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操り人形からの脱却

「呪いの装備をあと三つ集めるぞ」


突拍子もなく告げられた言葉、嫌な予感しかしない


「前にも言ったように呪いの装備はつけると外れなくなりHPが半分になる、そしてその効果は重複するんだ、つまりあと三つ全部で四つの呪いの装備を身に着ければHPは16分の1にになる、お前のHPは12だから四つの呪いの装備をつければHPは1になる」


「お前の『まだ戦える』の効果はHPが満タン状態の時、どんな攻撃を受けてもHP1で耐える能力だ、ここまで言えばもう分かるな、あと三つ呪いの装備を集めればお前はそもそもダメージを受けない身体になる今度こそ完全な無敵になれるってわけだ」


正直言ってめんどくさい、ある程度は慣れたが呪いの装備を身に着けると吐き気と頭痛に襲われる、一つ装備しただけでも体温は39度を超える、それをあと三つも装備するなんて・・・気が重い


「じゃあ今日も配信始めるのでよろしくお願いします」


小川は最近、動画投稿というものを始めた、なんでも俺のようにゲームの中の存在でありながら自我を持ち意思疎通を図れる存在は唯一無二らしい、人とは珍しいもの惹かれる生き物、俺という存在を使って金稼ぎをしようとしたのだ、初めのうちは編集なのではないかと疑われたようだが配信つまり生放送であまりにも俺が流暢に喋るものだから疑いは晴れ今では多くの人間が俺のことを認知している


最初は見世物になることに不満を持ったが配信を始めたことによって俺の人生に転機が訪れた


「分かってるだろうな、俺がここで放送禁止用語を言いまくれば垢BANになるんだろ」


配信を始めてすぐに気づいた、小川の口調がやけにきれいになっていることに、違和感を感じ配信やネットについて色々と聞き出し俺は小川が恐れる垢BANや炎上について知った、今や操られるだけの存在ではなくなったのだ


「ええですから次の町でVIPルームを用意します」


宿屋には普通の部屋とVIPルームの二種類の部屋がある、普通の部屋はHPとMPを回復するだけだがVIPルームは一時的にステータスを上昇させる効果がある、今までは俺のステータスを上昇させる意味があまりなかったため普通の部屋に泊まっていたが、脅しの結果俺はVIPルームを手に入れた、この冒険において唯一の楽しみだ


「じゃあまずは『ノワールウィッチ』を倒して『幻惑の法衣』を手に入れる」


知らない天井を見つめながら話を聞く、傷も痛みも精神的な負担も全部包み込んでくれる、このベットにはそれほど大きな力がある


「『ノワールウィッチ』は一ターンに二回行動する、今までの戦い方では瞬殺される、そこで技能開放で習得してほしい能力が二つある一つは『反射魔方陣』もう一つは『当たらなければどうということはない』だ」


言われた通りに能力を習得する、そのまま能力の詳細も聞かずに二度寝する、目を覚ますとすぐに『ノワールウィッチ』のいる『湿地の森』に向かう、道中にあった教会で俺は呪いを解き『セキ化面』を外した


「あれ、なんで呪い解いたの?」


「やっぱり聞いてなかったか」


小川がため息をつく


「じゃあもう一度説明するぞ、『ノワールウィッチ』は一ターンに二回行動する、だが9割9分魔法しか使わない、だから三ターンの間魔法攻撃を跳ね返す『反射魔方陣』を使う」


「なるほど・・・でも俺のスピードじゃあ確実に先手取られるぞ、最初のターンや『反射魔方陣』をかけ直すときはどうするんだ」


「そこでもう一つの能力『当たらなければどうということはない』だ、これは防具を装備しないことで回避率を上げる能力だ」


なるほどつまり、


「よけろ、よけろ、よけろ、よけろ」


「かわせ、かわせ、かわせ、かわせ」


目の前にいる黒装束の魔女が杖を振る、魔方陣が出現しそこから燃え盛る火炎が召喚された、あたりの木々を燃やしながら近づいてくる、全身の水分が蒸発し不思議と熱さは感じなかった、感じる暇もなく俺は死んだのだ


その後も挑み続けたが、沼地に引きずり込まれ生きたまま埋葬されたり、全身を氷漬けにされたのちバラバラに砕かれたり、風の刃に切り刻まれたり、とにかく何度も死を繰り返した


「いい加減にしろよ、俺は別に今すぐ下ネタ言ってお前のチャンネル終わらせてもいいんだぞ」


「マジでやめてくれ、つかこれ以外に突破方法ないんだって」


とはいえ本当にこれで倒せるのか?今までの挑戦でも攻撃をかわすことは何度かあった、だが一度かわすだけでは足りない、『反射魔方陣』を張り直す度にかわさなければならない、倒しきるまで一切油断できない、気の遠くなるような挑戦だ


なんだかんだ言いつつも六十七回目の挑戦、すぐに『反射魔方陣』の準備をする、しかしやはり相手の方が早い、魔女が杖を振る雨雲が広がり雷が落ちる、子供のころみた雷は光ってから数秒後に音が聞こえたそのときの俺は光速と音速の速度の違いを理解しておらず、光と音のずれを不思議に思っていた、しかし今は目の前を光が満たすと同時に轟音が鳴り響く、これはまさにこの場所が落雷の中心であることを意味する


鳴り響く轟音によって耳はまともに機能しない、視界を光が埋め尽くしそれ以外なにも見えない、全身を焦がすような熱と突き刺すような痛み、一発だけなら耐えられるしかし次はない、視界から光が消え魔女の姿を視認した時にはもう次の攻撃を準備していた


魔方陣から火炎が召喚される、俺は走り回りながら外すことを祈る、魔女は俺の一歩先を狙って火炎を放つ、このまま走れば直撃する、俺は足を地面に押し付け踏みとどまろうとする、湿った地面に足を滑らせその場でしりもちをつく、だがおかげで火炎は俺の目の前を通過した


すぐに立ち上がり『反射魔方陣』を使う、これでようやくスタートラインだ

魔女は氷で槍を作りこちらへ飛ばす、しかしその槍は俺に届くことなく跳ね返され魔女の身体を突き刺した、その後も繰り出される数々の魔法を全て跳ね返し着々とダメージを与えていった、だが問題はここからだ『反射魔方陣』の効果が切れる度さっきのように攻撃を避ける必要がある


どうしようかと考えてると『反射魔方陣』の効果が切れた、体勢を低くし攻撃に備える、魔女が杖を振ると同時に俺は走りだす、先程まで俺のいた場所に竜巻が発生した、少しずつだが避けるのに慣れてきた杖の動きを見れば攻撃のタイミングが読める


その後もなんとか攻撃を避け続けた

火炎がこちらに向かってくる、しかし俺の目の前で止まり火炎を発生させた張本人の所へ帰っていく、自身の炎に焼かれ悶える魔女、隙だらけのその首を剣で刈り取る、魔女の頭は宙を舞い地面に転がり泥だらけになった、ようやく魔女を倒せた、肩の力が抜け地面に座り込む


「ふぅ~終わったー」


「おつかれー」


その日はまたVIPルームで休息をとった、この時間のために生きているといっても過言じゃない、あっという間に俺は眠りについた、そして次の日俺は『赤鼻ピエロ』という雑魚モンスターを倒していた、このモンスターが低確率でドロップする『道化のピアス』という呪いの装備を手に入れるために、まあ油断こそできないが所詮はそこらへんに出てくる雑魚モンスター、時間こそかかったが対して苦労もせず『道化のピアス』を手に入れることができた


「よし、いよいよ次で揃う、次の呪いの装備は『邪神の剣』攻撃力だけならこのゲームで一番高い装備だ、ここから東にある強運の町『ラスべゲス』で手に入れられる」


『邪神の剣』名前からして相当強い武器だとわかる、一体どうやって手に入れるのだろうか思わず息を吞む、数分後、俺の目の前には7が三つ揃っていた


「よっしゃー!確変突入」


珍しく小川のテンションが高い、それもそのはず俺は今カジノにきてスロットを回している、小川は生粋のパチンカスなのだ、小川いわく現実のスロットはろくに当たらないけどゲームの中じゃアホみたいに当たるから気持ちいらしい、世界の希望である勇者がこんなことしてていいのだろうか


それにしてもさっきから当たりすぎだろ、たった数分で俺は五百枚あったカジノコインを三千枚にまで増やしている、この調子じゃ一時間もたたずに『邪神の剣』が手に入るぞ


「ていうかなんで『邪神の剣』とかいう大層な名前の剣がカジノの景品になってんだよ」


数十分後、俺はカジノコインを二万六千枚集めて『邪神の剣』と交換した


「絶対に赤字だぜこのカジノ」


何はともあれようやく四つの呪いの装備を手に入れた俺は早速すべての呪いの装備を身に着けた、生命力は極限まで搾り取られ足はブルブルと震える、身体から湯気が出るほど体温は上昇し視界は歪む、もはや生きているのが奇跡と言えるぐらいの苦痛を感じるが、これでようやく俺は無敵となった


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