7話 ギルドに登録
俺は周りの賑やかな雰囲気の中、ミリラと街を静かに歩いていた。行き交う人々を見ると、腰や背中に剣や弓、杖を差している。冒険者だろうか?でもやっぱり商業中心で商人や馬車がめちゃくちゃ道を通っていた。
思想に浸っているとミリラが話しかけてきた。
「僕の案内はここまで、あの大きな建物が冒険者ギルドだよ。じゃ、頑張ってね」
「案内してくれてありがとう。じゃあ、また」
挨拶を済ませて俺はギルドに行こうとした時、ミリラから声が掛かった。
「待って!まだヒカリに報酬を渡してない」
「ああ、そうだった」
ギルドのことで頭がいっぱいで、すっかり報酬の存在を忘れていた……
あっ………………別に早くギルドに行きたかった訳じゃないんだからね!
ミリラは小袋を渡してきた。
「多すぎではないか?」
「ん〜、それ位が妥当だよ。だって僕はヒカリがいなきゃ死んでいたしね」
「そうか……それじゃ、ありがたく貰うよ……」
「困った時にはいつでも頼っていいからね。それじゃ」
ミリラは一言だけ残して風のように去っていった。俺は背後を向いた。剣と盾と杖の模様が入っている看板と、大きな扉が目に入った。
「たのもー」
と俺は心の中で叫びさっと気配を消しながら静かにギルドの中に入った。
周りを見回すと受付が3つと机がいくつか並んでいた。冒険者はあまり居なかった。昼間なのになぜ?
考えていると10代後半くらいの若い受付嬢がこちらに気付いた。
「どのような御用ですか?」
受付嬢がモフモフ耳をピクピクしながら訪ねて来た。ん?……モフモフ耳?これは⁈
神と言っても過言ではない神聖さと地球人すべての男子たちを魅了する力が兼ね備わった…………
ケモミミ!!!!!!
「あの!耳を触らせて下さい」
「え!…初対面の人にそんな…………何?告白されてるの?…」
だんだん声が小さくなり最後はあまり聞こえなかった。
「はっ、仕事しなくちゃ。ゴホン!……御用はなんですか?」
「耳…モフモフ、耳 ……」
「あの〜聞いてますか?」
「え?あ、聞いてなかった」
「御用はなんですか?」
「ギルドに登録しに…」
「ギルドの説明はしますか?」
「よろしく」
「えー、まずギルドはランクを用いていて、FランクからSSランクまであります。次のランクに昇格するには10ポイントが必要です。自分と同じランクの依頼を成功したら1ポイント。1つ上のランクの依頼をクリアしたら、2ポイントが追加されます。もちろん2つ上のランクの依頼をクリアしたら2ポイントです。でも、特別に3つ上のランクの依頼をクリアしたときのみそのランクに昇格できます。Sランク以上になるためには冒険者ギルド本部の試験を受けないといけません。ランクを上げたら色々な特典があります。例えば、報酬が増えるとか…それと、冒険者同士での喧嘩などにはギルドは一切関わりません。
ではこの紙に必要事項を記入してください」
紙には名前、年齢、出身地等を記入しないといけないようだ。
「全部書かないとだめか?」
「いいえ、隠したい事などは書かなくていいですよ」
「意外と軽いんだな」
俺はスキル少しを書かずに提出した。
「今からギルドカードを作ります。数分間かかるので説明しておきますね。
ギルドにはランクが書かれています。魔法などを使ってランクの不正などをするとステータスの称号に現れるのでやめておいた方がいいです」
「分かった」
「ギルドカードができました。ギルドカードにステータスを記録しますので、この機械に指を入れて下さい」
俺は小さな機械に指を入れた。この世界に来て2番目に恐い。何かわからないものって恐いよね。
「えっ!……魔神……」
「ん?どうかしたのか?」
「い、いえ…何でもないです。こ、これでギルド登録は終了です。他にご用件はないですか?」
「あっ、そうだ。ここに来る途中で魔物を倒したんだ。売ることはできるか?」
「できますが、どこに魔物が居るんですか?」
「ああ、今から出す」
俺はブラックウルフを亜空間から肉以外の1匹分の素材を取り出した。
亜空間の中で解体しておいたやつだ。もちろん魔法を使ったけど…
「え、いまどこから…」
「魔法でしまっていたんだ。便利だよ」
「そんな魔法、見たことも聞いたこともありません」
受付嬢が勢いよくカウンターから身を乗り出して来た。
「あ…そうだった。忘れていた」
「ゴホン………失礼しました。では買い取らせて頂きます」
「あの〜、まだあと4匹分あるんですけど…」
「そうですか…ではそれらも買い取らせて頂きます」
受付嬢は素材を見ているようだ。
「解体は完璧ですね。1匹分30000デニで、合計150000デニです」
受付嬢は銀貨を15枚渡して来た。
俺は銀貨とギルドカードを受け取った。
「そういえば名前聞いてなかった。名前なんて言うの?」
「私はラミです。よろしくお願いします。はい、これがギルドカードです。Fランクからのスタートです。今日からもう依頼を受けますか?」
「いや、今日はいいよ」
「そうですか」
俺は数日は依頼を受けずに街を探索しようと決めていた。
「数日後には依頼を受けるよ」
俺はクールに返答しながらも、モフモフできないことに血の涙を流しながらギルドを出て行った。