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マナ娘のまなびや  作者: 沙φ亜竜
第1話 入学式にはドラゴンブレス
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-1-

「ほら、マナちゃん~。早くしなさい~。遅刻しちゃうわよぉ~?」


 あたしを急かすお母さんの声は、とってものんびりした口調だった。

 思わずあたしも、ふにゃ~と気を抜いてしまいがちになる。

 って、ダメダメ。遅刻するんだってばっ!


「え~ん、早く起こしてって言ったのに~。はむっ。ふぉれひゃあ、いっふぇひま~ふ!」


 マーガリンたっぷりのトーストを口にくわえ、あたしは玄関へと急ぐ。


「だってぇ、お母さんだって朝は弱いんだものぉ~。あっ、マナちゃん~、食べながらなんて、はしたないわよぉ~」

「ふぇも、ひょうがないもん!」


 靴を急いで履こうとするけど、焦っているからか、なかなか上手くいかない。


「姉ちゃん、落ち着けよ」


 弟のイサキちゃんが呆れ顔であたしを見てる。

 ふにゃ~。姉としての威厳が~。今さら遅すぎるとは思うけど。

 イサキちゃんは、


「今日は入学式なんだろ~? 初日から遅刻すんなよ? 恥ずかしい」


 なんて言いながら、しかめっ面をしていた。


「わふぁっふぇるよ~。……いっふぇひま~ふ!」


 やっとのことで靴を履き終えたあたしは、急いで玄関を飛び出した。


「ほら~、マナちゃん~。カバン~、忘れたらダメでしょ~?」

「ふにゅ~」


 慌ててお母さんの手からカバンをつかみ取る。


「あとでお母さんたちも行くからねぇ~。マナちゃんの晴れ舞台を、しっかり写真に収めなくっちゃ~。お父さ~ん、私たちも準備しないと~」

「もう僕の準備は終わってるから、あとはユメさんの準備だけだよ」

「あらぁ~、私まだ全然だわ~。大変~」


 ほんとに大変だって思っているのかいないのか、家の中にのそのそと戻るお母さん。

 うん、絶対にあたしの母親だ。間違いない。

 って、ふにゃ~! そんなこと考えてる場合じゃなかった~!


「こんどこふぉ、いっふぇひま~っふ!」


 三度目の行ってきますを口にして、あたしは走り出す。


「あんまり急いで、転ぶなよ」


 イサキちゃんが余計な心配をしてくれる。

 いくらあたしだって、登校中に転ぶなんて、週に一、二回くらいしかないよっ。

 ……余計な心配、じゃないのかも。


 とにかく、今日から高校生。

 心機一転、あたしは頑張るのだ。

 初日から遅刻なんて、絶対にしないんだから!



 ☆☆☆☆☆



 あたしは、綾音愛(あやねまな)。今日から愛美谷(まなびや)学園に入学する高校一年生だ。


 うちは、おっとりなお母さんの(ゆめ)、優しいお父さんの希望(まれみ)、しっかり者な弟の勇気(いさき)、そしてあたしの四人家族。

 明るく笑顔の絶えない楽しい家で、あたしはそんな家族が大好きなのだ。


 今日もいつものように、トーストをくわえて走るあたし。

 目指す愛美谷学園は、結構有名な学校だったりする。


 知ってのとおり、日本では魔法が一般教育に加えられ、普通科の高校であっても、最低限選択授業で勉強することになっている。

 そんな中でも、ここ愛美谷学園は、日本でも有数の魔法科専門の学校。

 家から近かったし、お母さんの母校でもあるので、小さい頃から憧れていた。


 そんな憧れの高校に入学できて、あたしはとても幸せな気分。

 入学式の前日に、胸が高鳴ってなかなか寝つけなかったのだって、当たり前ってもんだよね?


 とはいえ、遅刻はダメ! 今は走らなきゃ!


 あたしは走る走る走る走る転ぶ。

 …………。

 ふにゃ~。膝すりむいたよぉ~。


 でも、あたしは負けない!

 なんの勝ち負けだかわからないけど、素早く立ち上がってあたしは愛美谷学園の正門をくぐる。

 そして門をくぐると同時に、予鈴が鳴り響いた。


 ふ~、間に合った~。


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