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「今年も盛大にやっているようね」
屋上で長いブロンドの髪を風に揺らめかせながらつぶやく女子生徒がいた。
眼下では、体育館の屋根が抜け落ち、炎をまき散らすピンク色のドラゴンが大暴れしている。
逃げ惑う生徒たちの悲鳴が、この屋上にまで響いていた。
突然ドラゴンを取り囲むようにお花畑が現れ、そよ風がその花たちを揺らし、小鳥のさえずりが響く。
吐き出す炎が徐々に少なくなっていく中、駄目押しのようにドラゴンの巨体を包み込んだ暗闇。
真っ暗ではなく、月明かり程度の夜を思わせる空間には、鮮やかな月が浮かんでいた。
ドラゴンは自らの巨体をみるみるうちに地面へと横たえ、やがて眠りに落ちた。
あとに残ったのは静寂のみ。
例年どおりならば、すぐに先生方が事態の収拾を始めることだろう。
「おほほほほ、今年の新入生、なかなか有望な子がいるみたいね」
満足そうな微笑み浮かべると、彼女はゆったりとした動作で屋上から去っていった。