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最強魔術師無双〜二次元妄想理論がガチで発動した件〜  作者: 北風
第1章 コース名 炎の皿〜森の香りと黒い角を添えて〜

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1-30: 俺は鍋で村を救う

鉄鍋が鳴っている。

肉の脂が跳ねる音。

火が唸り、煙が踊り、香りが村を満たす。


今夜は――戦場だ。


料理人の戦場は剣じゃない。

鍋だ。


獣の群れを倒すのは戦士の役目。

だが、倒れた獣を“命にする”のが料理人の役目だ。


それを履き違える奴は、肉を切るな。

火に触るな。

命に触る資格がねえ。




今日の肉は、命そのものだ。


昨日、鹿の群れが村を殺す寸前だった。

畑も家畜も――子どもも、襲われていたかもしれない。


だが今、ここにあるのは

綺麗な鹿肉だ。


血が出てない。

傷がない。

心臓に小さな穴が開いてるだけ。


「信じられねぇ……本当に魔法か?」


肉を触るたびに、震える。

三十年料理してきた手が震えるってことは、

これは“事件”だ。


命を奪った技でも、

命を痛めていない。


これはもう、戦いじゃない。

食材の誕生だ。




肉を切る。

筋に沿って、包丁を滑らせる。

指先は震えて、眼の奥が熱い。


「こんな肉……俺は知らねぇ」


柔らかいのに、弾力がある。

旨味の匂いが濃い。

筋が繊細に走って、舌の中でほどける。


こんな肉があるのか?


昨日まで“災害”だった鹿が、

“恵み”になってる。


それを作ったのは――

冴島大輔。


あの男は戦士でも、魔術師でもない。

飯のために戦った。


ふざけてるのに、本気だ。

笑ってるのに、目が真剣だ。


“飯がなくなるのは困る”――か。


その言葉で、俺は泣いた。




シチュー鍋をかき混ぜる。

野菜を入れる。

骨を煮込む。

香草を乗せる。


香りが爆発する。


「ミリア――味見しろ」


娘がスプーンを入れ、目を閉じる。

ゆっくり噛む。

飲み込む。

目が開く。


「……お父さんの味だ」


その一言で、胸が潰れそうになる。


これが――料理人の役割だ。

不安を安心に変える味を作る。

恐怖を笑いに変える味を作る。


俺は“戦えない”。

魔術は撃てない。

鹿になぎ倒される。


でも――

この村で、一番強い味は俺が作れる。


それで充分だ。




焚き火の前で肉が焼ける。

油が滴り、炎が舌を出す。


「裏返せ!」

「串増やせ!」

「塩足りてるか!」

「焦がすな!!」


村人が走る。

子供が笑う。

大人が手伝う。


火の前は戦争だ。

だが、これは“良い戦争”。


誰も死なない。

誰も泣かない。

肉を焼いて、酒を飲んで、笑って――

未来を決める戦いだ。




広場の真ん中で、大輔が立ってる。

鹿肉の串を食いながら、星を見ている。


英雄の顔じゃねぇ。

ただの、飯好きの顔だ。


俺は叫んだ。


「おい!大輔!!」


彼が振り返る。


「お前のおかげで――

俺は最高の料理を作れた!!」


大輔は笑った。


> 「俺は獲っただけだ。

 作ったのはベルトンさんだろ」




違う。


「あんたが獲ったのは――

肉じゃない。村の未来だ。

俺は……その未来を、味にしただけだ」


言葉が止まらなくなる。


「俺は料理人だ。

戦士じゃない。

魔術師でもない。

でも――

旨い飯で人を救えるなら、それでいい。」


大輔は困った顔をして、酒を飲んだ。


> 「飯で救えるなら、それが一番いい」




その瞬間、涙が溢れた。


ミリアが手を握る。

娘の手は温かい。

焚き火が赤く揺れる。

角が光る。

村が笑ってる。


こんな夜を――

俺は一生求めてきた。




宴が続く。

酒が回る。

歌が響く。


俺は火の前に立ち、

明日の肉を仕込む。


祭りが終わっても、

村の生活は続くからな。


大輔が横に来た。

真顔で言う。


> 「明日も飯を食わせてくれ」




笑える。

こんな最高な依頼あるか?


「当たり前だ。

俺の料理で、この村を生かす。」


夜空に火が弾ける。


この村には――

祭が生まれた。

文化が生まれた。

未来が生まれた。


それを作ったのは英雄じゃない。

飯を作る人間だ。


だから、俺は胸を張って言える。


> “俺は料理人だ”


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