26話
「港の改良、ですか」
突然「港を改修する」といった将吉に道兼は怪訝そうにそう尋ねた。
この時代の港というと基本的に運河の両岸に船を横付けする方式が取られており、この三島城下でもそうなっている。
しかしながらこれだと容量が小さく、また防波堤などもないため荒天時に船が何艘か損傷する事故が起きやすい。
「まずは堤を作り、湾を囲う。その堤の内側にいくつもの突堤を作りそこに船を留め置く」
将吉はそう言って簡単に三島城城下を記した地図に線を書いていく。
「なんと……」
それを見ながら道兼は絶句している。
仕方がないことだと思う。
これほどまでに大規模な工事をこの時代に行えるとも思えない。
「その堤はどのようにして作るのですか?」
道兼の問い。
至極全うな問いであった。
砂や土を流し込んでそれを固める?
論外だ、潮の流れで固まる前に流れていってしまうだろう。
ではどうするか。
「まぁ、見ておれ」
将吉はにやりと笑い、そう答えた。
「……で、結局ここにきた」
そう言った小春は呆れるように溜息を吐いた。
「お前さんが作ってくれるんだろ?」
小春に将吉はそう笑った。
あの日交わした約束はあれ以来忠実に実行されている。
「何をするの」
ジト目でそう言った小春に将吉は自慢げにある図面を見せた。
「消波ブロックだ。見たことあるだろ?」
将吉の見せたものはよく海岸線でみる4つ足のコンクリート製のブロックであった。
しかし、この時代にはコンクリートはない。
「……たたきなら、できるかな?」
そう言った小春に将吉は目を輝かせた。
たたき、別名は三和土。
赤土や砂利、消石灰と水を混ぜで固めたものをさし、土間などに使われている。
「やってくれるか?」
将吉の問いに小春はしばし悩んだ後、溜息を吐いて「頑張る」と答えた。
それから数か月をかけ、小春の作った消波ブロックが完成し随時海中に投下され堤防が完成していった。
以後、三島城下は急速に発達し、大型船の出入りする一大商業港として機能するようになる。
「若、鉄砲が200丁に到達いたしました」
道兼は評定の間にて将吉と対談していた。
旋盤を導入し、今まで以上に鉄砲の増産は進んでいる。
「旋鉄砲は50丁ほどでございまする」
小春の作った鉄砲はライフルと言う名ではなく旋鉄砲という名で呼ばせることにした。
この時代にライフルというのはあまりにも異質だろう。
旋盤を導入し、効率が良くなったが代わりにある問題に直面している。
燃料問題だ。
現在、旋盤は城内のはずれに工作小屋を設け、小春が使用している。
その中には救命艇から持ち出した発電機もあるのだが、これの燃料が底を見せ始めている。
「うむ。ご苦労、この調子で続けてくれ」
道兼には小春が旋盤を使っていることは説明している。
それを見た時、道兼は絶句していたが何やら諦めた顔をしていた。
今は道兼を仲介して職人たちに部品を渡しているため、道兼以外にこのことを知る者はいない。
「若、お呼びでしょうか」
道兼と話していると時隆が現れた。
彼は現在経済関係について一任されている。
主に琉球貿易や城下町の整備を担当し今までの経験をいかんなく発揮している。
「砂糖はどうだ」
「はっ。3月に1回、関船3艘と荷船5艘の船団を派遣し買い付けておりまする」
瀬戸内から琉球へ抜ける航路には多数の海賊衆がいる。
彼らは帆別船を取ることはないが、時として襲ってくる。
その防衛として関船3艘を護衛に付けている。
「3艘のうち、1艘を堺へ流通させ、5割を京へ献上しておりまする。また、1艘は城下で流通させておりまする」
この時代、砂糖が洋菓子と共に広く知られるようになりその需要は高騰している。
ただ運んできて流すだけでその差額は随分なものになる。
「しかし、京ではなくあのような場所に砂糖を流して何になりまする?」
時隆は残ったもう1艘の行き先についてそう言った。
確かにこの時代では重要視されていないが、いずれ経済の中心となってもおかしくはない。
「まぁ、精々稼いで力を蓄えてもらわねば困るのだよ」
「……あのような遠隔地でですか?」
時隆はそう尋ねた。
この大三島から京への二倍ほどの距離があるが、それでもそこに届けることに意味がある。
そこで砂糖を流通させ、経済的に発展させることで後に我等が有利になる。
「まぁ精々、力を蓄えておけ。 織田信秀」
将吉はそうニヤリと笑った。
こんばんわ。
雪楽党でございまする。
諸事情ございまして明日から数日間休載いたします。
お許しください。
1週間以内には再開いたしますのでご容赦ください。




