クリスマスのお話《受験生》
12月24日――
ここの町は、あまり雪がふらない。
かといって、クリスマス気分が薄れるわけでもなく、相も変わらずケーキやさんには人々の行列が、うねる蛇のようにいくつもできていた。
「受験生にクリスマスもクソもねぇよ、くるしんでます、だよ!」
そんなクリスマスの中、外にはでず、家に籠もっている少年が1人――
いや、正確にいえば全国に数えきれないくらいにいるのだが、今回はこの少年、俊に絞ってみてみよう。
俊は狭い机に教科書をたくさん広げ、さらには両手にも教科書をもち、ある1問をにらんでいた。
「は、これどうやっても相似になんねーだろ」
どうやら中学3年でならう、相似に苦戦しているようだ。
まさか、こんな積み木と同じ形の三角にこれからの人生が左右されようとは……
「あーいやだ、勉強したくねぇー。家中掃除してたほうがましだぁ!」
俊は手にもっていた2冊の教科書を、ひょいっと近くのベッドに放り投げた。
教科書が、俊からみて反対になり、ベッドにのっかった。
はぁ、とため息をつき、寝ようかとベッドに目をやる。
「――ん!」
ふと、俊はあることに気付いた。
反対になった、ベッドの上の教科書をにらむ。
今までとは違う、三角の向き。
それは、まさしく俊がもとめていた、《答え》だった。
「そうか! こっちの辺は、反対側の辺と相似なんだ!」
俊はさっそく教科書をつかみとり、シャーペンを手にもち、教科書の上を走らせる。
ケーキはいくつも売り切れ、レジの中にはどんどんお金が積もってゆく。そうまるで、止むことを知らない雪のように――
これは、ある一つのクリスマスの物語。
みなさんのクリスマスが、よい1日ですように。
受験生の皆さん、頑張ってください!