1-2 師匠
「おっ、今日は早かったじゃねーか」
そう言いながら、復活した俺を迎えてくれたのは、俺を刺し殺した張本人。まさに、外道で鬼畜野郎な彼はいかにも問題が無いかのように軽く、俺を出迎えてくれた。
俺は腰のナイフに手をかけて、彼に投げつけた。
「おいおい、八つ当たりか。この天才的な才能を持つ俺様にか?」
「うっさい、もう死んでくれ。頼むから」
「ははっ。俺は死んでも、復活できんから、そりゃ無理だな」
俺が死んだ時すらもかっこつけやがったのに……なーにが、「特訓はまだ残っている」だ。自己中でナルシストなくそ野郎だが、実力だけは折り紙付きだ。
そんな彼は名をロルフ・シュワルツという。
一応、彼はこの王国の貴族であるが、名誉貴族な為に殆どなにもすることが無い。稀に事務処理などがあるらしいが、まぁ本当に稀にらしい。
冒険者ランクSS。細剣と卓越した魔術の腕。
【剣魔の天才】と異名を持つ彼が俺の師匠をやってくれてんのも理由があるが、それは置いといて……
「なんで、俺の食い物勝手に食べてんの!? それ俺のラスト一個の甘みなのに」
「修行にこんな甘いものなんていらんだろが! 蜂蜜なんぞ、買ってくる方が悪いだろが!」
「はぁああ」
「大体、男なのに、なんでこんな甘いものが好きなのか、疑問が尽きん。だけど、休憩は終了だ。特訓を再開するぞ。次は各武器五百回の素振りと耐性系技能の獲得か?」
「五百回の素振りだろ」
当たり前だ。なんで、わざわざ死なないといけないのか?の思う。
そう俺が言うと、絶対黙っている。すると、師匠は空間に文字通り、手を突っ込んだ。空間魔術の一種だ。魔術名を【虚空庫】という。
彼はそこから、数多の種類の武器を出した。
短剣、細剣、斧や鞭、鎌などもある。てか、手裏剣なんてこの世界にあるんだ。鉄砲みたいな物もあるし、怖いなと俺は思いつつ、おそるおそる、武器を触ってみた。
「それ一通り、全部振ってみろ」
「……」
「多分、一個ぐらいは技能として獲得できるだろう」
一番、怖いのは師匠でした。どうやったら、そんな神業のようなができるのか?体力不足で死ぬかもしれないぞ。
「じゃあ、始めろ」
そこから、十時間後、俺は遂にぶっ倒れた。
【肉体の死を確認……特殊技能【無限復活《リスポーン」】を発動……肉体の再構築……意識を覚醒……個体情報を引き継ぎます】