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21話

「足りんなぁ」

 将吉はそういって呟いた。

「金、ですか」

 将吉のつぶやきに時隆は眉間にしわを寄せて応じた。

 そう、金銭が足りないのだ。

 大規模な軍拡と戦が続いたせいで三島城の財はそこをつきかけていた。

「あぁ。金が足りん」

 現在、将吉の有する戦力は関船が13艘、小早は20艘。

 総じて1500を少し超える程度だが、これの維持で精一杯だ。

「帆別船を徴収致しますか?」

 時隆の問いに将吉はひじに手を当てて悩んだ。

 帆別船、それは一種の通行料みたいなもので、基本的には能島城が管理している。

 昨今、来島が寝返ったおかげで航路が一つ増え、来島城でもその徴収を行っている。

 が、これ以外の城が徴収を行うと2重3重に帆別船を払う必要に迫られるため、推奨されていない。

「できれば貿易で儲けたいものだが……」

 将吉の言葉に時隆は溜息を吐くと「それができれば苦労しませんよ」と答えた。

 むぅ……。と唸る将吉と時隆の沈黙。


 それを切り裂くように一人の少女が声をかけた。

「菓子でもいかがですか?」

 若い声に将吉は最初誰かの侍女によるものだと思った。

「あぁ、ありがとう。これは?」

 顔を見ずに将吉は彼女が手渡してきた菓子を受け取る。

 そして、時隆の顔を見ると彼はなぜか呆然としている。 

「どうしたんだ――」

 将吉はそう言って彼の視線をたどり、少女の顔を見た。

「小春殿?!」

 驚いて声を上げた将吉。

 そして彼の手から菓子を取り上げた小春はニコリと笑い口を開いた。

「敬語は禁止でしょ? ね?」

 笑ってそう言った小春に将吉は「すみませ……。すまない」と応える。

 将吉の言葉を聞いて小春は「よろしい」と答えると、菓子を将吉の元へと戻した。

「尻に敷かれておりまするな」

 苦笑いしながらそう言った時隆。

 将吉はその事実から逃げるように話をそらした。

「で、これは。羊羹か?」

 そう尋ねた将吉に小春は「うん。砂糖、高かったんだから」と答えた。

「久しぶりに食べるな」と将吉は言うと羊羹を頬張った。

 久しぶりに口にした甘味はとても刺激的なものだった。

 これほどまでに美味なものはあるのかと自らの下を疑った。

 そして、同時にある考えに行きついた。

「ねぇこれ。手作り――」

「砂糖だ!」

 小春が何か言いかけていたところで将吉は立ち上がってそう叫んだ。

 時隆も何か合点が行ったようで「なるほど」と感心していた。

 ただ一人言葉を遮られた小春だけが茫然としていた。

「時隆! 兄上に使いを送れ!」

 そう言って采配する将吉はとても楽しそうだった。

「承知!」

 どこか、時隆もこの状況を楽しんでいるようだった。

 小春の目の前に二人の少年がいた。

 無垢にこの状況を楽しもうとする二人の少年が。


「小春。ありがとう」

 

 そう言った将吉に小春は拳をギュッと小さく握り締めて


「どういたしまして」

 

 と笑って返すほかなかった。



 それから数日後のこと、武吉の元に向かった使者は無事、砂糖の交易を行う許可をもらってきた。

「これで、金銭は解決しますな」

 時隆と将吉は心底嬉しそう談笑していた。

 既に日は暮れ、そろそろ夕餉の時間だ。

「しかし、道兼殿が遅れるというのは珍しいですな」

「大方、何か厄介ごとに巻き込まれたのだろう」

 道兼を案じた時隆に将吉はそう言って笑った。

 というのも、今日は三島城にいる3人で小さな宴を催す予定なのだ。

 将吉たちがここに来てから戦や内政で忙しい日々が続き、戦勝を祝うことすらなかった。

 多少落ち着いたため、今日すべてを纏めてやってしまおうということだった。

 すでに二人は多少の酒が入っており、何処か楽し気だ。

「いやはや。申し訳ございませぬ」

 バタバタと足音を立てて、汗をかいた道兼が登場した。

「道兼、どうしたんだそれは」

 将吉は少し驚いたような顔をしてそう尋ねると、頭をポリポリとかきながら「いやはや、少しばかり」と言葉を濁して笑った。

「まったく。父上は落ち着きが足りませぬ」

 その後ろから涼しい顔をした小春が顔を出した。

 将吉と目が合うとニコリと笑った彼女は迷いもなく将吉の隣に座る。

「これはこれは小春様。またお会い致しましたな」

 小春を見て恭しく頭を下げた時隆。

「ふふ、交易の話がうまく行ったようで何よりです」

 小春の言葉を聞いてぎょっとしたのは時隆と将吉であった。

 交易の話は小春にもしていたが、成功したとは話していないはずだった。

「あら、本当に成功したんですね」

 そう言ってケロッとわらった小春に将吉は呆れた。

「こういうのも必要でしょ?」

 将吉に微笑んだ小春。

 彼は溜息を吐いて小春の額を軽くデコピンすると「我が家のような小さな家では不要だよ」と笑った。

 だが、小春はジッと将吉を見つめるとこう笑った。


「なら、将吉様がこの家を大きくして。ね?」

 

 それを聞いて驚いた男3人。

 少し時間が立つと腹を抱えて大笑いした。

「あぁ。解った。日本で1の水軍を俺は作る」

 酒の勢いだろうか。

 将吉はそう言っていた。

 

 後になって、あの時の発言は少々迂闊であったと後悔するのは後の話。

こんばんは雪楽党です。


今回から内政回が数話続きます。

富国強兵を推し進めていく将吉にご期待ください。


また、これからは小春の出番が大分増えていきます。

可愛らしい少女を書けるように努力しますのでどうぞ、よろしくお願いいたします。

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