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自分の行動に責任を持たなきゃいけないなんて理不尽だ


メトロイヤ王国

最初の町を出て西にずっと進んだ場所にある王国だ。

俺はとりあえず国王に挨拶しに王城へ向かったのだが


「こんなどこの馬の骨とも知れん奴が勇者とは絶望だな」


思えば王の話をちゃんと聞くのはこれが初めてだな。

なんでもこのゲームにはボイスが付いてるらしく、小川はこの王の声優のファンらしい。

確かに聞き心地の良い重低音に色気を感じるが、


「覇気どころか生気も感じぬもやしの如きガキにできることなどない、国に帰るが良い」


それにしても酷い言われようだ。


「そんなことはありません、クリオネ様は立派な方です」


急に背後から聞こえた声に思わず振り返る。

しかしそこには誰もいない、だが間違いなくこの声はこの何もない空間から聞えてくる。


「クリオネ様は強くてたくましい方です、あなたにそんな風に言われる筋合いはありません」


一体何がどうなってるんだ


「説明しろ小川」


「ここは元々主人公を貶す王にメアリーがきれるシーンなんだけどメアリーを仲間にしなくてもセリフは

残ったままになってるんだよ、そのせいでいないやつが喋るっていうバグだな」

「ははっ、配信で見たことあったけど直接見るのは初めてだ」


もはや何でもありだなこの世界、王も青ざめた顔してるよ


「何度でも言ってやる、お前のような燃えカス同然のろうそくではなにも照らせない、勇者とは未来を照らす希望なのだ、私はお前に希望を見いだせない」


「クリオネ様は誠実で優しいお方なんです、この分からず屋」


お前に俺の何が分かるってんだよメアリー、だいたいさっきから内容薄いんだよ。ボキャブラリーで完全敗北してんの、頼むからこれ以上話をこじらせないでくれ。


「まあ、彼女の中では共に旅をして絆を育んできたつもりなんだよきっと」


その後もメアリーが低レベルな擁護を続けるせいで俺は王からありとあらゆる罵詈雑言を浴びせられる羽目になった、だがいつまでも食い下がるメアリーにさすがの王もしびれを切らしたようだ。


「そこまで言うのならここからさらに西にある『高台の遺跡』を縄張りとするメタルゴーレムを倒してみるがいい、見事倒したらその時は貴様を真の勇者と認めよう」


ようやく解放された、別に認められなくてもいいのだが

なんにせよそのメタルゴーレムを倒せばいいわけだ、俺は早速『高台の遺跡』に向かおうとしたのだが


「今のお前じゃ、勝てないだろうな」


なにいってんだこいつ、今の俺が勝てないならいつまでたっても勝てないぞ、レベル上がらねぇからこれ以上強くならないんだし。


「じゃあどうすんだよ」


「妖精の剣を手に入れる」


いわく『メタルゴーレム』は防御力が高く、今の俺では『ドレインアタック』で全回復するのに必要なダメージを与えれないらしい。ゆえに現状手に入る武器の中で最も攻撃力の高い『妖精の剣』が欲しいとのことだ。


『妖精の剣』はこの国の武器屋に一万二千ゴールドで売ってるらしい。

現在の所持金は銀行に預けてる分も含めて約二千ゴールド、つまり足りない一万ゴールドを稼ぐのが当面の目標だ。


メトロイヤ王国の城下町、多くの商人が足を運び物流が盛んなこの国で他人の家に土足で上がりつぼを割りタンスを開け金目の物を根こそぎかっぱらっていく不届きものがいた、そう俺だ。この国の王は正しかった、こんなやつを勇者と認めるなんてどう考えても間違っている。


だが、もちろんこれは俺の意思ではない、身体が勝手に動くだけ、ゆえに俺は悪くないのだ。初めの頃はこの非道な行いに罪悪感を感じ心を痛めたが、自由どころか人権すらもないような俺に義務を果たすことを求めるのが間違いなのだ。だから俺は今後一切、自分の行動に責任を持たないと決めたのである。


「やっぱこれじゃあ全然足りねえな」


「じゃあどうするんだ」


「サブクエ受けるか」


サブクエ (サブクエスト)困っている人の依頼を受け手助けすることで報酬を得られる。

おれは街の端にある、畑に足を運んだ。


「う~ん、困ったべ」


困った様子の老婆がいた、とりあえず声をかけてみる。


「なん」

「うっ」

「この」


やめろ、ボタン連打するな、なんにも聞けなかったじゃねぇか。

だがもうこれにも慣れたな、表情を見れば最初の何文字かだけでもなんとなく言いたいことが分かるようになった。おそらくうっかり肥料を切らしてしまいこのままでは野菜が育たないと言っている。


「どうすればいいんだ」


「肥料の代わりになるものを持ってくる」


肥料の代わり、嫌な予感がする。

予感は的中した、俺の身体が向かった場所には馬の糞が落ちていた。


「これ、拾うんすか」


「そうだ、さっさと拾え」


なんということだ、盗みという犯罪に手を染めた上に物理的にも手を汚す羽目になるとは、嘆いてる間にもこの身体は流れるように他人の家に侵入し当然のごとくタンスを開けた。


「なんでタンスの中に馬の糞があるんだよ」


「知るか、製作者に聞け」


そうして俺は一つサブクエをクリアした。だがまだ目標金額には届かない、というわけでもう一つサブクエを受けることになった。


建物と建物の間の空間から向かいの住宅の窓を望遠鏡で眺める男の姿がそこにはあった、背後から忍び寄り声を掛ける。


「ひぃえ、べべべ別にのぞきなんてしてないんだからね」


ツンデレってもごまかせねぇよ変態、こんな奴の依頼を受けるのかよ。思わずため息をついたがごねたところで何も変わらない、仕方がないのでとりあえず話を聞いてみる。


「あの」

「けど」

「かの」


今回に限ってはナイスボタン連打だ、こんな奴の声なんて聞きたくないからな。こいつの顔からは下衆な考えが透けて見える。案の定こいつの依頼はのぞいてた家に住んでる女性が気になっているので彼女の私物が欲しいというものだった。まったく勇者として魔物より先に駆除するべき害虫だろこいつ。


「はあ~」


いつものように正面玄関から堂々と中に入る。階段を上り手前の部屋に入る、そこには黒髪で物静かな女性がベットに腰かけていた。この人があいつの言っていた女性だな、彼女と目が合ったが気にせず部屋のなかに入りクローゼットを開ける。適当な服を持っていこうと思ったがそこには下着しかなかった。振り返らずとも彼女がこちらを見ているのが分かる、とても視線が痛い。


「本当に持ってきてくれたんだ、ありがとう」


そう言って下卑た笑みを浮かべるこいつの顔面を殴ってやりたい。

だがこれでようやく目標金額にとどいた、一息ついて早速『妖精の剣』を買いに行こうとした矢先、後ろからこえが聞こえた。


「なにしてるの!!」


振り返るとさっきの女性が血相を変えてこちらを見ている。何してるのってあんた一部始終を見てただろうに、彼女はこちらを睨みながら近づいてきた、そして隣でオロオロする男の顔面に強烈なビンタを食らわせた。胸がスカッとするのを感じた、彼女はこんどはこちらを向き俺の鼻先めがけて強烈なパンチを繰り出した。膝から崩れ落ちる俺、彼女は何も言わずその場から立ち去った。


「くそ、なんで俺まで殴られなきゃ・・・いや殴られて当然だったわ」


けどなんでこいつがビンタで俺はグーパンなんだよ、確かに実行犯だけど、けど俺だってやりたくてやったわけじゃないのに、不満を漏らさずにはいられなかった。


「なんで俺が罪を犯したからって、おれが罰を受けなきゃいけないんだよ」


「・・・・・」


何言ってるんだ俺は、何はともあれ金は手に入ったので武器屋へと向かう


切っ先は青く光り刀身はやや細く短い持ち手の頭には宝石が埋め込まれている、これが『妖精の剣』か


「これがあればメタルゴーレムも倒せるんだな」


「まだちょっと足りないけど・・・まあ大丈夫」


歯切れの悪い言葉に首をかしげつつも余った金で『魔よけの香水』を買い、俺は『高台の遺跡』へと向かった。『魔よけの香水』は使うと魔物と遭遇しにくくなるアイテムだ、モブ敵を倒したところで俺には経験値が入らないから倒すメリットも少ないうえに複数体出てくると一ターンに複数回攻撃されるので『まだ戦える』と『ドレインアタック』による無敵戦術が効かないので、普通に死ぬリスクもあるのだ。


『高台の遺跡』へとたどり着き中へ入るここまでは順調だ、それもそのはずこの『魔よけの香水』さえあれば滅多にモンスターに襲われることはない。油断する俺の後ろからうなり声が聞こえた。


「ガウルウ~っ」


しまった、そう思った時には野犬のような魔物は俺にかみつこうと飛び掛かってきていた。


まずいやられる!

遺跡の床に赤い血が飛び散る、しかし俺の血ではなかった。ゆかには両断された魔物の姿があった、だが俺は剣を抜いていない。


「ケガはないですか?」


声のする方を見るとそこには、灰色のローブを身にまとった俺より背の低い美少女が立っていた。

血の付いた剣をふき取り鞘に納める、一連の動作ひとつひとつが神秘的に見え俺はその子からめが離せなかった。


ああ、これが一目ぼれってやつか

読んでいただきありがとうございます


「面白い」


とおもったら

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