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12話

「というわけです。申し訳ございませんが、妻のフリをしていただけませんか?」

 将吉は翌日、小春の元を訪れていた。

 昨夜あったことを説明する将吉を小春は微笑みながら聞いていた。

「ふむ、ふむ」と時折、頷きながら聞く小春を見て将吉は年相応だと微笑ましく思った。

「二ついいですか?」

「なんなりと」

 小春の言葉に平伏する将吉。

 それを見て苦笑いする小春は中空を見つめながら一つ一つ尋ねていった。

「一つ、私は何をすればいいの?」

 その問いに将吉は言葉を詰まらせた。

 武士の妻とはいったい何をするのだろうか。

 夜伽以外に思い当たる節はない。

 だが、目の前の少女にそれを要求するなどもっての外だ。

 将吉は加害者であり、彼女は被害者であるのだ。

 この状況を作り出したのは将吉であると言っても過言ではない。

「この奥にて、ただ居られるだけで結構です」

 将吉の言葉に「うん、解った」と小春は満足そうに答えた。

 そして、次の問いにを投げかけた。

「2つ、扱いは正室? それとも側室?」

 小春の問いに将吉は思わず吹き出してしまいそうになった。

 気にするのはそこなのかと。

 それと同時になんとも強かなと感心した。

 目が覚めて僅か2日でここまで適応できる彼女に将吉は畏敬の念を抱いた。

「扱いは正室でございます」

「ふむふむ。さてはどこかの滅んだ家の娘か何かということにしたのかな?」

 将吉はぎくりとした。

 どこまでこの少女は状況に適応しているのかと。

「どこ?」

「越智家にございます」

 小春はそう尋ねた。

 気が付けば口調が変わっているが、恐らくそれが彼女の本当の姿なのだろう。

「越智、越智……。わかんないや」

 何度か越智と繰り返したが最後はそうけろっと笑った。

「……帰りたくはないんですか?」

 ふと、将吉はそう尋ねてしまった。

 将吉と違って彼女は生きれるはずであったのだ。

 にもかかわらず、この時代に来てしまった。

「まったく」

 小春はそう言ってジッと将吉を見つめた。

「今を楽しまなくちゃ。ね?」

 そう言って笑った小春の表情は、どこか儚げであった。



「兄上、婚儀の許しを得たく」

 2日後、将吉は武吉の元を訪れていた。

 兄の許しなく結婚すれば何があるかわからない。

 ここは素直に許しをもらいに行くほかない。

「何処の娘だ」

「越智隆実が娘にございまする」

 将吉はそう言って平伏した。

「ふむ。大方哀れに思ったのか」

 武吉はそう言って将吉を一瞥した。

 その瞳は何を考えているかわからない。

 年は5つと違わぬはずなのに。

 この迫力の差は何なのだろうか。

「将吉よ。お主も我らが一門なのだ。もっと良き縁を――」

「よいぞ」

 隆重が将吉を諫めようとするが、それに武吉は割り込んだ。

「なっ?!」

 驚きの声を上げる隆重。

 そして、将吉は間髪入れずに平伏した。

「ありがとうございます!」

 その姿を見て満足げに頷く武吉。

 隆重は目の前にいる武吉の真意がわからなかった。

 一門衆の正室というのは外交カードとしても一級品だ。

 仮に相手方の当主の娘を一門衆の正室に迎えればそれだけで数十年と続く盟ができる。

 ましてや内乱で家督を簒奪した武吉にとってそれは非常に少ないカードの一つだった。

「その者を飯田道兼の養子とした後に正室として迎えろ。後は任せた」

 武吉がそう伝えると将吉は「かしこまりました」と答え、下がっていった。

 それを確認した隆重は武吉の正面に回り、「どういうおつもりですか」と尋ねる。

 武吉は隆重の問いに眉を顰め答えた。

「例えばあ奴に大内の娘を娶らせたとしよう。どうなる?」

 武吉の問いに「大内との盟がより一層強まりますな」と答えた。

「俺の死後は?」

 武吉の死後。

 それはもちろん隆重もこの世にはないだろう。

 残された将吉と、その息子。

 そして武吉の息子たちが残るだろう。

「……家督争いですな」

 確実に、大内は我が家を乗っ取ろうと将吉を背後から操るだろう。

「そうだ。もしかしたら俺が生きているうちに起こされるかもしれぬ。婚姻により盟を結ぶというのはそういうことなのだ」

 婚姻を使った外交工作は幾度となくこの日ノ本で行われてきた。

 それに備えるのは至極当たり前のことではある。

 だが、それにしても。

(兄に信頼されぬ将吉は不憫だ)

 そう、思わざるを得なかった。



「というわけだ道兼。協力してはもらえぬか」

 将吉の自室で彼は道兼にあたまを下げていた。

「殿が、そう仰せられたのでしたら」

 未だに懐疑心が強いが武吉の命令ということもあり、了承してくれた。

 将吉は頭を上げるとニカッと笑い道兼にこういった。


「では、これからよろしくお願いいたします。父上」


 その瞬間、道兼は将吉の頭を思い切りひっぱたいたと言う。

 後にも先にも、道兼が将吉に手を上げたのはこの時だけであった。

こんばんは。雪楽党です。

ついに日刊ランキング1位から陥落致しました。


しかしながら、今度は週間ランキング1位に輝くことができました。

週間ランキング上位に載ったのは本当に初めてで驚いております。


本当にありがとうございます。

今後はブックマーク1000を目指して頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。


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