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サフィア -1-

サブタイトルだけ修正しました。

黄金の髪と小麦色の肌の少女を見つけ今日も笑顔でサフィアに挨拶をする

いつもドキドキしながら、それでも素直になれないサフィアは素っ気なく挨拶を返す

「また今日も来たのね、毎日毎日飽きないのね」

「そうだね、でも私は君の笑顔が見られるだけでいいんだよ」

また更に跳ね上がる鼓動

それを目の前の相手に悟られないように、と背を向ける

赤く染まった耳を隠す事を忘れて

「さあ、今日はお祭りだ。思いっきり楽しもう」

サフィアが今まで見たこともないような露店や見世物屋が立ち並ぶ

いつになくはしゃぐサフィア、それを眩しそうに見つめるカイル

時間はあっという間に過ぎ去る

サフィア、そろそろ帰る時間だよ

あまり遅くなればご両親も心配するだろうからね

カイルはそう言い、馬を引きながらサフィアに手を差し伸べる

その手を取ろうとした時

「明日は月に一度の、、、があるから、これないからね。」

楽しかった気持ちも一気に沈む

明日は聖女とこの国の第一王子であるカイルが2人一緒に国民の前で聖女の祝福を授ける日だった

聖女の相手役は誰でも構わないのだが、いつの頃からか、王子の結婚相手は聖女であると王子の両親である国王夫妻と国民全体か思っているため自然と決まった事であった

「そう、、、」

サフィアは差し出した手を戻しスカートの影で握る

「どうしたんだい?

明後日にはまたくるから。

それとも1日会えないと寂しいのかな?」

いつもなら憎まれ口をたたくところだが、今日はそんな気になれない

お祭りの開放感がサフィアを思いの外素直にさせていたようだ

思わずカイルの方を見上げる目に涙を溜めて

サフィア、、、思わずカイルの手がサフィアの頤に触れる

そのまま自然に2人の影が重なる


「さぁ帰ろうか」


なぜ相手がいる貴い身分の方がこんなただの村娘に毎日のように会いに来て一緒にお祭りまで参加してこんな、く、口づけまで・・・・

聞く事も答えを得る事もできずにカイルに手を重ねて俯きがちに歩く



でもあなたには貴い方がいらっしゃる。私なんて足元にも及ばないあの方が



私を見て

私の声を聞いて

彼女を見ないで

彼女じゃなくて私を見て!

しかし、いつも心の中で叫ぶだけで口にする事はできない



あの方は癒しの力を持つ聖女と誉れ高い高貴な女性

銀の髪と象牙色の肌を持つ聖女

いつも何者からも守るようににこやかに寄り添う彼

その彼はこの国の第一王子である

近々父親である現国王が存命退位をすると専らの噂であった

・・・国王が退位した後に即位するのは・・・




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・



今日は満月

月の光が聖女の力の源だと言われている

満月の光を浴びて、自らの身に溜まった澱を浄化していく

そうしてまた民衆の癒しとなるのだ



普段は王宮から少し離れた聖女の離宮で過ごす彼女は満月の夜だけは王宮へ姿を現す

そして未来の夫と噂される彼と一晩過ごすのだ



サフィアはその事を知っており、そんな日に彼に会うのは自分の心が耐えられるはずはないのだが、

カイルに呼ばれ、しぶしぶながらも王宮へ向かった。会える喜びも同時に感じながら



いつも通りにカイルが迎えに来るまで客間へ通されるのだが、今日だけは何かに導かれるように客間から抜け出て、中庭を越え、池のある東屋へ向かう

東屋が見えて来たと同時に何かが淡く光っている

「あれは・・・」



自身の腕で自らの身体を抱きしめ佇む聖女がいた

「聖女さま・・・」

小さな声で呟き、聖女まで声が届く距離ではなかったが、聖女はサフィアがそこにいると知っていたかのようにサフィアを見る

そして至上の喜びに出会ったかのような笑みを浮かべる



「やっと私を貴女に返す事ができるわ」

そうすれば、貴女が今まで苦しんで来た理由も分かる筈、と目に哀しみをたたえながら呟く


「私は貴女でもあるけれど、私は私でもあるのよ

本当はもっと早く貴女へ私を返す筈だったのに、ここまで延びてしまった

その分私の気持ちも大きくなってしまった

お願い、私もここに居た事を貴女だけは忘れないで

いいえ、それは私のワガママね」


聖女はサフィアに語りかけているような口調であったが、同時に自分へも何か言い聞かせているようだった


自分を抱きしめていた両手をサフィアの頬へ添える

聖女の手のひらから月の銀光が溢れ出す

それは夜の暗闇を昼間のように照らし出すほどの明るさだったが、不思議とサフィアは眩しさを感じない

サフィアの頬に華と蔓の模様が浮かびあがった。その蔓は銀光と共に全身へ伸びていく

最後に胸の真ん中へ蔓の先端が到達すると大輪の銀の華が咲く

咲いたと同時に全身の銀光と華と蔓が消えた

そして聖女の記憶と力が流れ込んでくる



サフィアは村娘であった母親とその幼馴染として育った父親との間に生まれたただの女児だった、はずである

神のいたずらか精霊の戯れか、強大な力を持ってこの世に生を受けた

このままでは自身の力に押しつぶされ、その力は収まる器を失い世の中に放たれ、破壊をもたらすと思われた

その危うい存在を知った旅の魔術師はサフィアから別人格を生み出した

ただの力の器としての別人格を

最初は物言わぬ人形のようなモノだったが、内に秘める力のせいか少しずつ人格を形成していった

旅の魔術師は別人格として生まれた器にサフィアレーナと名付けた

そうしてそのまま自らの娘として育てる事とした

もともと厭世的だった魔術師は深い森の中で生活をしていたが、娘の教育のためには外へ出て様々な人に出会う必要があると感じ、王都で生活を送る事とした

そこで王宮を抜け出したカイルとサフィアレーナが出会う

サフィアと出会う前、少しだけ早く

磁石のように引き寄せられた二人は自然と距離を縮めていく

まるでそこにお互いがいるのが当たり前のように





おはよう、私のサフィア

おはよう、カイル


いつもと変わらない朝

いつもと変わらない挨拶

今日はいつもと違って素直に挨拶を返せる

否、いつも以上に心が躍る自分がいる

胸の奥底で眠る聖女の心の欠片がそうさせている事を知った

思わずいつも通りに素っ気ない返事を返しそうになるも、聖女の気持ちを消すまいと今自分に湧き上がった気持ちを受け止める事にした。


あの満月の夜、聖女と同化したサフィアは全てを知った

いつも聖女に寄り添うカイルは私の面影と寄り添っていた

聖女は私だったのだ

否、聖女の力と同化した私は女神の娘となった

癒しと破壊という相反する類い稀な能力を有する者へとなった

幼い頃からお腹の奥底に違和感があった

その違和感は外に出せば私はきっとすっきりするだろうけど、それは出してはいけないと心のどこかで常に警告が発せられていた

そんな中、自身の成長と共に聖女の力を有する自分との同化を果たした事によって本来の力を取り戻した

取り戻したと同時に私の容姿にも変化が起こった

銀の髪に小麦色の肌

破壊の力を使おうとすれば髪は金へ変わる



時々カイルに本音を聞きたくなる

私と彼女、どちらが好きだった。と



時折夢を見る

私でない融合する事のない聖女とこの国の王となったカイルとが手を取りながら、豪奢な真っ白な花嫁衣裳に身を包み

寄り添いながら露台から民衆へと手を振るのだ。

その時の私はどこにいるのか無意識のうちに意識しないようにしながら2人を見つめているのだ

私はどっち?

聖女?

それともただの村娘?

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