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甘々幼馴染に俺は勝てない

俺、吉野悠は昔から苦手な人がいる。

別に嫌いなわけではないがそいつと会うと

気まずいというか緊張するのか複雑な感情が混ざり

うまく対応できないのだ。


平日の朝、高校に行くため

身支度を済ませているとその苦手な者が姿を表れ

俺の頭を図々しく撫でてくる。

「おはよー!悠くん!!」

「………おう、撫でんな」


玄関の扉が開き笑顔で挨拶する幼馴染の高橋春香。

俺は目を逸らして覇気のない返事をすると隣にいた

母親に頭を掴まれてしまう。


「こら!ちゃんと春香ちゃんに挨拶しなさい!」

「あーはいはい………おはよう高橋」

母親に叱られしぶしぶ挨拶をするが

掴んだ手を離してはくれなかった。


「高橋って呼び方何よ?そんな他人行儀で」

「いや………もう高校生だしいつまでも女の子を

名前呼びってさ………恥ずかしいじゃん」


俺の話を聞いて母親は呆れたように溜息をつく。

「恥ずかしいって………あんたは春香ちゃんの大事な

彼氏なんだから堂々としてればいいでしょ」


隣の家同士の関係で幼い頃から長い付き合い

なのもあり、両親は俺と春香が

中学辺りから恋人関係なんだと大きな誤解をしていた。


「か、彼氏じゃねーよ!!それに春香も困るだろ?

俺に下の名前で呼ばれたりしたら学校のみんなが

勘違いしたり噂が広がっていろいろと………」

「………ううん?私は全然構わないよ?」


あっさりと了承しながら微笑む幼馴染を見て

顔が熱くなってしまう。


「なっ!ななな何を言ってんだよ!!」

「こらこらあんた達イチャイチャしてないで

学校行きなさい」

「あっ時間やばい!早く学校行こ、悠くん!!」

「!!」

「えへへ………早く走ろー!」

春香は大胆に俺と手を握ってきて緊張する。

昔からこの幼馴染はやけに距離感が近くていつも元気で騒がしく俺の心は振り回されまくるのであった。


◆◆◆


高校の昼時間になると

隣の席の春香は俺と机を合わせて

昼食用の手作り弁当を2つ鞄から取り出す。

「はい、お弁当」

「おう………サンキュー」

なぜか俺の両親公認で毎日昼は春香が作ってくれて

弁当を二人で食べることになっていた。

これではまるで妻の愛妻弁当に見えてしまう………


「はい、あ~ん」

「じ、自分で食えるから大丈夫だって」

「遠慮しなくていいよ。ほらあ~ん」

「うっ………」

箸で唐揚げを掴み口元まで近づけてくる。

周りのクラスメイト達の熱い視線を感じながら渋々食べると春香は目を輝かせそわそわしている。

「美味しい?」

「うん……めっちゃうまい」

「よかったぁ、明日も美味しく作るね」


自分のことの様に喜ぶ幼馴染の笑顔に俺はつい

ドキドキしてしまい、その俺達の初々しい様子を見てクラスの野次馬達は盛り上がる。


「ヒュー!!熱いねぇ!お二人さん!!」

「見せつけてくれるぜ!」

「やったね高橋さん!」


野次馬達の歓声に春香は照れ臭そうに笑う。

「次は卵焼きだよ、あ〜ん」

「うぐぐ………」

春香の笑顔を見てるととても断り辛く

俺は大人しく口を開くしかない。


「美味しい?」

「うん、うまいぞ………」

この公開プレイは辛いが春香の弁当は

とてもうまいし俺の好みの味に合わせてるのか

日々進化しており毎日美味しいご飯を貰えるため

複雑な気分だった。


「キャーーッ!!二人共素敵〜〜〜」

「見せつけてんじゃね〜ぞ死ね吉野!!」


おかしい………俺はこの幼馴染とはただの友人関係のはずなのに家も学校でも恋人扱いになっている。


このままではいけない、春香の甘々暴走を止めないと俺は高校卒業まで有名なバカップルの見せ物

彼氏君扱いにされてしまう。



◆◆◆


放課後の帰路。

春香と一緒に帰る中、俺は意を決して話すことにした。

「あのさ春香」

「うん何?」

「俺達ってまだ恋人とかじゃないよな?」

「う、うん……」

俺の話を聞き春香は複雑そうな顔をしている様に見えた。


「流石に俺達高校生だし何でも一緒に

行動するのは変だと思うんだ」

「…………」

「だからこれからは別々に帰ろう」

「………え?」

春香は立ち止まり驚いた表情を浮かべる。


「ど、どうして急にそんな事言うの?」

「い、いや!いつまでもこんな関係じゃダメだと思って」

「そっか……」

これでようやく学校でバカップルとして見られなくなると安堵するが彼女は大きく息を吸い込み

真剣な眼差しを俺に向ける。


「分かったよ悠くん!こんな関係の

ままじゃいけないんだよね!」

「へ?」

「すっ、すっ、好きです!付き合ってください」

「はい??」

いきなりの告白に頭が混乱する。


「ど、どうしたんだよ!いきなり!」

「今日で私たちのただの幼馴染の関係を

変えようと思ったから………」

「もしかして今まで距離感が近いのって………」

「うん、悠くんに私の気持ちを知ってもらうためだよ……」


「そりゃそうだよな………高校生にもなって手繋いだりしてたら勘違いもされるし」

「それで悠くんは私のこと好き?」

不安げに見つめる彼女にドキッとする。


「そ、それは……えっと」

考えたことのなかった質問に戸惑ってしまう。

春香は俺にとって腐れ縁の幼馴染だ。


小さい頃からずっと一緒で家族のように育ってきた。

だがそんな彼女のことを異性として意識したことはないのか?自分に問い掛ける。


いやあった、中学の頃からあいつと会うたび

気まずいのか恥ずかしくて目を逸らしたり

ドキドキすることが増えていた。

いつも無邪気で明るい笑顔の彼女を

俺はどう思ってるのか………


「すっ……すまん!!」

うまく考えが纏まらない俺は

明日にでも返事を送らせて貰おうと

続けて口にしようとするが

目の前の幼馴染は今にも泣きそうな顔をしていた。

やばい、完全にフラレたと勘違いしている。


「うっ……ひっ……ぐぅ」

涙を流す春香に俺は焦ってしまい思わず抱き締める。

「ゆ……ゆう……くん?」

「その……すまん!違うんだ!!」

「うん………毎日迷惑かけてごべんね………ううっ」


俺は慌てて春香に謝り慰め様とするが余計

勘違いされている。

今まで見たことのなかった幼馴染の

絶望と涙にとてつもない罪悪感に襲われ心が

重苦しくなる。


やばいやばいやばい!

何でもいいからこの空気を変えようと

俺は急いで口を開く。


「落ち着け!!迷惑なんかじゃねーよ!!

好きだよ春香!!毎日笑顔かわいいし

ご飯うまいし!!昔からお前のことが好きだから!!」

「え?」

「え?」


俺のヤケクソな説得に春香は呆然としている。

遅れて俺が何を言ったか理解し

顔が熱くなって茹で蛸状態だ。


「いっ今のは……」

「嬉しい……」

「!!」

彼女は幸せそうにいつもの笑顔で微笑んで

抱き付いてくる。

「私も大好きだよ、悠くん」


「ああ……ってえぇ!?」

「私達両思いだよね……悠くんのこと中学の時からずっと好きなのに全然気付かないし……鈍感さんで大変だった」


「うっ……」

「でもこれからよろしくね………悠くん」

「ままま、待て、ちがっ……」


「おめでとーー!!」

「お似合いのカップル誕生じゃん!」

「ヒューヒュー!ていうかお前達

まだ付き合ってなかったんかーい!!」


いつの間にか周りには近所のおじさんおばさんに

下校中の学生達と沢山のギャラリーが

集まってきており拍手喝采が巻き起こっていた。

「あぁ……もう俺の学校生活終わった」


「えへへ………これからはもっと恋人らしいことしても大丈夫なんだね」

ずっと俺に抱きついたまま甘えん坊な笑顔の幼馴染。

彼女の微笑みを見て安堵してる

自分の気持ちに気づく。

こいつが嬉しそうならいいか……


その後卒業まで学校や家の近所では

俺達の仲を冷やかす声が絶えなかったが

春香との恋人関係も深まり悪い気分ではなかった。

お読みくださりありがとうございました。

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