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最強魔術師無双〜二次元妄想理論がガチで発動した件〜  作者: 北風
第1章 コース名 炎の皿〜森の香りと黒い角を添えて〜

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17/32

1-16: 科学と二次元は、今日も腹を満たす

フェルミナ村の朝は、空が高い。

森の輪郭がくっきり見えて、鳥の声が遠く響く。

村は静かだが、大輔の脳内だけは毎日が戦場だ。


「本日も晴天なり!」


声に出してみると、なんだか冒険者っぽい。

気分だけでも一人称視点の勇者。

実際は――飯のために戦う大魔道士(自称)だ。


今日はギルドへ向かう足取りが軽い。

理由は一つ。


> 新必殺技ができた。




しかも、名付けまで完了している。


> 《ライトニング・バレット》




――厨二病?

違う。

“理論名”だ。

(本人は本気で言っている)




ギルドの扉を押すと、受付嬢――アリサが顔を上げた。


「おはようございます、大輔さん」


もう敬語ではない。

最近は――


「アリサちゃん!」


大輔が満面の笑顔でそう呼ぶと、アリサはピクリと肩を震わせた。


「……ちゃん付け、定着しましたね……」


嫌じゃない。

むしろちょっと面倒くさいけど、嫌じゃない。

アリサはそういう顔をするようになっていた。


大輔はカウンターに身を乗り出して言った。


「今日も美味しそうな討伐、ある?」


依頼を探す基準がおかしい。

普通は「安全」「報酬」「難易度」だ。

大輔は――


> 「美味いか?」




そこ一点。


アリサは資料をめくりながら答える。


「はい、ありますよ。

ただ……今日のおすすめは、“ちょっと危ない”です」


「危ないってどのくらい?」


「ベルトンさんが泣くくらいです」


「あ、それはやめとこう」


判断基準が独特だ。

ベルトンが泣く=看板食材消滅

この村では、そういう方程式が通用する。




アリサが資料を整えて言う。


「で、今日は……どうしてそんなにやる気なんですか?」


大輔の目が輝いた。


「聞いて驚け。新スキルだ」


「……嫌な予感しかしないんですが」


「《ライトニング・バレット》。雷魔術だ」


雷。

この世界では、上級魔術の一角。

扱いを誤れば即死案件。

アリサは慌てて声を潜める。


「雷って……扱えるんですか!?大輔さん、魔力少――」


「任せろ。理論がある」


アリサは知っている。

大輔の「理論」は、

“二次元+科学=理論”という意味だ。

二次元も科学も理解できないが、おそらくとんでもなく危ない思考であることは確かだろう。


大輔は語り出した。


「まず、土魔法で微粒子を作る。

次に風魔法で高速回転させる。

摩擦で静電気を蓄積して電荷を作る。

そこに圧縮した水滴を通せば、誘導放電で貫く」


アリサの思考は止まった。


「……難しく聞こえますけど、要するに……?」


大輔は胸を張る。


> 「要はイメージだ!」




科学者と厨二病の境界線が消えた瞬間。

この男は本気で言っている。


「電気が一瞬で集まるイメージと、水滴を高速射出するイメージさえできれば、弾丸は生まれる。

万が一貫通しなくても、電流で心臓止められる。最悪、痺れで動けない」


アリサは気圧されつつ答えた。


「……戦いの説明じゃないですよね?それ。

完全に“料理の下処理の話”みたいです」


「命は素材」


「言い方どうにかなりませんか!?」




大輔は身を乗り出す。


「で、アリサちゃん。今日の“美味い素材”は?」


アリサは深く息をついて、資料を指で弾く。


「今日なら……この三つ」


紙に書かれた魔獣名は――


“ストライプ・ホーンディア”


“アカガネ・ロックビートル”


“ファイア・スラッグ”



「どれも美味しいと評判です。

ただし、どれも“難しい”です」


大輔は即答した。


「美味いなら行く」


アリサは頭を抱えた。

この人は、命に関する基準が“味”だけだ。




大輔は立ち上がり、指を拳銃の形に構える。


「今日は雷だ。二次元が現実になる日だ!」


アリサは言う。


「お願いですから、村ごと消し飛ばすのはやめてくださいね!?」


大輔は振り返り、真顔で言った。


> 「大丈夫。ベルトンさんが泣くことはしない」




それはこの村で、

一番“安全宣言”になる言葉だった。


――ライトニング・バレット。

今日、森に雷が落ちる。

理由は――ただ一つ。


> “美味い朝飯のため”だ。


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