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15話

「出陣!」

 1547年10月。

 平岡房実が出陣した。

 安宅船3隻を筆頭に関船が40艘、小早に至っては75艘もの大軍が湯築城周辺に集まっていた。

 陣立ても豪華なもので平岡房実を総大将に数多くの歴戦の猛者たちが集った。

 小早50艘と関船20艘がまず先陣を切り、能島へと直行。兵数およそ3000。

 その間に安宅船3艘と関船10艘が来島城を目指す。兵数およそ1000

 また、後備として小早25艘が待機する。兵数およそ600

 まさに異様な大軍と言えた。

 この軍団は河野家が出しうる全兵力でもあり、これほどの大部隊が一度に集結したのは非常に珍しいことであった。

「最近は大戦が続きますな」

 房実に副将の道興はそう笑った。

 能島による大祝攻め以降、海での戦は激化している。

「なに、これで終わる」

 確かな覚悟と共に房実はそう言った。

 自らの手で瀬戸内を荒らす能島を成敗する。

 そう強い覚悟があった。



「すぐにすべての軍勢を集めよ! 三島、甘崎、来島は除外とする!」

 あわただしく人々が行きかう能島城にて武吉はそう命令を出していた。

 来島は恐らく敵が攻め寄せる。

 少しでも時間稼ぎを。

 そして、三島の将吉には謀反の噂が流れている。

 迂闊に能島城に招き入れることはできない。

「もしや、若の謀反。河野の策略かもしれませんな」

 隆重はそう忌々しげにつぶやいた。

「なるほど、それならばつじつまが合うわ」

 河野は僅かな手間で三島城1500と甘崎城の1000の兵を戦場から除外させることに成功したのだった。

 残る兵は僅か3000。

 どう考えても数の利は敵にある。

「地の利を持って戦いますかな」

「それしかあるまい」

 隆重の言葉に武吉はそう笑った。

 その表情は今までのどれよりも凶悪であった。

 

 結局、武吉が集められたのは安宅船2艘と関船20艘、小早は40艘のみであった。

 当初3000を超えると目されたが連戦により疲弊した結果2800しか集まらなかった。

「隆重、関船10艘、小早20艘を預ける故、来島へと向かえ」

 2800のうち、1300を隆重に預けると武吉はいったのだった。

「よいのですか?」

 隆重はそう尋ねた。

 普通こういう時は来島を捨て石にして能島城に全兵力を持って籠城するのが普通だ。

「あぁ。敵を防いだ後に、主力を背後から襲え」

 武吉の言葉に隆重は呆れた。

 同時に「面白い」とも思った。

「承知仕りました。お役目、果たしてまいります」

 隆重はそう平伏するとすぐさま兵を纏めに行った。

 一人、鶴の間に残された武吉は頬杖をつきながらニヤリと笑った。


「将吉よ、どうする」


 危機的な状況にあっても、この男は楽しむことを忘れてなかった。

 


 湯築から能島城を目指し北進していた河野軍は能島から来島へ援軍が到来したのを察知し、その場で北上し能島を目指す隊と、東進し来島城を目指す部隊に分かれた。

 能島を攻める隊を房実が。

 来島城を目指す隊を和田道興が指揮する。

「敵襲!!」

 来島城沖2海里ほどの地点で道興は奇襲を喰らった。

 突如として島影から小早が10艘出現し、猛烈な火矢を浴びせたのであった。

「落ち着いて事に対処せよ」

 しかしこの程度、四方で戦を続ける河野軍にとってはもはや慣れたことであった。

 兵に至るまでが戦に慣れ、その適切な対応をとっていた。

「この戦。負けるはずがない」

 道興は急いで撤退していく村上軍の小早を見てそうほくそ笑んだ。



「殿! 敵は安宅船3艘と関船10艘でございます!」

 物見に出していた10艘の小早が交戦したようであった。

 隆重は帰ってきた兵から状況を聞くとすぐに命令を出した。

「下手な小細工などもはや無用! 者ども錨を上げよ!」

 この来島城攻めにおいてのみ、村上軍は数において勝っていた。

 相手は1000。

 対して隆重は1300。

 下手を打たねば負けない。



「鶴翼の陣を引けぇぃ!」

 錨を上げ北上すると道興率いる河野の部隊が見えてきた。

 敵が魚鱗の陣であることを確認した隆重はそう命令を下し、部隊を左右に大きく広げた。

 中央は関船で構成され、左右には小早が連なる。

「射程か?」

 隆重は自らの船に乗っていた兵に尋ねた。

 すると兵は「はっ。もはや我らの射程内にございます」と答えた。

 隆重はゆっくりと頷くと、軍配を振り上げた。

 そして、振り下ろすと同時に叫ぶ。

「放てぇい!」

 その瞬間、両軍の船から大量の弓が放たれたのであった。

「間断なく射かけよ!」

 隆重の命令に呼応するように兵たちは必死になって次々と矢を放つ。

 向こうからも矢が放たれるがすべて船に当たることなく後方へと落ちていく。

「慣れすぎたな」

 隆重は敵の兵を見てそうニヤリとわらった。

 敵は戦になれている。

 

 だがそれは陸の上に限ったこと。

 陸の上と海の上での戦というのは全く別物なのだ。

 それを理解せずに経験だけで敵は矢を放っている。


「仕掛けるぞ」

 隆重がそう命じると狼煙を上げさせる。


 それは、攻撃の合図であった。



「紫の狼煙が!」

 正成は右翼の小早集団を指揮していた。

 兵の一人が中央で上がった狼煙を報告する。

 それと同時に今までは静かに座っていた正成は立ち上がり、叫んだ。


「敵後方へと突進せよ!」

 その号令と共に右翼の小早が敵を包み込むように前進を開始した。

 左翼でも同様のことが起きており、敵は包囲されつつあった。


「首は捨て置け! とにかく敵を討ち取れ!」


 正成はそう叫んだ。 

こんばんは。

雪楽党です。


気が付けばブックマーク900に到達していました。

本当に驚いております。


このままいけば書籍化のお話がきたり……。

きたらうれしいです。(笑


あ、そのうち小春さん視点で番外編とかも書いてみたいです。

どうぞご期待ください。


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