レーナ -2-
「あっちゃんのいじわる」
一緒にでかける約束をした友達とケンカしてしまったレーナは一人でとぼとぼ歩いていた。
ケンカした理由は些細な意見の食い違いだったが、この年頃の子どもはそれすらも許せないとケンカに発展してしまい、その結果その場でお互い別れてしまった。
レーナも引くに引けずにここまで来てしまったのだが、家に帰る事もできずにただ時間が過ぎるに任せている。
「よし!明日あやまりに行こう!」
ものすごくいい事を思いついたレーナの心は途端に軽くなった。
さっそく家に帰ってお詫びのクッキーを焼いてそれをあっちゃんの家に持って行き今日の事を謝罪するのだ。
そこで快く許してくれたあっちゃんは家へ招き入れてくれ、レーナのクッキーを食べながらいつものようにおしゃべりに華を咲かせるのだ。
そうと決まればこうしてはいられない。
早く家に帰らねばと家の方向へ足を向けた。
蒼い瞳と目が合った。
爬虫類めいた蒼い瞳と。
え、と再びその目を見た時には蜂蜜色の瞳だった。
「見間違いだよね」
そう呟くもその瞳から目を逸らす事ができない。
「こんにちわ」
向こうから声をかけてきた。
「こんにちわ。私はレーナ、あなたは?」
「僕の名前はカイル。レーナ、いい名前だね」
蜂蜜色の瞳と黄金の髪が太陽の光できらめいていてレーナが大好きな物語の王子様みたいですごくドキドキしている。
頬が赤くなっている事を自覚しているがどうしていいのか分からない。
銀の目を見開いて見つめてくる姿にクスっと笑ったカイルは、
「僕はこれからこの辺りをいろいろ見て回る予定なんだけど、レーナもよかったら一緒にどうかな?」
レーナの王子様がキラキラした笑顔でそう声をかけてくるではないか。
このチャンスを逃してはならないと瞬時に悟ったレーナは
「これからクッキーの材料を買う予定だったの!よかったら一緒に材料を見てほしいな」
レーナは初めての上目使いで王子様を見上げる。
そんな事に気づいたのか気づいていないのかカイルは
「いいよ、じゃぁいろいろ見て回ろうね。今日はたくさんの露店が出ているからきっとレーナが気に入る材料が見つかるはずだよ」
手を差し出してくるカイルの手のひらを見開いた目で見つめたレーナはおそるおそる手を握り共に露店を巡っていく。
「あー楽しかったぁ!」
レーナが抱える紙袋の中には、クッキーにトッピングする材料やラッピングする包装紙など色とりどりでキラキラしている。
すごく楽しいし嬉しい。
隣にはキラキラした王子様がいる。
塔に閉じ込められたレーナをカイル王子が悪者をバッタバッタとなぎ倒しながら助けに来てくれるのだ。
バァーンと扉を開け
「レーナ姫!助けに参りました。さぁ、私とここから逃げるのです!!」
この前読んだ物語のヒロインを自分に置き換え妄想に耽る。
カイルを置いて。
「レーナ?」
1人ニヤけているレーナに声をかける。
ハッとして顔を上げるレーナ。
恥ずかしさのあまり顔か赤くなる。
しどろもどろになりながら
「今日はこれからあっちゃんに上げるクッキーを焼かないといけないから、もう家に帰らないといけないの。それでね、あのね、んとね、、、」
恥ずかしさからその先が上手く話せない。
「あさってにまたこの辺に来る予定なんだ。よかったらまたデートしたいな」
王子様スマイルでニッコリ笑顔のカイル。
で、でーと、、、
レーナの心臓は破裂寸前までドキドキしている。
ブンブンと音が聞こえそうなくらいに首を上下に振りながら、約束よ。またあさって一緒に出かけるのよ。
と、何度も念押ししながら、何度も振り返りながら家に帰っていく。
「かわいいなあ、サフィアレーナか。あさってか、また抜け出せるかなあ。
あっちゃんって誰だろ?」
こちらも若干締まりのない顔を浮かべながら帰って行く。
ノってるのかサクサク次話投稿です。(ずっと勢いが続くといいなぁ)
今回はスマホでチマチマ文字を打っていたので、後ほどこっそり表現を修正するかもしれません。