7話 自業自得
さて、この場所で悪人を懲らしめるか。俺は育ての親であるお父さんとお母さん以外に人間と敵対して相見えるのは初めてだが不思議と恐怖や不安はなかった。それだけ相手が格下なのだろうか。だが俺は雑魚だろうと油断すると足もとをすくわれることを前世の記憶として知っている。だから、あえて自分で相手は強敵であると自分に言い聞かせて緊張感を体にもたせる。そしていつでも攻撃できるように手首を回したり足をトントンと地面に爪先の方を軽く接触をさせる。
この行動の意味は準備体操みたいなものだ。格闘技を習った事がある人なら分かるが攻撃をするまえに軽く体のリズムを整える必要がある。その他にも俺の経験だが緊張したりしてると最悪、体が動かなかったら困るのでこういった軽いウォーミングアップは必要だと思う。
「お兄ちゃんここ行き止まりだよ?道間違えたの?」
妹の純真無垢な疑問形が心に染みるなー。
「そうだよ、お兄ちゃん。迷子になるとは、お兄さん達が家まで送り届けてやるさ。ただし、そこのお嬢ちゃんだけな。お金は道案内の料金として、全額置いて行ってもらうがな。グヘヘへ」
数は4人か。これだけ状況証拠があれば日本だと警察が動いてくれるな。しかし、ココは日本ではない異世界だ。まぁ、いきなり自分から人を攻撃するのは躊躇うな。よし、ここは殴りにきてもらうか。
「ちょっとそこのオッさん達」
「あっ、なんだこのガキ。口の聞き方がなってねーな。」
「人間のクズみたいだな」
「なんだと!?ちょっと躾が必要だなクソガキ」
「どうせ、そのガキは殺すんだし、さっさと殺して楽しもうぜ」
「それもそうだな」
男は大剣を両手に持って襲いかかってきた。
[軽防風]
俺は風魔法で腕に空気の盾を作った。男は上から下に大剣を振り落としてきたが、俺は冷静に腕を頭の上にやり空気の盾で大剣の運動エネルギーを殺す。
[水切剣]
次の瞬間、俺は身体強化をしながら水の片手剣を水魔法で作り4人の男達の右腕を切り落とした。水の片手剣は俺の好きな魔法剣である。水なので硬い魔物や防具には意味のない魔法だが俺の身体能力をもってすれば素早く振り下ろした水の剣でも人間の腕くらい切れる。本当は殺してもいいんだがこいつらには他のバカなやつらを抑える抑止力になってもらおうという俺の浅知恵だ。
「俺の腕がぁぁーー」
「うわぁーー」
「助けてくれぇー」
「いたいぃぃー」
まぁ、自業自得というやつだな。
「妹よ、転移魔法で宿に帰るぞ」
「なにがおきたの?」
「シロ、身の危険が起きた時は目を身体強化で動体視力を上げることってお父さんに習ったでしょ?」
「うん、忘れてた」
まだ、シロは年齢相応のレベルかな。まぁ、普通はそうだよね。俺みたいに前世の記憶無いもんな。
「まっ、宿に帰りますか」
「うん」