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マナ娘のまなびや  作者: 沙φ亜竜
第2話 生徒会にはウサギのダンス
12/32

-5-

 開け放たれた生徒会室のドアから中をのぞき込むと、そこには大量のウサギと、穴があった。


 穴……。

 真っ黒な、見るからに異世界とか異空間とかにつながっていそうなその穴から、ぴょこっ、ぴょこっと、次から次へ、ウサギが飛び出してきていた。


「ふにゃ~、な、なによ、これ~?」

「見たままって感じだけど、異空間につながってるわね」

「ふ~む、どうすればいいのかに~?」

「それよりも、ウサギがこっちを睨んでるよ……?」


 そう言ってレイちゃんの陰に隠れるセイカちゃん。

 完全にレイちゃんを盾にする習慣が根づいてしまっているみたいだ。


 ともかく、セイカちゃんの言うとおり、今はこっちを睨んで、じりじりと迫りくるウサギのほうをどうにかしないと……。

 それにしても、このウサギって、いったいなんなの?


「きっと、ウサギだらけの世界とつながってしまっているのだに~」


 カリンちゃんが無責任な発言を飛ばす。


 それにしても、このウサギ、どうして鳴き声がセミなんだろう……。

 ほんとに異世界の住人で、そういう生き物なのかなぁ?

 それに、ウサギってことにも、なんかちょっと引っかかってる感じなんだけど……。


 珍しくいろいろと考えを巡らせる。

 ふにゅ~、思考回路がショート寸前だわっ。煙が出そう。


「いやいや、出ないから」


 カリンちゃんがすかさずツッコミを入れてくる。いつもながら、あたしの思考は筒抜けだ。

 と、そんな余裕をかましている場合じゃなかった。


「や~ん、どうしよ~」


 セイカちゃんは涙目でレイちゃんにしがみついている。

 もう、男としてのプライドなんて、ひとかけらたりとも残ってないのだろうか。

 とりあえずセイカちゃんの特訓の儀式はまた、改めて執り行うとして。


「はう、マナさん、儀式とか、変なこと考えてるような目をしてる……」


 セイカちゃんにまで、あたしの考えてることは丸わかりのようだった。なんでだろ……?


 と、そんな場合じゃないんだってば!

 今にも飛びかかってきそうな表情で、ウサギたちはあたしたちを取り囲んでいた。


「ふふふ、わたくしたちは魔法使いなんだって、入学式でも言ったでしょう?」


 まったく慌てた様子もなく、レイちゃんはあたしたちに問いかける。

 そして、


「このウサギたちも、魔法で呼び出されたもの。だから、わたくしたちの魔法で対処可能ってことよ」


 自信満々に言い放つ。

 ふにゃ~、カッコいいよ~。

 でもでも、魔法だって、力の強い弱いってのがあるんだし、魔法だから対処可能だってことにはならないと思うけど……。


「弱気は負の空気を呼び込むわ。強気に元気に洗濯機よ!」


 いや、最後のは意味わからないし……。

 だけど、確かに気の持ちようってのは大切かもしれない。

 どうにもならないことだってあるような気もするけど、この際そんなツッコミは空の彼方にポイしておく。

 ともかく今は、このウサギたちをどうにかするのが先決だ。


 あたしたちにできることといったら、それぞれが得意な属性の魔法だけ。

 花魔法のあたし、鳥魔法のカリンちゃん、月魔法のレイちゃん、風魔法のセイカちゃん。

 この四人が集まれば、なんだってできるはず!

 ……ほんとかな……?


 とにかく、考える、考える、考える、考える、考える、ぷしゅ~。


「マナっち、けむりけむり!」

「ふにゅ~」

「ふふ、考えるのはわたくしに任せなさい」


 すっと構えを取るレイちゃん。

 それを合図にしたかのように、飛びかかってくるウサギたち。


「セイカ、風!」

「は……はいっ!」


 セイカちゃんの魔法で、風が舞い起こる。

 ウサギたちはまるでぬいぐるみのように、あっさりと風に舞い踊らされる。


「えい!」


 レイちゃんの魔法で、生徒会室の中に大きな月が浮かぶ。

 異空間とつながる穴が、月のように輝き出したのだ。


「カリン、羽根! 月へ!」

「ラジャーだに!」


 カリンちゃんの魔法で、ウサギに羽根が生える。

 その羽根が風を受けることで、ウサギたちは月のように変わった穴へと誘導され、その月の表面に次々と張りついていく。


「マナ、花!」

「うにゅっ!」


 あたしの魔法で、ウサギたちの頭に花を咲かせる。

 心を安らかにさせる花の香りは、ウサギたちの心も静めた。


「フィニッシュ!」


 最後に、レイちゃんの作り出した月は、その大きさを一気に縮める。

 表面にわらわらと張りついたウサギたちとともに。


 月が完全に収縮し、見えなくなると、そこにはもうなにも残ってはいなかった。

 ただ激しく散らかった生徒会室の光景だけが、あたしたちの目の前には広がっていた。


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