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False War  作者: IOTA
33/43

False War 10-3




「マジか。SSシャープシューターだってよ。本当に出たのか」

 鎧からの連絡受信手段を持っていて、尚且つ、作戦会議に参加したクランに属するプレイヤー達は皆が似たような驚きの言葉を漏らした。

 つい数分前に戦闘車輛群の脇を通過して行ったFEFが、異常な射撃精度を持つNPC、シャープシューターに遭遇し交戦、結果、壊滅的な被害を受けた、という連絡が鎧から各分隊のラジオマンへ、ラジオマンから各員へと伝えられていた。

 作戦会議に参加したクランはウィスキーから事前に情報を得ていたので驚き程度で済むが、作戦会議に呼ばれなかったプレイヤー達にしてみれば、それどころでは済まない。シャープシューターとは何ぞや、なぜそのような敵が出てくるのか、という話である。作戦会議の場でウィスキーに浴びせられた質問の嵐が、今度は通信上にて鎧に殺到していた。通信網の混乱である。

 しかし、そんな事態は勿論予測、と言うよりも確信していたウィスキーの答えは、たった一言だった。

『詳細は不明』

 それも作戦会議と同じである。しかし、新たに一言付け加えられた。

『だが、実現し、これからそれと戦う事になる。十分に警戒されたし、そして存分に撃滅せよ』

 確かに、そのような敵と今まさに銃火を交えようという時に、些事を問うている場合ではない。それでもしばらくは一方的な問い掛けは続いたが、ほどなくして通信網は平常に戻った。この場に居る皆は、例外なく強者なのだ。ルールを心得ているとは言い難いが、戦闘時に何に重きを置くべきかだけは心得ていた。


 

 現在、北への前進を続ける盾の先頭はビークルカンパニーの繰る戦闘車輛群であり、その最前を往くのは、Vを逆にしたような楔型ウェッジフォーメーションを組む八輛の90式戦車だった。

 全長は約十メートル、重量は五十トンを超え、排気量は二万千五百シーシーを誇る鋼鉄の塊。ライフリングをあえて排する事により様々な種類の砲弾に対応した120ミリ滑腔かっくう砲。鋼鉄製の装甲板の間に異なる物質を挟む事で防護性能を高める複合装甲。複合装甲の導入により角張った平面的な形状が特徴的な第三世代戦車である。

 近付けば地震と勘違いしてしまうほどの走行音。穏やかだった草原を蹂躙し、無粋なキャタピラ痕を刻み付けながら、八輛は互いに五十メートルほどの間隔を置いて、楔型隊列を崩さずに直進する。

 本来であれば車長、操縦手、砲手の三名により繰られる車体だが、今回は多数出現した車輛を無駄にしないよう、一輛につき操縦手と砲手の二名しか乗っていない。もっとも、今回に限らずとも車長を担うプレイヤーが搭乗する機会はほとんどない。酷い時にはたった一人で搭乗し、操縦手と砲手を兼任する、つまり操縦席と砲手席を行き来する始末だ。自分の操作で敵を殺傷する事に悦びを感じる生粋のFPSプレイヤーは、車長という役割に食指を動かす者が少ないのだ。

 八輛は例の大きな尾根に近付くと、速度を落とした。尾根の頂上付近に停車していた二輛のハンヴィーは、進路を譲るように尾根の麓に移動しており、その裏ではビークルカンパニーのドライバー二人とFEFの生き残り三人が、じっと90式戦車隊を見詰めていた。その視線は期待と恐怖と不安が入り混じったような、なんとも言い難いものだった。

 尾根の頂上には地面が内部から破裂したような土色の爆発痕が幾つか、そして複数の死体があった。まともな形を保っている死体は一つもない。如何に一方的な戦いで、如何に異常な敵かが窺い知れる。

 しかし、90式戦車隊は怯む気配すら見せず、猛然と尾根を上り始めた。ここに至って躊躇う理由は皆無。

 その様子を後方から見ているのであろう、ビークルカンパニーの隊長から連絡が入る。

『みんな、さっき鎧から激励があったと思うけど。俺からも繰り返す。敵を排撃しろ。己の躰と化した殺人兵器で、チーターもどきを粉微塵にしてやれ』

 戦車隊は尾根の頂上に達すると、三叉に分かれた。中央を走行していた四輛はそのまま頂上で停まり、右左の両翼から二輛ずつ東と西へ、草叢に対して平行線を描くように尾根の頂上から少し下った所を走行し続ける。まるで曲芸走行のような一糸乱れぬ操縦である。

 停車した四輛が奇妙な動きを始めた。車体の後側が持ち上がり、前側が低くなっていく。転輪に搭載された懸架装置により、車体を前に傾斜させたのだ。それにより尾根の頂上からでも眼下の草叢に対して、より有効な射角を確保できる。東西へ展開した四輛も中央からかなり離れた位置で停車し、砲塔を回し、草叢へ砲身を向けていた。90式戦車という名の一つの生き物であるかのように、操縦手と砲手の息もぴったりと合致している。

 戦車隊の誰かが言った。

「よっしゃ、みなごろしだ」 

 120ミリのあぎとから、周囲が染まるほどの閃光の塊が迸り、衝撃波により土煙が舞う。比喩や誇張なしに、文字通り大地を揺るがす咆哮が轟く。

 薄の草叢のそこここで、直径二十メートル、高さ三十メートルもあろうかという黒褐色の間欠泉が噴き上がり、その中心部では橙色の火花が弾け散っている。爆心地からほど遠い草叢ですら、その衝撃波により薄の種子が埃を吹いたように舞い、葉は千切れ飛び、まるで台風に晒されたかのように激しく波打つ。

 使用されている砲弾は多目的対戦車榴弾(HEAT-MP)。対戦車形成炸薬弾と対人榴弾の二つの特性を併せ持った砲弾であり、標的を選ばずオールラウンドに使用できる。しかしそれ故、専用弾と比べたらどちらに対しても効果は劣るが、草叢に潜む敵を屠る分には余りある威力だ。

 自動装填装置を備えているとは言え、120ミリ砲の連射速度には限度がある。精々毎分一五発前後だ。それでも八輛が交互に射撃を行い、更に主砲の同軸に組み込まれた74式7.62ミリ機関銃を発砲し続けているので、草叢に平穏の時はない。

 銃火から逃れようと数十体のNPCが手前の草叢から這い出てきたが、付近に着弾した120ミリ多目的対戦車榴弾の破片を受け、まるで先まで自分達が放っていた同時同点の銃撃を全身漏れなく浴びたように、バラバラになった。運よく破片を逃れた者も、次の瞬間には機関銃の餌食と化す。

「ヘイ、キューマル共。俺らも混ぜろや!」

 戦車隊から距離を置いて前進していた十輛のプーマ装甲歩兵戦闘車も尾根の頂上に到達し、90式戦車の横に並び砲火に加わる。ちなみに、十輛の内の四輛はビークルカンパニーではなく、乗り物争奪戦に勝利したソロプレイヤーが操縦している。

 プーマ装甲歩兵戦闘車は、無限軌道キャタピラ転輪を持つ全長約七メートルの車体の上に小さな砲塔が載っている外見が特徴的な最新式歩兵戦闘車だ。

 歩兵戦闘車(IFV)は兵員輸送車(APC)と同一視される事がままあるが、目的とするところはまるで違う。歩兵戦闘車は、積極的な戦闘参加を前提としている。分類的には戦車と同一視するべき、戦うために設計された装甲戦闘車輛なのである。

 リズミカルな発砲音を伴って毎分二百発の速度で弾き出される30ミリ空中破裂エアバースト弾は、予め設定しておいた距離、手前の草叢の中空で炸裂し、破片を直下にばら撒く。潜んでいたNPC達は頭上から強烈な弾片を浴びる格好となる。

 最早草叢は、理不尽な敵が潜む魔窟から、処刑場、否、精肉工場のような態と化していた。

『おいおい、お楽しみのところ悪いが、こいつらの分も少しは残しといてやってくれよな』

 そんな通信と共に、尾根の裏にはハンヴィーやストライカー装甲車等の兵員輸送車輛が続々と到着し、プレイヤー達を吐き出していた。三十キロ全面とはいかないまでも、輸送車輛は東西に広く展開しており、降り立ったプレイヤー達は分隊ごとに、分隊に属さなかった者も少数で纏まりながら、上空から見たら一本の点線のようになって尾根を登り始めた。

 プーマ歩兵戦闘車群はその姿を認めると、徒歩プレイヤーと速度を合わせ低速で前進を再開した。


 

 尾根の麓にはプレイヤー達を運んで来た多様の輸送車輛がエンジンを切らずに停まっていた。牧歌的な草原の只中に、無骨な軍用車輛群が無造作に乱在する様は、見本市のようでもあり、なんともアンバランスで不可思議な光景だ。

 尾根を上り切ると、不可思議な光景が見慣れた描写へと変化する。

「いやはや、こりゃまたよろしくやってるね」

 そんなジャミの言葉に、カンカラスは心内で同意した。

 盾の最後尾に居たカンカラス一同は前線であったはずの尾根の頂上に到着したのだが、もうそこに前線はなかった。草叢には仄かな黒煙を燻らせるクレーターのような120ミリ砲弾の着弾孔が点在する他に、幾筋ものわだちが出来ていた。プーマ歩兵戦闘車の走行時に倒れ、踏み均されたのであろう轍は北へと伸びている。前線は北へ、草叢の奥深くへと進んでいた。

 真横で90式戦車の咆哮が轟き、ジャミが首を竦めた。遠方の草叢で砲弾の爆裂が噴き上がり、その手前をプーマ歩兵戦闘車群とそれに随伴するプレイヤー達が前進を続けている。散発的な銃声と爆音があちこちで響く。尾根の頂上に留まる90式戦車の砲撃で前線を牽制し、プーマと歩兵でマップの東西から一線を引いたような面となるように広い間隔を空けて展開し、じりじりと少しずつ掌握していく、という進行スタイルを採っているのだ。

 カンカラス達も尾根を下り、草叢を前進する。腰の丈ほどある、場所によっては背丈よりも高い薄の草叢を分け入っていくので、足元の視界はほぼゼロに近い。それでもあちこちで転がるNPCの無残な死体だけは嫌でも目に付いてしまう。

「まるでベトナム戦争だよ。いや、勿論行った事はないけど」

 ジャミは一人漫才のように嘯く。確かに鬱蒼とした草叢と咽返るような死の臭いはベトナムを連想させた。しかし、そんな印象とは別にカンカラスはまたもある違和感を抱いていた。

「なあおい、敵はシャープシューターとか言ったよな?」

「え?」ジャミは意外そうに振り向いた。カンカラスが明確に声を掛けてきたのが初めてだからだろう。「そうです。そんな名前でしたね。鎧サマ曰く、詳細は不明らしいですけど」

 皮肉っぽく言うジャミ。カンカラスはその心情にも同意する。いきなりそんな馬鹿げた敵の存在を知らされて、特に説明もなしでは面白いわけがない。だがそれは今気に掛けるべき事柄ではない。

「異常な射撃精度を持っているんだよな。FEFが随分減らされたみたいだが」

「確かにそんな事言ってました。でもこの分じゃ大した事ないみたいですけど」

 果たして本当にそうだろうか、とカンカラスは思う。FEFはカンカラスも知っている。バトルで遭遇した時は辛酸を舐めさせられた。何度か勧誘された事もある。決して大した事のない敵に負かされるような連中ではない。しかし、現状だけ見ると確かにそれほど敵に脅威を感じないのも事実。現在進行形で前線を伸ばしている盾の最前にも、それほどの被害は出ていないようだ。FEFを一瞬で負かす敵と真正面からぶつかり合えば、そうはなるまい。戦車の砲撃支援があるにしても、楽勝というわけにはいくまい。

 ではどういうわけか、おそらく敵は後退している。前線の連中はぶつかり合っているのではなく、後退する敵を追撃しているのだ。

 開始直後、前進という道理に適い有利にも繋がるはずの基本的な策、それを捨ててまで展開したはずの草叢の防衛線、敵はそれすら比較的あっさり手放している。カンカラスにはそう思えてならない。自分達が押しているのだ、とこちらに錯覚させるように、敵は少しずつ巧みに引いている。単に後退しているのではなく、誘い込んでいるのかもしれない、と。

「罠か……?」

 それでも疑問符は拭えない。90式戦車とプーマ歩兵戦闘車、それに屈強なプレイヤー達、それらの一斉攻撃を受けたら後退も無理からぬ事なのかもしれないからだ。罠だと断じるには判断材料が欠けていた。

「あれは?」不意に先頭を歩くジャミが声を上げる。「誰か戻ってくるよ」

 ジャミが示す方向をカンカラスは注視する。三人のプレイヤーがカンカラス達の方、つまり南へと引き返してきていた。皆が北へと歩を向けている中、その三人の逆走は目立つ。

 カンカラスはジャミの制止を無視して分隊から離れ、三人に向かって駆け出した。彼らに見覚えがあったのだ。その三人こそ、FEFの生き残りだった。先陣に重きを置いているFEFが後退するなど、普通では考えられない。

 マップの広さと邪魔な薄の葉に悪態を吐きつつしばらく走り続け、草叢の南側出口付近でようやく三人に追い縋り、声を掛ける。

「あんた達、FEFだろ。なんで戻るんだ」

 FEFクラン員達は怪訝そうに足を止めた。

「そうだけど。なんでって、戻った方が良さそうだからだよ」

「罠だと思うか?」

「へえ」FEFクラン員の一人が感心したように顎を上げる。「俺ら以外にも気付いてる奴がいるんだ。意外だな。前線の連中ときたら、盲目的に突進してるけど、あの異常な敵を知ってる俺らからしたら、どう考えてもおかしいよ」

 そこで別のFEFクラン員が鼻で笑う。

「よく言うぜ。俺が途中で気付いたから戻ってきたんだろ。敵討ちだの何だのと騒いで、盲目的に突進したのはお前だろ」

「あれ?」もう一人のFEFクラン員がカンカラスの顔をまじまじと見詰めた。「ああ、あんたカンカラスだろ! 道理で罠に気付くわけだ。流石流石。やっぱりあんたFEFに入れよ」

 カンカラスは苦笑する。

「勧誘してる場合か。それに、あんた達のスタイルは絶対に俺の性と合わな――――」

 言い終えようとしたところで、爆音に遮られた。

 北からの断続的な遠い爆音ではなく、後方からの衝撃波を感じるほど近い爆音。戦車の咆哮のような澄み渡る大音響ではない。金属が絡み合うような濁った破裂音。

 振り返ると、尾根の頂上、中央に在った90式戦車が一輛、奇妙な角度に砲塔が傾がり、黒煙を噴いていた。

 驚きの声を発する間もなく、カンカラス達から見て真東と真西の二箇所、掃討を終えたはずの手前の草叢から、勢いよく空気が抜けるような音と、薄の種子を散らして噴き上がる粉塵が連続し、尾根の東西に展開していた90式戦車隊で爆裂が起こる。東と西で一輛ずつ、巨大な鉄板が高所から墜落したような90式戦車の断末魔が響いた。

 瞬く間に、全八輛中三輛の90式戦車が破壊されてしまった。

「くそ……。やはり罠か」

 呟き、カンカラスは東に駆け出した。FEFクラン員達もそれに続く。途中で速度を落とし、草叢から上半身を露出させないように中腰で移動する。

 前方からの微かな物音に足を止め、背後のFEF達に静止のハンドシグナルを示した。薄の葉を一本一本、手で退かすように慎重に進むと、居た。 

 戦車砲が着弾した跡であろう土が露出したクレーターを中心に、ミステリーサークルのように薄が倒れ、拓けている空間。そこに八体のNPCが屈んでいた。

 全身が森林迷彩、頭部を被うフルフェイスバイザーにまで迷彩が施されている。一見すると滑稽に見えるが、全ての者が同じ容姿をしているので、気味が悪いという印象の方が勝る。

 六体のNPCは横一列に並び、携帯用対戦車砲を装填していた。84ミリのカールグスタフ無反動砲だ。先の物音の正体は装填音だったのだ。後端のラッパ状の筒をずらして、空になった薬莢を排出し、砲身に新たな砲弾を挿し込んでいる。その装填の挙動すらも嫌悪感を感じるほどに六体全てが同一。

「なるほど」カンカラスは小さく呟く。「シャープシューターか」

 おそらく、六体全員が極僅かな間隔を置いて同点を撃ったのだ。90式戦車の複合装甲は強固であり、84ミリの対戦車榴弾を一発喰らったぐらいでは、まず貫通しない。しかし、同点に数発撃ち込まれれば話は別だ。最初の一発が装甲を傷付け、二発目が剥がし、三発目が貫き、あとは止めの駄目押し、メタルジェットの超高圧により複合装甲に穿たれた侵徹口から、爆風と弾片が噴き込まれ、内部設備諸共操縦手と砲手を圧壊させた。あまりに発射間隔が短く、着弾音が一発分にしか聞こえないほどの連続だ。そんな規格外の対戦車攻撃を受けては、いかなる装甲も一溜(ひとた)まりもない。シャープシューターという大仰な符丁に見合った射撃技術。それ以上に驚嘆すべきは、従来のゲームでは隠した方が優とされるはずの、NPC(無生物)である事を強調するような理不尽なまでの正確無比な連携力。

 砲手列の両翼にはVSSヴィントレスを携えたNPCが二体、姿勢を低く控えている。護衛と警戒のためなのだろう。彼我の距離はほんの十メートルも離れていないが、背後から近付いたカンカラス達には気付いていない。

 前線の牽制に夢中になっていた戦車隊はパニックだろう。どこから撃たれたのかも定かではないはずだ。

 これ以上撃たせるか。カンカラスは右手に持ったMC51を敵に照準したまま、小さく頷いた。FEFクラン員達も無言で頷きを返し、二人が胸のポーチから手榴弾を取り出し、ピンを抜き、レバーを開放。一人はライフル銃身下部に装着したグレネードランチャーの照準器を起こした。二秒後、二人は手榴弾をアンダースローで弧を描くように投擲、砲手列の背後、ベストな効果を期待できる位置に落下し、砲手の一体が異常に気付き、足元の手榴弾を凝視した瞬間、破裂。それと同時、FEFクラン員の一人が発射した40ミリ榴弾が砲手列の左で炸裂した。

 粉塵が吹き荒れる中、カンカラスは引き金を落とした。MC51特有の凄まじい発射炎ブラストが迸り、右翼に居たNPCの背中に三発の短連射を叩き込む。殺害を目視ではなく、手応えで感じながら、即座に銃口を振り、こちらに銃を構えようとしていた左翼のNPCを照準に捉え、撃つ。7.62ミリ弾により粉々になったバイザーの破片と赤黒い塊が頭部から飛び出す。

 FEFクラン員達は各々の榴弾の炸裂を合図に駆け出し、爆心地周囲で倒れているNPCに銃撃を浴びせた。一見しただけで明らかに事切れているNPCにも、止めとばかりに銃弾を撃ち込む。

 片脚を失いながらも息があり、ホルスターから拳銃を抜き取ったNPCが一体。しかし近くのFEFクラン員が素早く見咎めた。

「手前コラ」NPCの手を拳銃ごと踏み付け、首元にライフルの銃口を押し当てて、残弾の全てを吐き出す。「死んでろよ、ボケッ!」

 刹那の静寂、皆が周囲を警戒する。

「……クリア」

「こっちもクリア、オールクリアだ」

 返り血に染まったFEFクラン員が空になった弾倉を投げ棄てながら言う。

「こいつら、射撃精度だけはずば抜けてるが、他の練度は中級レベルのNPCと一緒ぐらいだな」

 別のFEFクラン員が応じる。

「だな。照準エイムの速度も大した事ない。こっちが先に発見できればいくらでも勝機はある。撃たれる前に撃てってこった。見敵必殺、いや、見敵即殺だな」

 もう一人のFEFクラン員が空かさず口を挟む。

「毎回こんなに上手くいけば苦労はないだろうよ。先に撃たれたら即死ってだけで、十分過ぎるほど脅威だ」

 まったくこの連中は。カンカラスは嘆息する。腕は一流なのに、お喋りが玉に瑕だ。

「ご歓談中悪いが、早く動かないと――――」

 またもやカンカラスが言い終わる前に、微かな射出音とそれに続く破壊音。尾根の西に居た90式戦車が爆煙を吹き、円盤状の砲塔上面ハッチが千切れ飛び、天高く舞い上がっているのが見えた。これで西に展開していた90式戦車隊は全滅してしまった。残りの90式戦車は四輛。最初の半数でしかない。

 いや、それも時間の問題だ。それどころか、最早数は意味がなく、戦車ばかりを気に掛けている場合ではない。

「……くそ」

 カンカラスはいつの間にか豹変している戦場の雰囲気を察知し、目を細めて、北に視線を送った。

 草薮や地形の起伏の所為で目視は叶わないが、それでも判る。北の前線の喧騒が先とは明らかに違っていた。断続的だった銃声と爆音は、ほぼ絶える事なく連続し、点々と立ち昇る黒煙はプーマ歩兵戦闘車の撃破を意味しているのではないか。

 危惧していた通り、敗走する振りをしていた敵が、一斉に牙を剥いたのではないか。

「!」

 見ている間にも、背後で轟声。尾根の中央に在った90式戦車が二輛、砲塔が後部から破裂するように破壊されいていた。その破壊痕は、戦車が背後から攻撃されている事を意味する。つまり尾根の南からの攻撃。

「後ろからも!? どういう事だよ!」

「お前らも言ってただろうが」カンカラスは鼻で嘆息する。「罠だよ。挟撃だ。挟まれたんだ」 

 おそらく、敵は最初からこのつもりで草叢の最東西に潜んでいたのだ。そして敗走の振りをする敵の追撃に夢中になっている盾の最前部隊が通り過ぎた後、一部は草叢から接近し、戦車隊を襲い。残りは尾根の裏へ移動してから、戦車を弱点である背後から叩いた。

 残りの二輛の90式戦車が、尾根の頂上で車体を百八十度旋回させ、南へ砲口を向けた。120ミリ砲が火を噴き、74式機関銃で掃射を行うが、主砲が二発目を撃つ前には後退、草叢に向けて尾根を下って来た。そのすぐ頭上を幾つもの黒い物体、カールグスタフから放たれたであろう84ミリ対戦車榴弾が、砲塔を掠めるように高速で通り抜けていく。

 90式戦車の操縦手達は、無理だと判断したのだ。尾根の裏からバックアタックを仕掛けてきた敵は、二輛の火力で殲滅できる軍勢ではなかった。つまり、それほど大量という事だ。

 その大量の敵が、今度は尾根の頂上に陣取って、草叢に展開しているプイレヤー達を攻撃するだろう。北からも怒涛のように圧し込んで来るに違いない。戦闘車輛の火力というアドバンテージは、敵と面で対峙していた故の物だ。面と面でぶつかり合えば、火力の強い方が勝る。しかし、背後からも攻撃を受けるとなれば、即応力に欠けた鈍重な戦闘車輛では対応し切れず、立場が逆転してしまう。完璧な挟み撃ち。プレイヤー達は頭から罠に突っ込んでしまったのだ。

 しかし、最悪なのは盾が罠に嵌った事ではない。

「おい」カンカラスはFEFクラン員達に声を掛ける。「誰かラジオマンは居るか?」

「え? ああ、一応俺がそうだけど」

「鎧に現状を伝えろ」

 そっか、とラジオマンである事を今思い返した風のFEFクラン員はすぐに報告する。

「鎧、こちらFEFスクアッド3。盾は草叢にて敵に挟まれた。横軸4の尾根で背面攻撃を受け、戦車隊が壊滅状態。北の前線でも敵の反撃に遭い、圧されている模様。状況、極めて不利。繰り返す。状況、極めて不利」

 そこで言葉を終えるFEFクラン員に、カンカラスは怒気を隠そうともせずに露骨に舌を打った。

「おいッ! それだけじゃないだろうが。俺達の背後には大量の敵が居るんだぞ」

「なんだよ、怒鳴るなよ。そう伝えたじゃないか」

「いいか、よく考えろ。プレイヤーの大半が属している主力の盾はこの草叢でヒーヒー言ってる。盾の背後には何がある? 基地だろうが。もっと言うなら旗があるんだよ。俺達にとって最悪なのは、ケツにいる大量の敵が基地にまで進行して、そいつらに旗を奪われる可能性だ」

「ッ!? ああぁぁ、なんてこった! そういう事か! まずい。マジまずい!」

 FEFクラン員は見えるわけがない自軍の旗を仰ぐように振り向いて、再び鎧に通信を飛ばす。

「鎧! 聞け! 敵が旗に向かう可能性がある! 繰り返す。敵がそちらに向かうぞ!」

 数秒間の沈黙の後、鎧からの通信が返ってきたが、それはFEFのラジオマンだけに対する返信ではなく、盾に属する全てのラジオマンへの、つまり盾に属する全てのプレイヤーへの返信だった。

 FEFのラジオマンは聞いた言葉をほぼそのまま口にする。

「鎧からの盾へ。横軸4の尾根にて敵が背面攻撃を仕掛けてきた。旗の防衛は任せろ。盾は草叢にて全周防御、敵にこれ以上の進行を許さぬよう、北面の防御を特に徹底しろ。そして可能ならば状況を打開せよ―――だってよ。なんだくそっ、鎧の連中、嫌に落ち着いてやがる。取り乱した俺が馬鹿みたいじゃないか」

 旗の防衛は任せろだと? カンカラスは訝しむ。しかもFEFのラジオマン曰く、その声色はひどく落ち着いていると言う。何かしらの防御策が用意されているという事か。主戦力の盾が草叢で身動きが取れないというのに、一体どんな防御策があるというのだ。

 不意に、パコンと、木が割れるような軽い音を立てて、

「あ、あぅ。……マジか」

 FEFラジオマンの胸部に大きな風穴が空いた。ラジオマンは膝を折って座り込み、そのまま絶命。

「!」

 カンカラスと残り二名のFEFクラン員は即座に伏せて、先まで戦車が在った南の尾根の頂上に照準を合わせる。おそらく、頭部と銃口だけを覗かせているのであろう小さな影が稜線に複数。

「シャープシュータアァー!」

 怒声を皮切りに単発で銃弾を送り、確実に敵の頭を貫く。最初にFEFがシャープシューターと尾根で交戦した時と、ほぼ同じ構図だ。唯一違うのは立場が逆転している事。

 撃たれたら即死故に撃たせるわけにはいかず、そのためには撃ち殺し続けるしかない。連続する紙一重の綱渡り。しかし、仕留めたところからすぐに新たな敵が現れ、違う場所からもどんどん湧いてくる。その数は秒増しに増え続け、十や二十ではきかない。まるでモグラ叩きだ。

 ガチンと、カンカラスは引き金を引いた人差し指に撃針が空を穿つ金属音を感じ、ひやりと、首筋に寒気を覚えた。数え切れないほどの死線を経験した上級プレイヤーのみが感じるようになる自身の死の刹那前。敵の銃口から伸びる無数の射線が自分と重なってしまった気配。

 駄目だ、死んだ。カンカラスは装填しようとはせず、覚悟した。

 しかし、突然尾根の頂上付近が爆ぜ、巨大な黒煙が噴き上がる。爆発により凹ができ、形が変わった稜線の向こうでは、数体のNPCの破片が宙に散っている。

 カンカラスは弾かれたように右を見る。90式戦車だ。カンカラス達から見て右方二十メートル、先ほど草叢に退却していた一輛の90式戦車が120ミリ砲口から白煙を燻らせていた。

「ねえ! あなた達、“私”の裏に隠れて!」

 拡声器により大きくなった90式戦車操縦手の声が響く。

 操縦する戦車を指して“私”とは、いかにもビークルカンパニーらしい。カンカラスは立ち上がり、戦車に向かって駆けながら笑った。馬鹿にしたわけではなく、なんとも頼もしく聞こえたからだ。

 90式戦車の裏に到着すると、カンカラスとFEFクラン員達は各々のライフルを装填しながら、車体をバシバシ叩いた。車内の操縦手に到着を知らせるためでり、感謝の表れでもある。

「私の上に乗って、砲塔に隠れるようにして! この子の視界じゃあ周囲の警戒は無理だから、誰か私とチームスピークを設定して、私の目になって! 私の名前はレッドハンドルよ。ちなみに砲手はレム。よろしくだって」

 車内からの声は拡声器越しで周囲に聞こえるが、車外でいくら叫ぼうとも、車内に声は届かない。チームスピークは賢明な判断だ。カンカラスは車体によじ登り、設定画面を開いてレッドハンドルの名を探しに掛かった。

「あと、この子じゃあ精密射撃も難しい。対戦車猟兵を優先的に始末してちょうだい。頼んだわよ!」

 砲塔に身体を預けるように屈んでいたFEFクラン員達は、120ミリ砲の発射直後、痺れる身体と空間が歪むような感覚に苛まれながらも、着弾により敵に生じた隙を逃すまいと顔を出し、銃口を尾根の稜線に向ける。

「任せろお! ビッグシスター!」

 叫びながら、明らかにVSSヴィントレスではない巨大な火砲を携える敵影に向けて射撃を始めた。

 設定を終えたカンカラスも射撃に加わりつつ、レッドハンドルに伝える。

「西に移動してくれ! 西の尾根に陣取ってたあんたのお仲間を撃破した奴らが、まだ草叢に潜んでるはずだ。ほっといたら前線の連中が後ろから喰われる」

「諒解。車体を時計回りに旋回するわよ! 砲塔に後ろにくっついといて。落とされても、拾ってあげる余裕はないから!」

 そう、余裕なんてない。皆無であり絶無だ。刹那後には尻の下の戦車が爆炎を伴って大破するかもしれないし、自分の頭部が消し飛んでいるかもしれない。旗は任せろ、と鎧は言った。ならば気に掛ける必要はない。今は挟撃を受けたという事態への対処で精一杯なのだ。

「尾根の十時方向! カールグスタフハチヨンの群れだ!」

 FEFクラン員の怒声。カンカラスは禍々しい長い筒を携えるNPCに照星を重ね、何度も何度も引き金を切った。



 隣の分隊員の腹部が裂けたのを目にし、ジャミは悲鳴を漏らしそうになった。

「大丈夫?」と思わず声を掛けてしまったが、すぐに後悔する。なんたる間抜けか。大丈夫なわけがないし、そんな悠長な台詞を吐いてる場合ではない。

 腹部に負傷した分隊員はジャミを一瞥したが何も応えず、ショルダーホルスターから拳銃を抜きながら立ち上がり、敵方に向けて片手保持で我武者羅に乱射した。四発目を撃つ前には腹部から幾筋もの血液を迸らせ、吹き飛ぶように足元に在った死体の上に倒れた。

 カンカラスと分かれた後(カンカラスが一方的に離れたのだが)、ジャミの分隊は前進を再開し、草叢の前線と合流した。最初こそ一方的な戦いで、運良く戦車砲の難を逃れ、散発的に現れる敵をプーマ歩兵戦闘車と随伴するプレイヤー達が倒しながら進む、単純な掃討戦だったのだが、数分後には状況が一変した。

 草叢の中央付近には小川が流れていた。

 川幅十メートルほどで、深さもくるぶしぐらいしかない小さな川だ。マップ画面で見ても、何倍にも拡大表示しなければ確認できないほど小規模な川だった。もっとも、何もない草原に突然背の高い薄が集中的に繁茂するのは不自然なので、考えてみれば当然かもしれない。小川を中心に薄が群生した、という設定なのだろう。

 プレイヤー達は誰が指し示したわけでもなく、自然と足並みが揃っていた。視界の悪い草叢という環境的条件と、ビークルカンパニーが繰る六輛のプーマ歩兵戦闘車の走行速度が統一されていた事がその理由として挙げられる。

 しかし、視界が拓け、小川が現れた事により、その殊勝な協調性は消えてしまった。ビークルカンパニーではなく、乗り物争奪戦に勝利したプレイヤーが繰る四輛のプーマ歩兵戦闘車と、五十名近いプレイヤー達が横一列となって我先にと突進したのだ。彼らが小川を渡り切り、対岸の草叢の中へと分け入った時、異変が起こった。突然の爆音と銃声、そして悲鳴と怒声。対岸の草叢の所々でプーマ歩兵戦闘車の破壊を意味する黒煙が立ち昇った。そして静寂。その静寂が意味するのは、対岸へ渡ったプレイヤー達の全滅に他ならない。ジャミの分隊を含めた後続部隊はその異常事態に驚愕しつつも冷静であり、殊勝だった。小川を渡ろうとはせずに数名の分隊ごとに等間隔で東西隙間なく北に対する防衛線を展開し、対岸に銃口を据えて、待ち伏せの構えを採った。ほどなくして対岸の薄が盛大にざわめき始め、ざわめきが徐々に小川に近付き、地獄が訪れた。

 NPCの波だ。

 対岸の草叢から、列を成した無数のNPCが津波のように突撃を敢行してきたのだ。

 絶叫と共に、プーマ歩兵戦闘車の30ミリ機関砲と同軸のMG4軽機関銃、プレイヤー達が持つ様々な火器が同時に火を噴いた。具体的な数を述べるならば、六輛のプーマ歩兵戦闘車と六百二十五名のプレイヤーが同時に各々の持つ最大の火力を発揮したのだ。最初の僅か十秒間に、実に八千発以上の銃弾が放たれた。

 この世の終わりのような大喧騒。対岸の薄は数株の例外を残して根元から折れ、綿毛の種子が雪のように大気を舞う。傾れ出てきたNPCの波は横殴りの弾雨に曝され、ピンクの霧と肉片に変わった。しかしそれでも波は止まることなく押し寄せ続けた。倒れた仲間を足蹴にしながら、怒涛の如く。

 敵を小川から出すまいと必死で撃ち続けるプレイヤー達に間では、絶叫と罵声以外ほとんど言葉が発されなかった。言葉を発する余裕もなかったのだ。

 波を形成するNPCは服装こそ先と変わらないが、手に持つ小火器はVSSヴィントレスではなく、H&K G36Kだった。標準的な5.56ミリ×45の弾薬を使用する、信頼性の高い突撃銃アサルトライフルだ。サプレッサーの類は装着されていないので、銃声も通常通りけたたましい。端から隠密は考えていないのだろう。

 NPC達はG36Kを腰だめで乱射したり、小川の中で屈んで射撃したり、対岸から撃ってきたりと、その射撃動作は様々だが、射撃精度はそれほど良くはなかった。装備と射撃精度から鑑みるに、シャープシューターでない事は明らかだった。おそらく彼らは突撃するための人海戦術要員なのだ。数で圧倒するための捨て駒なのだ。

 シャープシューターのような異常な敵ではないとは言え、それでもこちらを殺そうとしている事に変わりはなく、油断など出来るはずもない。いや、ある意味では彼らも異常と言えよう。どんなに仲間が殺されようとも、微塵も怯む事なく絶え間なく突撃を敢行する様は、十二分に異常だ。更に異常なのは、無言であるという事。通常のクエストのNPCは、決められたスクリプト内の設定ではあるが、人間に限りなく近い言語を発する。分隊長という設定であれば部下に指示もするし、部下は敬礼もする。場合によっては雑談や談笑さえ行う。突撃する際には絶叫したり怒声を上げたりするだろう。にも関わらず、今回のNPCは一言も、悲鳴や断末魔すら発さない。ただただ無言で、只管に死ににくる。狂気だ。

 プレイヤー達に与える心的ショックは、シャープシューターのそれよりも遥かに上だった。

 ジャミは伏撃ちでCIS ウルティマックス100軽機関銃の連射を迫り来る大群に浴びせ、空になったドラムマガジンを棄て、新たなマガジンを掴んだところで、隣の分隊員の呻き声を聞いた。

「ひぐぅっ、ひぐっ……ううぅぅ」

 見ると、その女性プレイヤーはライフルを構えてはいるものの、地面に顔を埋めるように俯いていた。

「大丈夫?」ジャミは再びそう問い掛けた。

 女性プレイヤーは頭を跳ね上げる。その顔は真っ青で、紫になった唇は震えていた。

「……ごめん。なんか、わたし、耐えられない。ちょっと、こんなのって……ごめん」

 そう言い残すと、その女性プレイヤーは動かなくなった。AFKだ。現実リアルでHMDを外したのである。戦闘中のAFKなど自殺行為であり、戦闘放棄に他ならない。忌諱すべきタブーだ。しかし、ジャミは彼女を責める気にはならなかった。

 狭い小川はNPCの死体で埋め尽くされ、所々にちょっとした小山を形成しつつある。その小山をもぞもぞと登るように、NPC達は攻めて来る。それをプレイヤー達が撃ち殺し、更に小山が高くなる。真っ赤に染まる水流は、死体の体積とそこから流れ出た血液により、水嵩みずかさが増しているほどだ。

「……まるでオマハ・ビーチだよ」

 ジャミは震える奥歯を噛み締め、手に持っていたままだった新しいマガジンを装填した。死体の小山の上から頭を覗かせ、仲間の死体を遮蔽物にして銃火を瞬かせる敵に、短連射を送る。 

「ゲームのジャンルが突然変わっちゃった感じ。夢に出てきそうだ」

 ジャミは撃ち続けながら、うわ言のように軽口を繰り返した。そうしないと、自分もHMDを外して、逃げ出してしまいたいという欲求に負けそうだったからだ。

「ジャミ! 二時の方向、敵!」

 ジャミの左後方に居た分隊員が叫んだ。弾幕を逃れたNPCが三体、川の中間付近を駆けて来ながら、銃を持ち上げ、こちらを照準に捉えようとしていた。

 叫んだ分隊員は伏せているジャミを跨ぐように飛び越え、モスバーグ M590ポンプアクションショットガンを撃つ。扇状に拡散したダブルオーバックショットの鉛球を受けたNPCが二体、水飛沫を上げながら死体の間に倒れ込む。分隊員はショットガンを構えたまま排莢するが、フォアグリップを前部に戻し次弾を装填する前には、残りの一体の銃撃を頭部に受け、糸が切れた操り人形のようにその場に膝から崩れ落ちた。

 ジャミは一部始終を見ている間、あんぐりと口を開けてはいたが、それでも無意識に身体は動き、敵方を照準していた。残りの一体に5.56ミリ弾の連射を浴びせ、散弾を受けた二体にまだ息があり、死体に腕を掛けるように起き上がろうとしているのを素早く見咎め、周囲の死体ごと撃ちまくる。水飛沫と血飛沫が空中で混ざり合い、不気味に煌いていた。知らずに絶叫していた。

 ジャミの分隊員はカンカラスを除いて五名だったが、残りは三名、いや、一人はAFK状態なので、実質二名だ。僅か数分間の戦闘で、致命的な消耗である。それはジャミの分隊に限らずとも、この小川の地獄を経験している全てのプレイヤーに共通する。個人の戦闘能力を比べれば、この突撃NPCに負かされるようなプレイヤーはこの場には誰一人として居ないだろうが、問題なのは敵の数だった。一体では大した事のない敵でも、十体になれば脅威である。

 一体も撃ち漏らすまいと東西に展開したプレイヤー達だが、約三十キロもの面をカバーするためには、分隊ごとにかなりの間隔を空けねばならなかった。しかし、NPC達はそんな数の制限などお構いなしに、僅かな隙間も無い波となって北から雪崩れ込んでくる。被害は明らかにむこうの方が大きいはずなのに、止まる事を知らぬ人海となって押し寄せ続けている。NPCは無言、無表情、無感情であり、敵方の勢力が微塵も窺い知れない。一向に終わりが見えない。それなのにプレイヤー達の消耗だけは確実に増え続けている。

 もし一点でも防衛線を抜かれたら、波となったNPCはまさに水流のようにその穴から流れ込んでくるだろう。そうなれば点在する分隊は全周に対する白兵戦を強いられ、後は消化試合。各個撃破をされるのは目に見えている。

 短期間の消耗戦。このままではあと十分も持たないだろう。いや、五分も怪しい。

 ジャミは装填の合間に周囲を見渡す。

 両腕に被弾し、銃を握れなくなったプレイヤーが、回復を待つ暇も惜しいとばかりに自棄を起こしたように突進し、NPCに飛び蹴りを仕掛けるが、達する前に空中で撃ち落され、死体の山に頭から突っ込んだ。

 この消耗戦の行き着く先を危惧したのであろう数人のプレイヤーが前進を再開するが、小川を進む間に一人また一人と倒れ、たった十メートルの距離にあるはずの対岸に、誰一人として達する事ができなかった。

 プーマ歩兵戦闘車に対岸から放たれた対戦車榴弾が立て続けに直撃し、炎上した。プーマを遮蔽物として利用していたプレイヤーが数名、炎に捲かれ、火達磨となって駆け回っている。

 そんな狂気の中、更なる狂気にジャミは目を疑う。背中に点いた炎が燃え広がっているというのに、気付かずに敵を撃ち続けるプレイヤーが居たのだ。表情は半笑いだった。不意に、そのプレイヤーとジャミの視線が重なり、ウインクされた。ジャミは視線を前方に戻す。

 敵だけではなく、味方も含めたこの雰囲気が、この狂気が、阿鼻叫喚の地獄絵図が恐かった。

 手が震え、口の中が嫌な感じに渇いている。もう駄目だ。俺も落ちよう。楽しむためにゲームをやってるのに、なんでこんな恐い思いをしなくちゃならないんだ。ジャミはメニュー画面を開き、ログアウトを選択しかけたが、不意に、先ほど戦死した分隊員の死体が目に入った。

 そういえば、さっきはなぜわざわざジャミを飛び越えたのだろう。その場で撃った方が速いし、死ぬ事もなかったかもしれないのに。

 考えるまでもない。身を挺してジャミを護ったのである。なぜ護ったのか。ジャミが分隊長だからだ。戦闘を優位に進めるためには、いち分隊員と分隊長、どちらに価値があるか。言うまでもない。彼があの一瞬でそこまで考えていたのかは定かでないが、結果だけ見れば、勝利のためにジャミを護ったのは事実だ。

 ジャミの創設したクラン、クラッチは身内同士の馴れ合いクランだった。具体的には専門学校の仲間である。サークルと言い換えてもいい。バトルを中心的に活動している内に、自然と練度は高まったが、それでもこれといった矜持なんてないし、身を挺して隊長を護るような要素は何もないはずだった。

 では、なぜ彼は今に限ってそんな事をしたのか。勝ちたかったのだ。小山でのウィスキーの言葉を聴いて、彼は涙を流していた。ジャミも昂ぶりこそしたが、泣くほどではなかった。嗚咽を漏らす彼を見て、若干引いてしまったが、今なら違う。

 彼にとってこれは、仲間と楽しくやっていけるこの世界を、自分達の手で護るための戦いなのだ。ジャミは、根拠のないウィスキーの言葉を全面的に妄信できるわけではないが、それでも、一人のクラン員が仲間達との活動を涙を流してまで護ろうと想っていてくれた事は、嬉しかった。

 ジャミはメニュー画面を閉じ、弾かれたように銃口を振った。死体の小山の頂上で手榴弾を投擲しようとしていたNPCを貫く。死体と共に転げ落ちた手榴弾が小山の裏で炸裂し、粉塵と破片に撒かれた死体の小山が部分的に崩れ、草叢から進み出てきたNPCの群れが視えた。

 死体の間を縫うようにして、草叢のNPCに集中的に弾丸を送り続ける。曳光弾トレーサーが鈍く輝く橙色の筋を残し、敵中に飛び込んではピンクの霧と赤黒い肉片を生む。不意に弾が切れた。身体を弄るが、無情にもマガジンを探す手は尽く空を切った。無理もない。休みなしに撃ち続けているのだ。弾切れにならぬよう、ジャミは普段から多目に弾薬を携行するようにしていたが、このような事態は全くの想定外だった。

 ジャミは周囲を見渡す。死体とそれが持っていた銃器はそこらじゅうに転がっているはずなのに、欲しい時には近くにない。ジャミは隣の分隊員に目を止めた。AFK状態の女性プレイヤーだった。彼女は先と寸分違わぬ姿でそこに伏せていた。

「ごめん」

 逡巡はなかった。ジャミはその腕からステアー AUGアサルトライフルを引っ手繰り、射撃を行う。

 死体から銃を拾得するのと、AFK状態のプレイヤーから銃を奪うのでは、倫理的にまるで異なる。AFKとは言え参戦中のプレイヤーには違いなく、復帰する可能性もゼロではない。その手から銃器を奪うのは、一種の攻撃行為でありマナー違反である。しかも他人ではなく、同じクランに属する仲間からだ。普段のジャミでは考えられない行為だった。

 弾が切れたら女性プレイヤーの身体から弾倉まで奪い、また射撃を再開する。左肩に被弾の衝撃を感じたが、負傷の程度を気に掛ける余裕すらなく、応射する。

 この数分間で一体何体の敵を殺しただろうか。通常のバトルやクエストで感じる、敵を撃ち倒した時に感じる悦び、それに伴い上昇する自身の得点スコアを見た時の満足感。ジャミは今、そんなものの存在を完全に忘却していた。

 ジャミの中で、何かが変わりつつあった。

『盾、こちら鎧』

 突然の鎧からの連絡にも、小川のラジオマン達は射撃の手を止めなかった。手を止めずに、配下の分隊員達に鎧の言葉を伝える。

『横軸4の尾根にて敵が背面攻撃を仕掛けてきた。旗の防衛は任せろ。盾は草叢にて全周防御、敵にこれ以上の進行を許さぬよう、北面の防御を特に徹底しろ。そして可能ならば状況を打開せよ』

 ――背面攻撃!? 南の尾根の異常事態を、小川のプレイヤー達は露とも知らなかった。言われてから初めて90式戦車の援護砲撃が沈黙している事に気付いたほどだ。しかし、バックアタックを受けたならば自分達に逸早く被害が出ているはずではないか。90式戦車隊が頑張っているのか。それとも他の誰かか。

 ジャミの分隊だけが誰かの正体に気付いていた。

「ジャミ!」

 背後の分隊員の声に、ジャミは頷く。

「ああ、カンカラスさんだ」

 カンカラスは草叢に入って間もなく、ジャミの分隊を離れて、数人のプレイヤーと合流し逆走していた。しかし、背面攻撃を仕掛けてきた敵がどれほどの勢力かは定かでないが、そんな極少数の戦力で対応し切れるとは思えない。もし彼らの防衛線を突破されれば、小川のプレイヤーは本当の挟撃を受ける事になる。北面の防御を特に徹底し可能ならば状況を打開しろ、などと鎧は言うが、北面に対する防御線だけですら瓦解は時間の問題なのに、その上更に背後からも攻撃を受けるとなっては、泣き面に蜂。すでに絶望的な勝機が、綺麗に消えて無くなってしまう。

 対岸からの突撃は収まる気配がなく、それを押し止めるプレイヤー達には背後を仰ぎ見る余裕すらない。皆が目前の敵を撃ち抜く事に必死なので態度にこそ出ないが、心の隅では敗戦を感じていた。

 しかし、一人のプレイヤーの大声が、皆の陰鬱を振り払う。

「後ろは大丈夫! 俺らは前にだけ集中すればいいよ!」

 その言葉とプレイヤーの姿に、皆は耳と目を疑った。そのプイレヤーは甲高いエンジン音を響かせ、背後の草叢から飛び出てきたのだ。OD色のオートバイ、KLX250が、さながらモトクロスの競技のように宙を舞い、火線の只中、小川のNPCの死体の上に着地した。

 やや遅れて二輛のオートバイが草叢から出て来たが、彼らは小川にまで進もうとはせず、その場でバイクを寝かせて、車体を盾にするように裏に屈み、ライフルを構えた。

 小川に躍り出たバイクのプレイヤーは銃口を向けてくるNPCの姿を前方に認めると、即座にアクセルを噴かし車体を右へ九十度回頭させ、吹き飛ぶかのように発進、小川の中央を跳ねるように進む。点在するNPCの死体を利用して多角的且つ不規則に移動する事でNPCの照準から逃れつつ、真っ直ぐ伸ばした左手に持ったキャリコ M950サブマシンガンを連射する。

 横に薙ぐようにばら撒かれ続ける9ミリの弾丸。虚空で瞬く銃火の残像、その軌道に排出された金色の空薬莢が輝く。バイクを操縦しながらの車上射撃ドライブバイ。如何にも乱雑な射撃法であるはずなのに、対岸のNPC達は次々と血を噴き、地に伏した。プレイヤー達の地に足つけた通常射撃と比べても、全く遜色のない確実な射撃だ。

 視線は左の対岸、敵方を照準し続け、前方など横目にも見ていない風であるが、まるで第三の目で視ているかのように右手だけでハンドルとアクセルを巧みに操作し、バイクは蛇行や飛翔を繰り返す。NPCの銃火を尽く避けている。

 対岸のNPC達の銃撃は、前方を疾走して行く彼に一時的に集中していた。プレイヤー達はその隙を逃すまいと、彼が通過した後から、より一層弾雨の勢力を増す。

「なにあの人!? いや、凄いんだけど、なんだったんだろ」

 ジャミも弾雨を形成する一部に加わりながら、先ほど目前を横断したバイクプレイヤーの奇行に驚嘆し、そして登場の際に宣った言葉を真意を計りかねていた。後ろは大丈夫? 何を根拠にそんな事が言えるのか。単に勇気付けようとしただけなのか。

「!?」

 しかし、それは違った。ジャミはほどなくして再び現れた者を見て、最初は絶句し、次には破顔。思わず笑ってしまった。

 皆が驚嘆の思いで、目前を通過して行くそれを目で追っていた。

 彼は戻ってきたのだ。

 車体に身体を張り付けるような前傾姿勢、顔のすぐ近くで曲げた左腕の先に在るキャリコを連射しながら、先とまったく同じコースを逆走してきた。

 信じられない、と言う他ない。小川をどこまで下ったのかはわからないが、そんな強攻が長く続くとは到底思えず、生きていたとしてもこちらの岸に避難しているだろうと思っていたのに。この地獄の只中を、狂気の渦中を、敵の殺意を一身に浴びながら、我が物顔で行き来している。神経を疑うが、それと同じ気持ちで不思議と彼に奇妙な愛着を抱いてしまう。

 それでもやはり、それは奇跡に違いなかった。確かに彼の技術力が成せる業なのだが、それに僥倖が相乗された結果なのだ。敵はそれ以上の幸運を許すほど、甘くなかった。

 彼のコースを先読みしたNPCが四体、死体の小山の陰から飛び出し、彼に向けてライフルを構えた。彼は咄嗟にそちらに銃口を振るが、間に合わず、銃撃を浴び、死体の小山の麓で横転してしまった。

 計ったように素早く周囲のプレイヤー達はその四体に銃弾を送り、同時に、小山の上から彼を狙うNPCに牽制射撃を見舞う。言葉も合図もなかったが、プレイヤー達は彼を生かそうとしていた。地獄の景色を変えてくれた彼から、窮地を打破する雰囲気を感じ取ったのだ。

 彼は生きていた。幾つかの銃創が見受けられるが、致命傷ではない。それでも脚の傷から察するに、しばらく動けないだろう。彼は死体に背を預けるようにして、キャリコの円柱形のヘリカルマガジンを交換していた。

 プレイヤー達の援護射撃を貰い、彼が感謝の微笑を湛えているように、ジャミには見えた。そして彼が大きく口を開いて叫ぶのが聴こえた。

「後ろの敵はビークルカンパニーが抑えてる! ここが挟撃を受ける事は絶対にないから、心配ないよー! ラジオマンはこの事みんなに伝えてあげてー!」

 絶え間ない銃声により不明瞭だったが、陽気さすら感じるような間延びした声が確かに聴こえた。

 後ろの敵はビークルカンパニーが抑えている、と。

 彼はビークルカンパニーの隊長だった。


 

 時間軸を少し戻して、カンカラスが逆走するFEFの生き残りと合流するためジャミの分隊を離れた頃。

 敵の罠を警戒していたのは、カンカラスとFEFだけではなかった。ビークルカンパニーの隊長もまた、最前線の部隊が大した抵抗も受けずに難なく前進できている事に違和感を抱いたのだ。故に、尾根に到着した後も少し状況を見ようと、プレイヤー達を運んだ輸送車輛群と共に草叢に入らずに暫く待機する事にし、その旨を鎧に報告した。

 そしてもう一人、罠に気付いている人物が居た。ウィスキーである。ビークルカンパニー隊長に教えられるまでもなく、ウィスキーは確信していた。そう、確信だ。違和感といった曖昧な感覚ではなく、罠の存在を確実に予知していたのだ。もっと言うならば、これは確信的ではないにせよ、罠の正体は背面攻撃であろう事まで察していた。生真面目な盾のラジオマンが数名、定期的に状況を鎧に告げ、草叢で敵の掃討に当っているという報告がウィスキーの耳に入っていたのだ。その事から罠の存在を察するのは、ウィスキーにとっては簡単だった。考えられる罠を背面攻撃に絞るのは、戦場の地形を鑑みれば見当が付く。

 予知するのは簡単だったが、問題なのは対処だ。しかし、それについても意外な解決策が見つかった。

 ビークルカンパニーが鎧の移動通信基地として寄越したストライカー装甲車の脇で、ウィスキーは偶然基地を一瞥し、違和感を覚えた。まさか、という思いで双眼鏡を使って、格納庫の中に在る物を確認した。そこに在った物はプレイヤーこちら側にとって歓迎すべき事態なのだが、手放しで喜ぶ気にはなれずに訝しむ。それでもすぐにビークルカンパニー隊長と連絡を取った。

『敵の反撃が予想される。おそらく背面攻撃だ。それの対処を貴隊に任せたい。基地の格納庫内に大量の戦闘車輛の再出現を確認。それらを活用されたし』

「へ?」

 ビークルカンパニー隊長は思わず間の抜けた声を上げてしまった。背面攻撃という罠の具体的な正体までウィスキーが看破していた事にも少なからず驚かされたが、もっとも驚嘆すべきは、基地に再び戦闘車輛が出現しているという事態。

 すぐに未だ基地にて航空機や支援車輛の出現を待っている鷲、燕、猿に確認を取らせると、肯定を意味する驚きの声が返ってきた。基地に待機しておきながら、すぐ近くで再出現した戦闘車輛に気が付かないとは、さもすると愚かしく思えてしまうが、しかしそれも無理からぬ事だった。通常のバトルに慣れ切っているベテランであればあるほど、そのような異常事態は意の外。

 通常のバトルでは開始直後に同時利用可能車輛が最大数出現し、後は撃破されるたびにしばらくの間を置いて再出現するというパターンが常である。この時点では破壊された車輛はまだハンヴィー一輛だけだった。戦闘車輛は一輛とて撃破されていない。それなのに、基地には戦闘車輛が再出現しているという。しかも大量に。おそらく、破壊か健在かに関わらず、基地から持ち出された車輛はほどなくして再出現するというパターンなのだ。未だ嘗てない出現パターンだ。パターンが既定外である事はすでに確認していたが、これではあまりにも。

「どうぞ好きなだけ使ってくださいって事か。ふーん、なんだか気に食わないな」

 ビークルカンパニー隊長もウィスキーと同じく怪訝に思うが、悩んでいても仕方がない。輸送車輛の隊員達に指示を与え、自身はオートバイに乗った腹心二人を共だって草叢の前線に向かったのだった。




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