数百年ぶりの来客
母を亡くしたワタクシは、父に頼るのだけは嫌で。。
かといって、ずっと外の世界とは距離を置いていた生活。
頼れる人も何もなかったわ。
だから、引きこもってやったわ。数百年。
それはそれは、毎日ヒマよ。
することもないので、毎日石像になってしまった方々に名前を付けてお手入れ等をしていましたわ。
でも、ある日洞窟に人間が来たの。
なんで人間ってわかるのって?
普通匂いでわかるでしょ。神とモンスターと人間と蛇。まったく違うわよ。
というか、突然の来客。慌てたわ~。
目を隠すためのレースがどっかいっちゃってて。
でも、初めましての方をいきなり石にしちゃうのは、罪悪感だし。
失礼になるかもだけど、うつむいてお出迎えしたわ。
「なにようだ。。人間。。」
「うわああ~」
ワタクシ、丁寧にお出迎えしたのに驚かせてしまいました。
母が亡くなって数百年。声を出すのも久々だったから、声ガラガラでしたの。
きっとそれだわ。。反省。。
「メデューサだ~~」
男性の声。
うふふ。母の美貌を聞きつけて来たのね。
でももう美しい母はいない。。
ワタクシ、この人間にそれを教えるべきか悩みました。
初めましての方ですし。。でもわざわざ訪ねていただいたので
精一杯丁寧に事情をお話し、お引き取りいただきましょ。
「メデューサはおらぬ。。帰れ。。人間。。」
少し寂しいですが。。石にしてしまうよりは。。
なにより、我が家には母と幼い頃のワタクシがうっかり石にしてしまった方々が
沢山いらっしゃるのでもう居場所もつくれませんし。。
「お前がメデューサじゃないか!」
「か・・・?」
「ん???なんでこんな洞窟に、女の子が??」
私にランプの光を当てながら、その人間は確実にワタクシをまじまじと見てきましたの。
いくらワタクシが大人のレディの体ではないとはいえ、失礼すぎません?
人間の男性よりずっと年齢は大人ですのよ。
「お嬢ちゃん。。1人かい?もしかして・・囚われてるのかい?」
何をおっしゃってるのでしょう?
まず、ワタクシは人間の男性よりはるかに年上ですので、お嬢ちゃんなんて呼ばれる
筋合いはなくってよ。それと、囚われてるという意味が分かりませんわ。
軽く混乱したけど、なにより石にさせるわけにもいきませんので
「人間。。さっさと帰れ。。そして2度と来るな。。」
あらためて、丁寧に帰るよう促しましたの。
やはり、ワタクシも母のような心の綺麗なレディでありたいですから。
「お嬢ちゃん・・わかったよ。おじさんまた来るから。がんばるんだ!」
えっ。。2度とお越しにならないようお伝えしたのに。。
なにがわかったのかしら。。しかも『がんばるんだ!』って。。。
ワタクシ、何かを頑張ってる風に見えてしまったのかしら?
!
声ね!!あまりにもガラガラ声だから、頑張って早く治しなさいってこと?
んもー。あまりにも失礼じゃなくて?
ワタクシ、思わずイラっとしてしまい・・・
顔を上げてしまいました。。
人間を見てしまいましたわ。。。
「お嬢ちゃん・・そんなにボロボロでかわいそうに・・」
そんな事をいいながら、人間が泣いてましたの。
ワタクシと目が合ったのに、石にならない。。
ワタクシ驚きと安堵で。。
倒れました。