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清々しい青空が、あたしたちを包み込むかのように広がっていた。
ふにゃ~! とっても遠足日和だわぁ~!
というわけで、あたしたちは遠足に来ていた。当然、学園の行事だ。
遠足なんて、小学校みたいだけど。
とはいえ、高校生になったあたしたちでも、やっぱりわくわくしてしまうもので。
「きっと、親睦を深めるって意味もあるんだろうに~」
カリンちゃんもリュックサックを背負って満足そうな笑顔。
昨日一緒におやつも買いに行った。
おやつは、三百円まで。バナナはおやつに含まない。遠足の基本だよね。
「歩くのは、疲れるけど、でも、こういうのって、すごく楽しいよね!」
セイカちゃんも、すでに息は少し上がっていたものの、普段よりもテンションが高まっているみたいで、なんだか随分とよく喋る。
「ふふ、三人とも、嬉しそうね」
レイちゃんは大人びた笑みを浮かべていたけど、背負ってるリュックサックはパンパンに膨れ上がり、気合いが入りまくってるのを如実に示していた。
おやつは三百円までだけど、お弁当に制限はないわ、なんて言っていたから、すごく豪華なお弁当が飛び出すんだろうな。
あたしまで、わくわくしちゃう。おかず、少しもらおう。
「み、みなさん、ちゃんと、列に、なって、気をつけて、歩いて、ください、ね……」
早兎子先生が相変わらずの震えた声で注意を促すけど、声が激しく小さいので、テンションの上がっている生徒たちには全然聞こえていないようだった。
「こら、お前ら~! 早兎子先生の言うこと、ちゃんと聞け~」
早兎子先生をフォローするように、養護教諭の鬼灯雷鳴先生が声を張り上げる。
凛とした声質と、そのサバサバとした物言いで、雷鳴先生の言葉は生徒の耳にも届きやすい。
「うふふ~、そうですよ~、みなさん。遠足ではしゃぎたい気持ちもわかりますけれど、我が愛美谷学園の生徒として恥ずかしくないよう、節度を持った行動を心がけてくださいね~。担任の指示に従わない生徒なんて言語道断ですわ~。言語道断といえば、どうして道を断つって書くか、わかりますか~? そもそもこの言葉はですね~……」
そして学園長さんが、またいろいろと話し出す。
ふにゅ~、長ったらしいお話はもういいですってば~。
☆☆☆☆☆
時間は少しさかのぼって、今朝。
学園の校庭に集まったあたしたち一年生は、学園長さんからのお話(もちろん長かった)のあと、クラスごとに担任の先導で移動を開始した。
月組が校庭の一番奥に並んでいたため、日組から順に出発し、あたしたちの組は一番最後。
あたしたちが移動し始めると、なぜか学園長さんまでついてきた。
お話するだけの目的で集合場所にいたわけではなかったのだ。
「だって、遠足ですよ? わたくしだって一緒に楽しみたいのですわ~。そうそう遠足といえば~……」
「はいはい、お話はいいから、足を動かしましょう、学園長」
いつの間に列に加わったのか、学園長さんに注意を促した雷鳴先生も、あたしたちと一緒に歩いていた。
「あたいも学園長と同じで、遠足を楽しみたいのさ」
素直に答えた雷鳴先生。
「……それに、あたいの力が必要になるはずだしね。ふふっ」
ぽそりと、そんな言葉をつけ加えたように聞こえたのは、あたしの気のせいだったのだろうか。
☆☆☆☆☆
やがて。
「つ、着きまし、た。ここが、遠足の、目的地、です……」
早兎子先生が立ち止まって、小さくそう宣言する。
そこは、学園の裏山だった。
「近っ!」
思わず生徒たちからツッコミが入る。うん、まあ、当然の反応だよね。
「これじゃ、遠足じゃなくて短足だわ!」
……レイちゃん、そのツッコミは間違ってると思う……。
そもそも、遠足の行事案内には目的地なんて書かれていなかった。だからちょっと、怪しいなぁ、とは思っていたのだけど。
それにしたって、裏山だなんて……。
歩いて五分とかかっていない。
それでも息が上がってるセイカちゃんには、体力づくりの特訓を追加しなきゃならなそうだわ。
「ここは~、学園所有の山なんですよ~。大自然の中でのびのびと、思う存分魔法を使ってもらえるようにと思って、用意してある場所なんです~。今日はここで、思う存分、魔法を使ってくださいね~。うふふ~。遠足というより、魔法訓練、という感じかもしれませんね~」
相変わらずの、のほほんとした笑顔を浮かべながら、学園長さんはきっぱりそう言った。
ふにゅ~。でも、それならそうと最初から案内に書いておけばいいのに~。
「トラブルは突然襲いかかってくるものなのですわ~。油断しているときにこそ、しっかりと対処できるように~、というのが今回の遠足の目的でもありますのよ~」
……すでに遠足じゃありません……。
そんなツッコミは、ただ空しく響くだけだった。