1-3: その時、二人の大輔
――脳内、二人の大輔が本気で会議していた。
夜のフェルミナ村は静かだった。
村外れの草地へ向かう俺の後ろから、ベルトンとミリアがついてくる。
外見は一人の男。
だが内側には、
Real大輔(理性・冷静・社会人)
Otaku大輔(妄想・衝動・必殺技大好き)
この二人が常駐していた。
ベルトンが手のひらに小さな火を生んだ。
ぽっ。
Otaku大輔
> 「うおおおおお!ファイアだぞ!?初級魔法だぞ!?
あの“ポッ”って火が全ての始まりなんだよ!?
伝説はここからだよ!? 撃とうぜ早く!!」
Real大輔
> 「落ち着け。見ろ、火力はライターだ。
生活魔術として合理的だ。
ここでテンション上げるのは不必要だ。」
Otaku大輔がバタバタ暴れる。
脳内なのに足音がうるさい。
Otaku大輔
> 「ライターでもいいんだよ!原点なんだよ!
ここから“ドーン!”ってなるのが異世界物なんだよ!」
Real大輔
> 「ならない。
お前みたいな危険思想を採用したら村が燃える。」
俺の体は冷静に観察しているが、
内側では既に取っ組み合いが始まっていた。
「イメージが大事だ」とベルトンが言った瞬間――
Otaku大輔
> 「聞いたか!?イメージが大事!
つまり、“こう撃ちたいと思った攻撃が出る世界”キターーーッ!!
二次元理論、公式採用!!」
Real大輔
> 「勝手に採用するな。
“火が飛ぶイメージ”と“お前の厨二イメージ”は違う。
落ち着け。大事故になる。」
Otaku大輔
> 「むしろ事故らせてくれ!!!」
Real大輔
> 「やめろ」
俺が深呼吸すると、
二人は脳内で儀式のように向かい合った。
Real大輔
> 「いいか、腹に熱があると思えと言われた。
その程度でいいんだ。極めて控えめにいくぞ。」
Otaku大輔
> 「了解ッ……と言うと思ったか!?
俺のターン!!
“圧縮チャージショット:指から超火力ビーム”
このイメージで行かせていただきます!!」
Real大輔
> 「やめろバカ!!!」
Otaku大輔
> 「よっしゃ撃つ!!
《ファイア》!!」
Real大輔
> 「ストーーーーッ――」
ボンッ
ドゴォォォォォォンッ!!!
地響き。
爆風。
視界白。
結果、直径1kmの荒野が生まれた。
そして脳内。
Real大輔
> 「……お前のせいだ。」
Otaku大輔
> 「これぞ異世界!最高!!!」
Real大輔
> 「俺は絶対にお前を制御する。」
Otaku大輔
> 「無理無理。こういう世界、俺の方が強い。
“妄想が現実化する”とか、完全に俺の土俵。」
Real大輔
> 「くそ……認めざるを得ない。」
ミリアは口を開けたまま固まり、
ベルトンは震えていた。
外側の俺は落ち着いて言う。
「……すまない、出力を抑えられなかったらしい」
しかし内側は大騒ぎである。
Real大輔
> 「お前の“抑え”の概念どこ行った!」
Otaku大輔
> 「イメージ通りに出ただけだ!
この世界が悪い!」
外と内が一致しない。
だが外の俺はあくまで冷静を装った。
ベルトンが恐る恐る聞く。
「冴島……お前、本当に魔術師じゃないのか……?」
俺は静かに答える。
「知らない。ただ、言われた通りにしただけだ」
その裏では――
Real大輔
> 「人のせいにするな」
Otaku大輔
> 「いやベルトンの『イメージが大事』が悪い。
俺のイメージが最強なんだから仕方ない。」
Real大輔
> 「……否定はできないのが悔しい」
外の顔は礼儀正しい大人、
内側は漫才コンビのようだった。
「ベルトン、魔術のことをもっと教えてくれ」
内側では二人の大輔が握手していた。
Real大輔
> 「制御しないと危険すぎる。」
Otaku大輔
> 「もっと面白い技を作れる予感しかしない!!」
Real大輔
> 「……最低限、制御しろよ?」
Otaku大輔
> 「任せろ(制御するとは言っていない)」
Real大輔
> 「やめてくれ頼むから!!」
外側の俺は静かに微笑んだ。
「俺は、この世界の魔術を“解析”したい」
そう口にした時、
内側の二人は――
Real大輔
> 「人生の安全のために。」
Otaku大輔
> 「ロマンのために!!」
理由は違えど、目的は同じだった。




