役立たずと見做されてパーティーから追放された聖女に元仲間が助けを求めに来た件
「お前は突っ立っているだけで役に立たないし、パーティーから追放する!」
パーティーの最後列にいた聖女エディラ・リメスに勇者はいきなりそう告げた。場所はダンジョンの第三層辺りだった。
「は? 役立たず? 私が?」
聖女エディラは思わず勇者を見つめる。剣士や武道家もそうだと言わんばかりに頷いている。
「前線でモンスターと戦うのは俺たちだけで、お前は何もしてないじゃないか」
「私は後方でサポートを……」
「言い訳なんて聞きたくない。お前がいても足手まといにしかならん。ここから先は俺たちだけで行く。お前はもう帰れ」
勇者は先ほどまで歩いていたルートを指差し、聖女エディラに向かって追い払う仕草をする。
呆然とする聖女エディラを尻目に、勇者たちはダンジョンの奥深くへと進んでいった。
聖女エディラは何もダンジョン内でパーティー追放しなくてもいいのに、と内心で呆れた。
「……ただ突っ立っているだけのはずがないでしょうが。ちゃんとサポートしていたのに」
聖女エディラは目尻を拭い、ため息をついた。聖女の加護でモンスターの攻撃から守っていたし、勇者たちの潜在能力を引き出して攻撃力も上げていた。
そんなことにも気付かないなんて、勇者たちがここまで馬鹿だとは思わなかった。
聖女エディラは軽く首を振ると、踵を返し、ダンジョンの出口へと向かい始めた。ダンジョン内の薄暗さが今の心境を表しているかのようだった。
『ぎゃあああ!』
背後から勇者たちの悲鳴が聞こえ、聖女エディラは思わず足を止めた。
後ろを振り返ると、血相を変えた勇者たちがこちらに走ってくるのが見えた。モンスターの攻撃を食らったらしく、勇者は右肘から先を失っていた。剣士は左肩を抉り取られ、武道家は左腕がなかった。三人とも重症だった。
「た、助けてくれ!」
勇者は左腕を伸ばし、聖女エディラに救いを求める目を向けた。
その後ろから、緑色の鱗に覆われ、鋭い爪を持ち、尻尾の先が刃と化したモンスターが追いかけてきていた。
「……私は役立たずなんでしょ? 助けることなんてできないわ」
聖女エディラは首を横に振り、勇者に救いの手を差し伸べるのを拒否した。あれだけ出血していれば、どうせ助からない。
そもそもサポートに特化しているだけで、戦闘に向いてはいないのだ。
『は、薄情な奴め!』
勇者たちは聖女エディラを睨み付けてきた。パーティーから追放した奴らに言われたくない。
『く、来るな!』
追いついたモンスターは鋭い爪と尻尾の刃で、勇者たちを無惨に引き裂いていく。その光景を聖女エディラは無言で見つめていた。
「ざまぁみろ」
聖女エディラはポツリと呟くと、こちらに向かってくるモンスターを光の結界で閉じ込めた。
「グルルル!」
唸り声をあげるモンスターを圧縮した光の結界で押し潰す。結界はモンスターの血と肉片で汚れる。
ついでに勇者たちの死体も押し潰し、聖女エディラは再びダンジョンの奥深くへと向かった。勇者たちが亡くなったことで、ダンジョンの出口に戻る必要はなくなった。
ほんの数時間で最下層に到達し、聖女エディラはダンジョンを制覇した。
「……私ってソロの方が向いていたんだ」
聖女エディラは最下層のボスモンスターの亡骸を前に、感慨深く呟いた。
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