23話
「此度の戦。随分と損害が出ましたな」
能島城にて武吉と隆重は頭を抱えていた。
今回の戦で武吉が動員したのは2800の兵。
これは将吉の兵と将吉のために備えていた甘崎の兵を抜いたほぼすべての兵であった。
2800のうち、来島に向かった1300は500の兵を失った。
そして、能島で防衛していた1500もまた、400ほどの兵を失いった。
「今動員できるのは将吉と通康の兵のみか」
他の城の兵は現地を防衛するので手一杯だ。
「併せて3000程度にございますな」
「もう1戦できるか?」
隆重の言葉に武吉はそう笑った。
それに隆重は呆れるように笑い「それでは御家の兵がなくなりますぞ」と答えた。
「のう、隆重」
武吉はひとしきり笑った後、真剣な眼差しになると隆重に語り掛けた。
「将吉は、裏切るかのう」
そう尋ねた武吉は当主らしからぬ表情であった。
隆重は武吉の年相応に不安げな表情に微笑むとこう答えた。
「自ら汚名を被ってまで、房実を討ち取ったではありませぬか」
「……同じように裏切られるのでは?」
武吉の問いに隆重は眉間にしわを寄せた。
「殿。人を信ずるも名将の業でございまするぞ」
隆重の言葉に武吉は眼を瞑ると「……ふむ」と呟いた。
「信じてみるか」
そう呟いた、武吉に隆重は微笑んでいた。
(ようやくこれで家中が盤石となる)
心の中で隆重はそう安堵していた。
「……本当にできたのか?」
新しく作られた新式の鉄砲を携えてきた小春に将吉はそう尋ねた。
それに小春は微笑むと「もちろん」と笑った。
「父上。よろしくお願いいたします」
小春はそう言って外にいた道兼に微笑んだ。
「応」と道兼は答え、鉄砲を構えた。
的は以前と同じで鎧と兜。
道兼が引き金を引くとすさまじい轟音があたりを包み込む。
だが、これで終わりではない。
道兼は素早く腰に付けた木製の小さな箱から火薬の詰まった紙の筒を取り出し、口を切って、そのまま火薬と銃弾を流し込む。
そして銃身に取り付けられた索状でもってそれを押し込む。
最期まで押し込んだ道兼はすぐさま索状を元に戻し、構える。
狙いを定め、引き金を引くとまたもや周囲を爆炎と轟音が包み込む。
「辞めい!」
将吉はそう命じた。
「30秒足らずで次弾を放つとは……。しかし、精度はどうだ?」
感心する将吉はそう尋ねた。
小春はにっこりと笑い、的にしていた鎧を持ってこさせるように命じる。
「父上、さすがです。見事に額と心臓を貫いております」
小春はそう言って、将吉に穴の開いた鎧を見せた。
「……どうやった」
将吉はその鎧を見て絶句し、小春にそう尋ねた。
小春は自慢げに改造された鉄砲と、弾を手に持ち解説をはじめた。
「まず、銃身に溝を刻み弾を回転させ安定させる。独楽の要領だね」
小春の言葉にうなずきながら、将吉が銃身を覗くと確かに3条の溝が刻まれている。
現代で言うところのライフリングというやつだ。
「次に、弾を銃口よりも小さく作り銃弾の底を凹ませる」
「なるほど」
小春の見せた銃弾は今までの完全な球状の物ではなかった。
細長く、底がへこんでいる。
普通なら銃口よりも弾が小さいと爆発力が隙間から逃げてしまう。
しかしながら、底が凹んでいると薄くなった部分が押し広げられ、無駄なく爆発力を生かすことができる。
「なるほど、見事だ」
将吉がそう褒めると「その代わり生産コストがね」と小春は苦笑いした。
それを聞いたうえで、将吉は道兼にこう命じた。
「この鉄砲、増産せよ。ただし、情報の取り扱いには十分注意しろ」
将吉の命令に道兼は平伏し「かしこまりました」と答えた。
これより数か月としないうちに次々と新式の火縄銃が完成していくこととなる。
「三島城下では連日、銃声が響いており……。教練でもしているのかと思われまする」
能島城にて、正成はそう武吉に報告していた。
その報告に武吉は溜息を吐いて、こう答えた。
「よい。捨ておけ」
「しかし――」
武吉の言葉に反発した正成を武吉は睨んだ。
ゾクッと冷や汗が走る正成。
「構わぬ。下がれ」
武吉の言葉を聞いて正成は平伏すると足早にその場を去っていった。
「隆重。将吉に使者を送れ」
武吉は何か案があるようで笑いながら、隆重にそう言った。
隆重が「何でございましょう」と答えると武吉はこう言い放った。
「安宅船の建造を許す。と伝えよ」
武吉の言葉を聞いた隆重は驚きつつも「畏まりました」と答え平伏した。
こんばんわ雪楽党です。
だいぶ武吉の態度が軟化してきました。
この調子で仲良くなれたらいいのですが、そう簡単にいかないのが戦国時代です。
今後も七難八苦色々あります。
また、多数の感想やご意見を頂いております。
何分素人作品で多々間違いや矛盾があるかもしれません。
何かありましたらお知らせ頂けたら幸いです。
今後とも、面白い小説を書いていけるように精進していきますのでよろしくお願いいたします。




