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マナ娘のまなびや  作者: 沙φ亜竜
第1話 入学式にはドラゴンブレス
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-2-

「ギリギリセーフだったみたいだに、マナティ!」


 むっ。

 振り向くあたしの目に飛び込んできたのは、髪留めに鈴をつけてチリンチリンと音を鳴らしている、小柄な女の子だった。


 大瑠璃歌鈴(おおるりかりん)ちゃん。小学校からの幼馴染みだ。

 ウグイス・コマドリと並んで美しい鳴き声と言われる鳥、オオルリの名が示すとおりなのか、とっても綺麗な声をしているのだけど……。

 ひたすらよく喋る。つまり、うるさいのだ、この子は。


「トーストをくわえながら走ってる姿が、思い浮かぶわよね。ってことで、おはよう、マナティ」


 続けて声をかけてきた、カリンちゃんの隣に立っているこの子は、漆原麗(うるしはられい)ちゃん。カリンちゃんと同じく小学校からの幼馴染みだ。

 長身でサラサラと揺らめく黒髪が印象的な美人タイプ。あたしもレイちゃんみたいに綺麗な大人の女性になりたい。


「ふにゅ~。マナティって呼ぶのはやめて~!」


 あたしは頬を膨らませる。……こういうところが子供っぽく見られる原因なのかな。


「ふふ。可愛くていいあだ名だと思うけれど」

「うに。マナティのあのふてぶてしい体格と優しげな眼差し、もう最高に可愛いと思うけどに~」


 ……カリンちゃん、相変わらず微妙な趣味してるわ。

 それはいいとして。


「ふにゃ~。マナティは中学で卒業なの~! これからは、普通にマナって呼んでよ~!」


 思いっきり駄々をこねながら、あたしはふたりを精いっぱいの鋭い眼光で睨みつける。


「怒った目もラブリーで、マナティにそっくりだに~……って、わわ、本気で怒っちゃやだよ~。わちが悪かった、謝るから許してに~?」


 うん、どうにかカリンちゃんはわかってくれたみたい。

 若干、強制力を行使した気がしないでもないけど、気にしちゃいけないよね。


「ふふ。ま、本人が嫌がってるあだ名で呼ぶなんて、いじめみたいだしね。マナって呼んであげるわよ」


 続いてレイちゃんのほうも、あたしのお願いを聞き入れてくれた。思わず笑顔になる。


「……不本意だけどね」


 ちょっと視線を逸らして、そうつけ加えられた。ひと言多いのも、レイちゃんの特徴だ。

 レイちゃんの場合、そういう言葉は照れ隠しだっていうのが、あたしにはわかっている。

 ほら、視線を逸らしたレイちゃん、微かに頬が赤くなってるし。


 でも、高校になってもやっぱりみんな一緒なんだ。

 この高校に入学することは聞いてあったけど、実際にこうして楽しくお喋りできると、やっぱり素直に嬉しいな。

 クラスも一緒だと、もっと嬉しいんだけどな~。


「ねぇ、クラス分けって、どうなってるのかなぁ?」


 あたしの声に、ビシッと指を差すカリンちゃん。


「ほら、あそこの掲示板に貼り出してあるよ~。わちもまだ見てないんだけどに」

「もちろん、わたくしもね。三人で一緒に見ようと思って待ってたのよ」


 わぁ~。やっぱり持つべきものは友達だ。

 当然ながら、一緒に見たら同じクラスになる確率が上がる、なんてことはないのだけど。

 それでも、喜びも悲しみも、なるべく分かち合いたいって思うものだよね。


 ふにゃ~ん。やっぱりふたりとも大好き!

 というわけで、あたしたち三人は足並みを揃えて、いざ掲示板。笑うか泣くか決戦のときを迎えたのだった!


「大げさすぎだに」


 ……カリンちゃん、あたしの心の声にまでツッコミ入れないで~。



 ☆☆☆☆☆



「わちは~……。うに、月組なのだ。ってことは、レイっちとは一緒ってことかに?」

「ふふ、そうね。私も月組。予想どおりって感じだけれど」


 この学校のクラスは、(つき)組、()組、(みず)組、()組、(きん)組、(つち)組、(にち)組の七クラスある。

 魔法科ということもあり、基本的に魔法の得意な子が入学するのだけど、人にはそれぞれ得意な魔法の属性がある。

 属性はたくさんあるけど、七つの曜日にまつわる属性が、主属性と呼ばれて憧れの対象となっているのだ。


 そしてレイちゃんは、月属性の魔法を得意とする優等生だった。

 主属性の魔法を得意とする生徒は、通常その属性のクラスに配属されるから、レイちゃんが月組なのは予測できたってわけ。


「マナティは?」

「マナティ言うな! ……っと、あった~! あたしも、月組だよ!」


 あたしは大声を張り上げてはしゃぐ。

 カリンちゃんとレイちゃんと一緒のクラスだ~。よかったぁ~!


「三人一緒だに~。さすが、うちらの腐れ縁は、すごいに~」

「腐ってないもん!」

「ふふ。まぁ、クラス替えのない学校だからね、ここ。ふたりとも、また三年間よろしくね」

「うん、よろしく~!」


 こうして、あたしは幼馴染みふたりと一緒に高校生活をスタートすることができたのだった。


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