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マナ娘のまなびや  作者: 沙φ亜竜
第5話 期末テストにはスイートハート
30/32

-4-

 翌日。

 すぐに数学の授業があり、テストの結果が帰ってきた。


 昨日の今日なのに、もう採点を終わらせたなんて。早兎子先生、頑張って採点したみたいね。

 でも、結果が怖いあたしとしては、もっと遅らせてもらったほうがよかったわ……。


 そう、数学は早兎子先生の担当なのだ。

 こんなに数学の似合わない先生もいないと思うのだけど。


 ともかくあたしは、先生から名前が呼ばれるのを、ビクビクしながら待っていた。


「綾音さん」

「ふぁい」


 思わずちょっと声がこもってしまった。

 うう、足が重いよ……。

 早兎子先生の目の前まで出て、答案用紙を受け取る。


「綾音さん、その、申し訳、ないです、けど、その、補習、します……。放課後、残って、ください、ね……」


 ふ、ふにゅ~~~。やっぱり~……。


「は、はい……」


 力なく返事をして、あたしは気の抜けたように席に戻った。

 それにしても、全員の前で言わなくても……。あたしの点数がひどいってこと、みんなにも知られちゃったよ……。


 そして、放課後になった。


「あの、マナさん……」


 おずおずと声をかけてくるセイカちゃん。

 だけど、


「セイカっち、行こ」


 カリンちゃんがセイカちゃんの腕をつかんで、ふたりとも教室を出ていってしまった。

 教室には、すでにレイちゃんの姿もない。


 補習になったのは言うまでもなく、あたし自身のせいだけど、みんなにもまったく原因がないってわけじゃないのに。

 自分からみんなを無視しておいて自分勝手かもしれないけど、みんな薄情だ、なんて思わず考えてしまっていた。

 やがて、ドアを開けて早兎子先生が入ってきた。


「そ、それでは、補習を、始め、ます……」


 補習が開始され、あたしは先生から渡されたプリントに書かれた問題を、ひたすら黙々と解いていった。

 とはいえ、あまり頭に入ってこない。

 とりあえず自分なりに頑張ってはみたものの、明らかに間違ってるだろうなと、自分自身でもよくわかってしまっていた。


 そんな様子を黙って見つめていた早兎子先生だったのだけど。

 西陽が教室に差し込む頃、ふとあたしに話しかけてきた。


「綾音さん、どうか、したの?」


 ふにゃ。

 ちょっと驚いた。

 いつもおどおどしている早兎子先生でも、やっぱり教師だから、しっかりと生徒の様子は見ているってことなのかな。


 それでも、


「べつに……」


 素直になれないあたし。

 そんな応答も予想の範疇だったみたいで、早兎子先生は言葉を続ける。


「そう? でも、イライラしてる、みたい。お友達と、ケンカでも、した?」


 意外と鋭い。

 他人事のように、そんな感想を持った。


「話して、みると、すっきりする、かも、しれない、よ?」


 そう言ってくれる先生の微かな笑顔は、教師らしい包容力を持っていた。


「えっと、実は……」


 あたしは、自分でも意外なほど素直に話し始めていた。

 じっとあたしの話を聞き続ける先生。

 ひとしきり話終えたあたしに、こう尋ねてきた。


「それで、あなたは、どうしたい、の?」

「それは……」


 あたしは迷っていた。

 仲直りはしたいけど、怒りの念は消えていない。

 カリンちゃんとレイちゃんがもう一度謝ってくれるまでは、あたしからはなにもできない……。


 と、そのとき。


 ガラガラガラ。

 突然教室のドアが開く音が響いた。

 そこには、みんながいた。


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