1-9 ロルフとカレンの会話
ロルフ視点
「……これは……?」
カレンはまさに、生き返る寸前の彼を見て、驚いていた。
「【無限復活】。無限に生き返る、死ぬことがなくなる特殊技能だ」
「不死族とは違うの?」
「【解析】持ってただろう。それで、種族を見ればいい」
彼女は一端、息を整えてから、技能を発動する。
「???ですって? なによ、それ? 人間ですらないの?」
「いや、彼自身は人間だろう。ただ、称号【異界の民】。これが原因だ。恐らくだが、この世界の人間とは根本的に仕組みが違うのだろう。彼は魔術が絶対に使えない。無属性ですらも」
「えっ」
「そもそも、該当する魔力がないに等しいんだ。だから、この世界でいうと生命ですら無くなる」
カレンはまた驚いた顔をした。そして、彼女は魔術を使い、理解が出来ないかのような顔でいた。
「本当に魔力がない。いや、少しだけあるわ。ただ、零にほぼ等しいぐらいの本当に少しの」
もうカレンは驚くのをやめたのか、冷静な顔付きになり、俺に尋ねた。
「本当に彼は強くなるの?」
彼女の疑問は最もだ。魔術が使えず、技能もそこまで優秀ではなく、唯一の力は【無限復活】のみ。強くなる要素が見当たらない。
「後、三年しか残ってないのよ」
そうだ。彼女は正しい。後、三年だ。あれが起きてしまうまで後三年。
「三年で、彼は強くなるの?」
彼女は正しいのだ。弱者は弱者なままだ。だけど、俺はそう思わない。
「あぁ。絶対に強くなる」
「ヒビキ。そう。ならいいわ。ただ、後、半年以内には迷宮をクリアさせて。そうでないと、王があなたに……」
「大丈夫さ。【王の権利】なんて、所詮、ただの言葉だ。いざとなったら、お前も連れて、逃げ出してやるよ」
「まぁ、ありがとう」
カレンは俺に礼を言った。
「はぁ。一先ず、迷宮に留まるか。行くか。どっちだ」
「そうね。ひとまずは仕事を片付けてからかしらね。冒険者組合長がこんなことしてると知ったら、あいつ、副冒険者組合長が許してくれるはずがないわ」
「あいつ、生真面目だからな」
「一週間で帰ってくるようにはするわ。多分」
「わかった」
俺はそう言って、術式を編み始めた。
「【転送】」
術式が空間に作用し、空間が歪んだ。そして、カレンが消えた。
「もっと、厳しくしてくか。仕方ない」
呟いた声は、迷宮に響き、三年後の世界を思い浮かべた。
多分、今の彼はとても憔悴している。それは見ていてわかる。
ただ、この後、どんどん魔獣の数は増えると思われる。これは一部の人間しか知らない情報だ。ただ、信憑性が高いだけに無視できない。
これからの世界で彼は生きていけるだろうか。かの古代人魔大戦に匹敵する争いが起こるという予想もある。
まぁ、仮にそうなったら、完全に世界の終わりだ。世界は地獄と化すだろう。
俺はヒビキが完全に復活したのを見たのを見た。
異界の少年。彼は伝承の勇者なのか、魔王なのか。
「強くなれ」
俺はまだ眠る彼に向かって声をかけた。