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マナ娘のまなびや  作者: 沙φ亜竜
第5話 期末テストにはスイートハート
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-6-

「マナ……」


 ふと気づくと、あたしの目の前には、レイちゃんが立っていた。

 その横にはカリンちゃんが並んで、明るい笑顔を浮かべながらあたしを見つめている。


 すっと、レイちゃんがなにかを差し出した。

 それは……。


「ウサギの、ぬいぐるみ……」


 どうして?

 あたしの疑問に答えてくれたのは、カリンちゃんだった。


「わちらも、べつに忘れてたわけじゃないのだよ? 大切にしてくれてすごく嬉しかったのだ。でもほら、自分たちで作ったものだから、ちょっと恥ずかしくてに~。不恰好だったし」

「でも、それなら最初からそう言ってくれても……。それに、大切な宝物を汚されちゃったのに、あんな言い方するから、あたし……」


 カリンちゃんとレイちゃんの想いはしっかり感じられていたのに、この期に及んでもまだ素直になれなくて、あたしは思わず不満を口走っていた。

 そんなあたしに、少し寂しげな視線を向けるレイちゃん。


「マナ、あなたは汚れたぬいぐるみのほうが、わたくしたち本人よりも大切だというの?」

「え? そ……そんなこと、ないよ!」


 当たり前だよ。

 あたしにとってカリンちゃんとレイちゃんは、何物にも代えがたい大切なお友達だもん。

 ここまで来てくれた、セイカちゃんや他の先輩たちだって。


「みんなのほうが大切だよ!」


 あたしは、はっきりと答えた。


「ありがとう!」


 ぎゅっと、レイちゃんはあたしを強く抱きしめてくれた。


「ふにゃ、レイちゃん、ちょっと痛い……。っていうか、ウサギ、潰れてる!」

「ああ、わたくしとしたことが!」

「きゃははっ!」


 みんな、笑っていた。

 バカにしたような笑いじゃなくて、心から湧き上がってくる笑い。


「わちも悪かったのだ。ごめんに。これからもよろしく、マナティ!」

「マナティ言うなぁ!」


 怒鳴りながらも、あたしは温かい気持ちでいっぱいだった。


「マナ。このぬいぐるみ、前のは汚してしまったから、お詫びとして新しく作ったの。小学生の頃と同じように、わたくしとカリンの合作よ。昨日、あのあと急いで準備して作ったものだから、あまり丁寧な作りではないけれど」


 レイちゃんが再びぬいぐるみを差し出す。


「受け取って、くれるわね?」


 あたしは軽く頷いて、そのぬいぐるみを腕に抱く。

 ふたりの温もりが、伝わってくる気がした。


「あっ、でも、前あげたぬいぐるみの代わりに、ってことじゃないからに?」

「あの頃のわたくしたちの友情と、そして今のわたくしたちの友情を、これからも変わらずに大切にしてもらえたらって、そう思ってるの」


 カリンちゃん、レイちゃん……。


「うん、もちろんだよ! ふにゃ~、ふたりとも、大好き♪」


 あたしが笑うと、カリンちゃんもレイちゃんも、満足そうに微笑んでいた。


「……ふにゅ~、でも、あたしなにもお返しできないよぉ。不器用だから手作りなんて無理だし、お小遣いも少ないし……」

「バカね。気持ちだけで充分よ。わたくしたちは、マナがいつも笑顔でいてくれたら、それでいいわ」


 レイちゃんの言葉に、カリンちゃんも頷いていた。髪留めに結びつけた鈴をチリンと鳴らしながら。


「いい、お友達を、持った、わね……」


 早兎子先生も、優しく声をかけてくれる。


「はい!」


 今度は素直に答えることができた。


「でも、補習は、続き、ます……」

「ふにゅ~~~~……」


 先生は、おどおどした声ながらも、容赦がなかった。



 ☆☆☆☆☆



「まぁ、わちらは待ってるから、ゆっくり補習するのだよ~」

「ふふ、そういうことだから、頑張ってね」


 補習を再開したあたしと早兎子先生をのけ者にして、宴会はしっかりとスタートするみたいだった。


「うふふ~、ポテチはこちらに置いておけばいいかしらね?」

「優しい僕が、ジュースを入れてあげるよ。みんな、どれがいいかな~? オレンジとグレープとアップルがあるよ~」

「んふ、ボク、アップルで」

「私はオレンジをいただきますわ」


 はぁ……。みんな、さすがにちょっと非常識かも。

 そう思いながらも、全然嫌な気分ではなかった。


「ほら、マナっちも食べるといいのだに~」


 カリンちゃんが紙皿に乗せたお菓子類を、あたしの机の上に置いてくれた。


「ちょっと、補習中、なんだから、さすがに、ちょっと……」

「はい、早兎子先生も!」

「あら、ありがとう。うん、たまには、いいわよ、ね……?」


 せ……先生……。

 そんなこんなで、あたしはお菓子を食べつつ、まったりと補習をするのだった。


「ジュースのおかわり、あるよ~? いる人~?」

「んふ、ほしいです~」

「あっ、あたいは、ビールをもらおうかな。学園長もいるかい?」

「あらあら、うふふ~。いただきますわ~」

「ちょっと雷鳴先生、学校でアルコールなんて……」

「いいじゃない、細かいことなんて言いっこなしですわよ。せっかくの宴の席なのですから。ミナミさんはほんとに頭が固いですわね」

「でも会長! 雷鳴先生はともかく、学園長さんが酔っぱらったら大変なことになるんじゃ……」

「あら、そういえば」

「うわっ、そうだった! 学園長、あなたはビールじゃなくてジュースに変更……って、もう飲み干してる!?」

「うふふふふ~、体が熱くなってきましたわ~、ヒック!」


 その直後、教室は巨大化したピンクのドラゴンによって、綺麗さっぱり破壊されていた。



 ☆☆☆☆☆



 破壊された教室は、次の日には先生方の魔法ですっかり修復された。

 そして数日後。


 無事すべてのテストが返されたけど、あたしは赤点もなく、無事に夏休みを迎えられそうだった。

 数学も補習のおかげでどうにかセーフだったし。


 でも……。


 一学期の終業式の朝、登校中にみんなと合流したあたしは、ある不満を訴えた。


「太った~~~~~~!」


 言うまでもなく、原因は補習の日のお菓子やジュース。

 紙皿が空っぽになると、カリンちゃんが次々に乗せてくれて、勉強中ってついつい手が出てしまうもので、あたしは思った以上に食べて飲んでいたのだ。


「うきゃっ! 狙いどおりなのだに!」

「ふふ、そうね。もっと食べさせれば、ころころまるまる太ったマナを見られるかしら」

「え~ん! ひどいよぉ~!」

「んふ、やっぱりみんなといると楽しい♪」

「あたしは楽しくないいいいいいいいい~~~~~~~~!」


 澄み渡った青空の下、朝の通学路にあたしの叫び声がこだまする。

 もう夏はすぐそこまで迫っていた。


話としては全然完結させていませんが……。

とりあえず、一旦ここまでで完結としておきます。


お疲れ様でした。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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宜しくお願い致しますm(_ _)m

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