ゴブリン、一騎討ち
戦闘描写練習
ホゴルの身体が跳ねる。 ホゴルの全力の走行は、実は「オレだってそれに耐えられるわけではない」のだ。 オレやゴブリンの騎士たちがこうして相棒とする、スバンの特徴として全身で加速することができるが、それは乗っているオレを振り落とす勢いのものである。 鐙にかけた足と、片手で操る手綱だけが頼りだ。 太腿は、この愛しい獣が駆けるのに合わせて、柔軟に、すっ飛ばされないように弾ませる。
視線は敵を見据える。 身体はブルブルと震えていることを、無視する。 肺が縮み上がる、はらわたが膨張するような感覚。 息を合わせろ。 空気を吸いあげろ、耳はすでに用を為してない。 ホゴルが生み出す向かい風に混じり、ウォークライが、仲間の歌が聞こえる。
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ぶつかり合う。 そう確信するほどに、互いの視線は絡み合う。 左肩から右腰へ払い、自分に向けられた剣が、弾ける。 呼吸を合わせて、ホゴルの身体のうねりを感じて、身体を寄せる。 左に廻る。 身体を立て直す。 手綱は咥え、かみしめる。 鞍を掴むように体勢をとり。 剣を引きつけ、構え直す。
右肩に担ぐように、ホゴルが大きく跳ねようとしている。 噛み締めたままの手綱をたぐり、備えるのを待っていたかのように、身体が沈み込み、跳ねる。
捕らえた。 ゴブリンソードが噛み付いた。
驚愕を目にする、オレの頬に笑みが浮かぶ。
ダメージを示すエフェクトが顔に飛び散ってくる。 という錯覚に、手綱を持っていた左手を、剣に。 さらに一撃。
歓声が、聞こえたのか、それとも、肩で息をする自分の胸が、空耳を聞かせたのか。
自分でも、思い出せない。
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この日、不名誉な称号が生まれた。
「ゴブリンに一騎打ちで負けた男」だ。
二度だ。 二度鎧を砕かれ、大ダメージを受け、落馬。
慌てて再度の攻撃を受けようとして、さらに一撃。 ゴブリンのなぎ払いで、宙に浮き、吹っ飛ばされたのだ。
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「やっぱりお前はとんでもなくすごいスバンだよ。」
「フゴッ!! ゴブゴブ!!」
楽しくやっていきましょう。