1-1 過去の回想
俺の名前は田中響。高校一年生だ。いや、高校一年生だったというのが正しい。俺は今、高校一年生では無い。学校にすら行けていない。引きこもりのニートになりました。ってオチじゃない。
最初に言っておくと、俺はトラックに轢かれた訳でも無いし、女神様にあった訳でも無い。クラスメートと白い光に巻き込まれて王女様の目の前にいたということもない。
だけど……
俺は今、俗に言う、異世界にいる。
簡潔に言うと、剣と魔術の中世のヨーロッパ的な世界。多種族……森精族や獣人族などもいて、冒険者組合や魔獣もありありの世界だ。所謂、よくある、RPG的な異世界の設定だ。
もし、この世界に来てしまった時のことを話すとしたらこうだ。
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「やっべえ、遅刻だ!」
その日、俺は通学路を走っていた。学校に遅刻しそうだった。全力で走っても間に合うか。でも、走るしかない。
そして、いつもの坂道に差し掛かった時だった。
疲れたな、と思い、俺は一旦足を止める。学校までの道のりが、いつもより長く感じる。時計を見ると、もう遅刻確定な時間だ。
「終わった……」
俺が、諦めたその時、俺の視界が大きく揺れ、歪んだを空間が捻れ、目の前に何かが映った。
「へっ?」
思わず、間抜けな声を出してしまった。だが、大きくて黒い目が俺を見ていた。巨大な大きな目が……幾つも、こちらをじっと。捕食者が、獲物を見定めるかのような感じだった。まさに、じっくりと見定めている感じだった。
何なんだ、あれは?
俺は疑問に思う。
――そして、一瞬、目が赤く光った気がした。
多分、俺はあの目を、これからの人生で忘れることはないだろう。
体が痺れて動けないのは、気のせいかもしれない。だけど、俺は、気付いたら、体ごと道路に倒れていた。
そして、俺が気付き、目を開けた時、おれは倒れていた。しかし、それは道路のど真ん中では無く、薄暗い洞窟のような場所だった。つまり、迷宮内で倒れていた。
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非常に簡潔な説明だが、問題は何にも、目標が無いことだ。
いっそのこと、魔王を倒せとかのシンプルな方が良かった。
そうだったら、元の世界に戻れたのに……いや、戻れる可能性があったのに。
そんな異世界に来てしまった俺だが、チートな特典は何一つ無かった。いや、一つだけ特別な能力があった。
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【無限復活】
特別技能
説明:死んでも生き返る。技能や記憶などは持ち越す。但し、痛覚はあるので、精神が壊れることも……
《復活まで、残り5分》
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