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「あちち」
屈強な狼男は、危険物でも扱うかのように恐る恐るココアを啜った。
「あんたは本当に馬鹿だねえ。その馬鹿に私は何度も困らさせてさあ……。頼むから少しは賢くなっとくれよ。あーあ、私の息子は馬鹿だ馬鹿だ。本当に馬鹿だ」
私の頭をなでながら、母は憎たらしい愛をこぼし、笑顔で死んでいきました。
「心の中にね、地獄があるんです。そこに愛する人を突き落としてみる。そうすると、自分が如何に相手を愛しているか、よく分かりますよ」
大好きな先生は、私に地獄の場所を教えると、私の肩を軽く押した。
「釣り釣りって、暇さえあれば釣りに行くけど、お父さんに今までで釣ることができたのお母さんだけでしょ!」
いそいそと準備をする私に、娘は尾びれをばたつかせながら、怒りをぶつけてくる。
「貴女は僕の仏様だ」
私のような屑が仏なものか。反論の言葉を胃に溶かし、私は彼を優しく抱きしめてやった。屑だろうが、何だろうが、私が仏の演技を辞めてしまえば、この男はここで終わっちまうのだ。
「どうせ貴方も私の事、嫌いなんでしょ」
またいつもの被害妄想が始まった。どうしてこいつの勝手な思い込みで、僕が加害者にならなければいけないのか常に疑問だった。
「ごめんなさい。彼女の骨だけは、見れそうにありません」
姉の婚約者は、その言葉を最後に我々の前に二度と姿を現すことはなかった。
「ねえ、あんたこのまま死んで頂戴よ。そしたらもう帰らなくていいでしょ?」
この嫉妬深い女は、時々くだらぬことを呟き、私の腹の上で泣くのです。