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「マナっち、やってるに~」
カリンちゃんだ。
「んふ、みんなで押しかけちゃった」
セイカちゃんだ。
「ふふ。お疲れ様」
レイちゃんだ。
ふにゃ~、みんな、心配して来てくれたんだわ!
思わず瞳が潤む。
でも、さらに後ろから、別の面々が教室に入ってきた。
「くすくす。こんにちは」
あれ? ミナミ先輩?
「おほほほ。さすがマナさん、期待どおりの結果を見せてくれますわね」
ええ? 会長さん!?
「やぁやぁ、マナちゃん、今日も可愛いね~」
うわっ!? 流瀬先輩!
生徒会執行部の先輩たちまで揃って……。いったいどうして!?
「うふふ~、わたくしもお呼ばれさせていただきました。あっ、お呼ばれといえば……」
うにゃ!? 学園長さんも!?
「ふふっ、あたいも来たぞ!」
雷鳴先生まで! 遠慮のかけらもなく、長そうなお話を始めていた学園長さんに蹴りを入れてるし!
あたしは、驚きの表情を隠せなかった。
いったいこれは、なんなのだろう?
「うきゃっ。びっくりしたみたいだに~?」
カリンちゃんはニヤニヤと笑っている。
レイちゃんやセイカちゃんも、そして他の人たちも、みんな笑ってる。
……そうか。
みんなヒマなんだわ。
だから、あたしをバカにして笑い者にするつもりなんだ。
ヒマ潰しのために。
大勢でバカにしたほうが楽しいとか思って、カリンちゃんたちは、先輩や先生にまで声をかけたんだ。
みんな、ひどいよ……。
ほんのちょっと前までとは打って変わって、悲しい涙が溢れ出す。
「なによ、なによ、なによ! みんなしてあたしをバカにして!」
一瞬きょとんとするみんな。
だけど、すぐにあたしの思っていることを察してくれたのだろう、レイちゃんが一歩前に出て、あたしをそっと抱き寄せた。
「ほんと、バカね。わたくしたちは、そんなにヒマじゃないわ」
レイちゃんの温もりで、あたしの心も少し落ち着いてくるのがわかった。
とはいえ、まだ状況はよくわからない。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、あたしはレイちゃんを見上げる。
「みんな一緒のほうが楽しいから、そう思って呼んできたの。マナ、あなたはひとりじゃないのよ?」
みんなは本当に、あたしのためを思って来てくれたんだ!
あたしは、頬が熱くなって、そんな顔を見られるのは恥ずかしくて、レイちゃんの肩に顔をうずめた。
「マナさん、これ……」
しばらくして泣き止んだあたしに、セイカちゃんが差し出したのは、人数分のショートケーキだった。
「この前、ダメにしちゃったから、買ってきたの」
「ちょっと、学校に、ケーキ、なんて……」
早兎子先生が、さすがに注意する。
ただ、
「んふ、早兎子先生の分もあるの」
「ま、まぁ、たまには、いい、でしょう」
すかさずセイカちゃんが放ったひと言で、先生は簡単に買収されていた。
早兎子先生……そんなんで、いいの……?
「他にもいろいろあるのだよ~!」
カリンちゃんたちは、たくさんのお菓子やジュースを取り出していた。
「こっちに机をいくつかくっつけて、テーブルを作りましょう」
レイちゃんの指示に従い、先輩たちや先生たちも手際よく宴会の準備を始めている。
えっと、これって、ほんとにあたしのため、なのかな……?
ちょっと疑問符が浮かんできた。




