3話 初めての魔法
ダンジョンで拾われてから三年の月日が流れた。
俺は今、何をしているかというとパパとママの家で本を読んだり筋トレしたり木刀で素振りしたり魔力制御とおままごとをしている。
パパとママとはダンジョンで赤子の俺を拾ってくれた育ての親というやつだ。
そして、魔力制御とは体内の魔力を緻密にコントロールすることだ。魔力があるこの世界ではあたりまえのように自分の魔力を感じることができる。魔力制御とは血液の流れのように体全体に魔力が流れるようイメージしながら身に纏う。これがいわゆる魔力による身体強化でもある。
俺はパパとママとこの異世界の妹に自分が転生した地球人だったことは秘密している。なので歩いたり喋ったりするのは妹のシロを参考にしてシロを基準にしている。シロは喋るのも歩くのも地球の赤ちゃんより遅いのと変わらず生まれてから一年半だった。まぁ、赤ちゃんはハイハイで背筋の骨を鍛えるらしいし、歩くまでに時間が経っても平気だろう。ただし、シロと俺は普通の人族ではないらしい。
「お兄ちゃん、おままごとしよう」
「いいよ。ただし、血は五秒しか飲んではいけないからね」
「うん、分かった。お兄ちゃんの血はすごく甘くてサラサラして飲みやすいから好き」
そう、妹のシロは吸血鬼という珍しい種族なのだ。吸血鬼といっても普通に食事するし毎日血を吸わないといけないわけではないし、十字架も怖くないらしいし、心臓に杭を打たなくても物理攻撃でたぶん死ぬ。ただし、妹のシロは吸血鬼という種族のおかげで魔法による攻撃はダメージを受けない。
俺の異世界の妹は金髪のロングで目も金色だ。妹は可愛いなと思う。誤解しないで欲しいのが俺はロリコンじゃないし、義兄妹ということも分かってる。なぜなら俺の種族と妹の種族は同じ種族同士でしか子供が生まれないからだ。家にある本に書いてあった。
そして俺の種族は伝説のエンジェルドラゴンだ。
今は妹の種族と同じで絶滅したと言われる珍しい種族だ。なんでエンジェルドラゴンなのか本で調べたら単体でドラゴンを斃したからだだと書いてあったがなぜエンジェルなのかは書いてなかった。
一年の月日が流れた。
いつも通りに体や魔力制御を鍛えていた。そしたら、お父さんとお母さんにシロと俺が呼ばれた。流石に四歳になったのでパパ、ママではなくお父さん、お母さんと呼んでいる。
「なに?お父さん、お母さん」
「今日はシンとシロに大事な事をお話しようと思うのよ」
シンとはこの世界の俺の名前だ。
「母さんの話を冷静に聞いてくれ」
「お父さんとお母さんはあなた達の本当の親ではないのよ。そしてあなた達、兄妹も血は繋がってないの」
俺はそんなことかと思っていた。俺は赤ちゃんの時の記憶があるから知ってたからね。でも妹のシロはショックを受けるんだろうな。
シロはそれを聞いて震えていた。
俺はショックがないけど動揺してないと、知ってたのかと疑われるので自分の部屋に引きこもった。
次の日にまたお父さんとお母さんに俺とシロが呼ばれた。
「シン、シロ。今日はお外で遊ぶ事を許可します。しかし、お父さんが近くにいるのが条件です。お外には怖い人や魔物がいます。比較的この辺は私達が掃除したので魔物はいないと思いますが注意してくださいね」
初めての外出許可に俺は心が震えていた。ようやく、家だと危ないと思って使わなかった魔法が使える時が来たのかと。
俺はお父さんとシロと山々が見える草原に来ていた。歩いて30分くらいの場所だ。しかし、田舎みたいだな。お父さんとお母さんたまに出掛けて食材買ってたけど、この辺には食品売り場なさそうだよな。
「お父さん、食べ物ってどこに売ってるの?」
「それはね、ここから南に2時間歩いた所だよ」
「遠いねー」
俺とお父さんはそんな会話をしつつ、シロが草原で走り回ってた。
「じゃ、父さんは草原で寝てるからなにかあれば起こしてくれ」
「了解」
「はい」
さて、俺は本に書いてあった魔法ではなく、レーザービームに地球にいた頃は憧れてたから光属性魔法を使うかな。まぁ、適正がなければ魔法はでないだろう。俺はわずかに心が弾む感覚を覚えながら光のレーザービームを鮮明にイメージした。家の魔法書を漁って見つけた最上級魔法。山を狙い少し魔力を出す感じで呟いた。
「線状爆破」
別に魔法名を呟く必要性はないが一応言った。
山の上が綺麗に消し飛んですごい爆音と揺れが起きた。
「なんだ、おいシロ、シン大丈夫か。ドラゴンか何かがきたとでもいうのか。くそ、お前らは命にかえても守ってやる。俺の側を離れるなよ」
「うわぁぁーん、お兄ちゃんが山を吹き飛ばしたよー。揺れが怖かったよー」
俺はどうやらやらかしてしまったらしい。お父さん、お母さん俺を捨てないで下さい。
「どういうことだ、シン?」
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