が一緒だからだ。

 複数属性並行発動は我らがノアが教えてくれた。

 先生はノアを師匠と呼んでいる。

 もうめちゃくちゃだよ。


「随行冒険者証をお願いします」


「おお、カイト。とうとうお前も12歳か!」


 ギルドマスターは師匠のかつての仲間だったガーランドさん。

 俺の修行にも協力してくれて、可愛がってもらっている。

 この人も化け物みたいに強い……

 くそじじ、おっと、こういう事考えていると危険だから。


「あいたぁ!」


 突然げんこつを食らう。


「お前、今オレの悪口考えたろ」


 これだ……ガーランドさんの勘は異常なんだ……

 殴られた頭が瘤になっていないかさすって確かめる。

 なんで事前に降りてるんだよノア……

 ノアは受付の人に撫でられてカウンターで職員の皆さんにその愛らしさを振りまいている。


「よっしゃカイト、ここに両手を乗せてくれ。

 ちょちょいと力を込めてくれれば直ぐにカードが出来る」


 魔石の粉を利用した冒険者カードを作る道具に手を乗せる。

 魔力や生命力は個人個人で異なるので、それと反応させたカードは本人以外には使えない。

 真偽はギルドにある道具で直ぐわかるし、魔力変化などを読み取って行動も記録されるので、必ず身につけて戦闘しないといけない。

 めっちゃ強力な身分証明書にもなる。

 

「うわぁ……コレが俺のカード……!」


 渡されたカードにテンションが上ってしまう。

 これで俺も冒険者の仲間入りだ。


「あとノアちゃーん、従魔登録するからここに来てもらえまちゅかー?」


 ガーランドさんはまわりがドン引きの赤ちゃん言葉でノアを呼ぶ。

 ノアも同じように道具に前足を置く。

 こうしてノアも同じようにカードを手に入れた。

 ノアのために母さんが作ってくれた服のポケットに大切にしまっておく。


「お前らには期待してるぞ、新規ギルドにたっぷり金を落としてくれよー」


 あまりに素直なギルマスの発言に若干引きながらも、俺たちはダンジョンに向けて出発するのだった。


次は明日の17時に投稿します

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