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最強魔術師無双〜二次元妄想理論がガチで発動した件〜  作者: 北風
第1章 コース名 炎の皿〜森の香りと黒い角を添えて〜

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12/31

1-11: 最近のシチューには秘密がある

―――ミリアのごちそう日記


最近、ローデ亭のシチューが前よりずっと美味しい。

理由は簡単で、ダイスケさんがホーンラビットをたくさん取ってきてくれるからだ。


ホーンラビットは、小さいのに肉の味が濃い。

角のあたりは硬いけど、肩の部分は煮込むとほろほろになる。

パパは「骨の近くが一番旨いんだ」と言う。


ダイスケさんは、いつも成果の半分をパパに渡している。

報酬を全部持って行ってもいいはずなのに、半分くれる。

理由を聞いたら、


> 「訓練させてもらってるお礼だから」




と言った。


つまり、村のために魔術の練習をして、その結果でシチューが美味しくなっている。

何だか、ちょっとすごいことだと思う。




魔術と言えば――ダイスケさんの魔術は、本当に魔術なのか、よく分からない。


だって、詠唱もしないし、杖も持ってないし、魔力の光も出ない。

ただ、指を向けて「タン!」ってするだけ。

本当にそれだけ。


その瞬間、ホーンラビットが「バタン」と倒れる。

矢も飛んでないし、魔術の風も感じない。

でも倒れている。


私は、あまり怖いと思わない。

理由は単純で――そのおかげでご飯があるからだ。


パパは言う。


> 「あれは残す魔法だ」




どういう意味か分からないけど、“消し飛ばす魔法”ではないのは分かる。

昔、森が丸ごとなくなった時は、本当に泣きそうになった。


いや、泣いた。

パパも泣いた。

ダイスケさんも泣いた。

三人で泣いてたのは、今思えば少し面白い。


あの時のシチューは、本当に美味しかったから。




それからダイスケさんは、魔術の力を小さくして、一点だけを壊す練習をしている。

ホーンラビットは速いから、その練習に合っているらしい。

魔術というより、“狙い撃ち”って感じ。


戦っているところを見ると、全部一瞬で終わる。

走っていたウサギが、いきなり静かになる。

音は小さくて、風が少し揺れただけ。


だけど、角も毛皮も傷ついてない。

素材屋のカナトさんは、


> 「あれは職人技だ」




と言っていた。

魔術を“職人技”と言う人は初めて見た。


私は、あれが魔術なのかはどうでもいい。

大事なのは、料理になることだ。




今日のシチューは特に美味しかった。


パパが小さな声で言った。


> 「素材がよくなったから、味も変わる」




それって、ダイスケさんのおかげだ。

訓練と生活が繋がって、結果が料理になって、みんなの笑顔になる。


私は日記に書きながら思う。


> “魔術って、人を助けるものなんだ”




派手に戦ったり、火の玉を飛ばしたり、そういうのだけが魔術じゃない。

今日のご飯を作るために使える魔術もある。

少しずつ、それが分かってきた。




でもやっぱり、気になっていることがある。


ダイスケさんに聞いたことがある。


> 「なんの魔術が得意なんですか?」




そしたら、ちょっと困った顔で笑った。


> 「……内緒かな」




秘密らしい。

もしかしたら、本当はすごい魔術師なのかもしれない。


でも私はそれより――

“明日もシチューが食べられる”ことの方が嬉しい。


だから、魔術の秘密は後で良いと思う。




今日のシチューは、肉がほろっとして、野菜が甘くて、スープが少し白い。

スプーンを口に入れると、全部がふわっと混ざる味がした。


明日も、きっと美味しい。


それでいい。


――ミリア


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