慟哭
泣くと言う行為がこんなにも困難だなんて私は知らなかった。
悲しい歌を聴いて、感動するドラマを見て、友達と笑いあって、そうして泣いていた
あの頃がこんなにも愛おしい。あの日々に戻りたい。
苦しくなる時がある。
どうして、私が。どうして私だけ。どうして私だったの。
昇華できない想いは口に出す事すら出来ずに心に傷をつけて奥底に仕舞い込んで
頑丈な鍵をかけて閉じ込める。それを繰り返してボロボロになった心は傷つけること
すら出来なくなった。ううん、傷がついても解らなくなった。
誰にこの怒りをぶつければいいの。
誰にこの悲しみを訴えればいいの。
誰にこの空しさを伝えればいいの。
誰が私に救いを与えてくれるの。
私は1人だ。ワタクシは独りだ。終わりの末に始まったこの人生に終わりはあるの?
フィーリアナ・クシュターナは泣かない。
だって貴族の令嬢に産まれ愛されて甘やかされて育った子供に
泣くほどの悲しみがある?心から訴えるほどの悲しい泣き方をするはずがないのに。
そんな感情知るはずがないのに。
だからフィーリアナ・クシュターナは泣かない。
小柳皐月は泣けない。
平凡だけど幸せな家庭で生まれ育ち自分の力で居場所を創り幸福に
生きていたそれが突然奪われた。抱えきれない悲しさももどかしさも悔しさも
発散すべき場所などない。そんな想い誰も知らないから。
だから小柳皐月は泣けない。
苦しい悲しい切ない恐ろしい憎い悔しい愛しい楽しい嬉しい哀しい。
その全てを小柳皐月は閉じ込める。
その全てをフィーリアナ・クシュターナは押し込める。
今日も生きていくために今日を生き抜くために。