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男なら拳で(泣


 スキル、それはこの世界の人間が魔物に対抗するための力。それは、何もない農民が急に歴戦の戦士さながらのように力を払うことのできるものではない。


スキルは保持している人の才覚を後押しする、きっかけに過ぎない。


つまり、俺が何を言いたいかというとスキルがあるから武器は何だって使えると思っていた俺は馬鹿だということ。

ある日興味本位でゴブリンと純粋な剣術勝負をして俺は負けた。


そう、魔物最底辺と言われるゴブリン、いや、敬意を表してこう言おうゴブリンパイセンに俺は負けたのだ。


普通の人間なら、この程度の魔物に剣術で、しかもスキル有りで負けるなんて有り得ない。


だが、俺は負けた。それは何故か!





俺に剣術の才能が無かったからだ!!!






いやね、でもちょっと弁明を聞いて欲しい。言い訳なのは分かってるんだけど、ゴブリンやウルフは基本狩る時は効率を意識して魔法で全部倒しているから、武器なんて基本使わない。

使うとしても、付与魔法を使って力任せに切るだけなので技術も駆け引きも全くいらなかったのだ。


だから、その癖が抜けず剣を振るうのが基本大振りで隙も多い。そのため純粋な剣術勝負だと俺はゴブリンパイセンにボコボコにされたのである。


なら、その癖を直せばいいじゃないと思ったそこの君、俺もそう思い矯正を試みただけど無理だった。もう身体が高いステータスで殴る脳筋の動きが染みついてしまっていたからだ。


だから、………その剣術の才能が無いわけではないんだよ?いや、ほんと……一応ちゃんと振れるし……ノーカンってわけではないんだよ?……ただ……そのね?相手の動きに合わせるっていうのが無理なんだよ。


そんなわけで俺は剣術が苦手だ。スキルが有るにも関わらず。


だから、今日は


「剣以外の武器で何が合うか、探そうと思います」


「わぁーー」


「……わぁーー」


パチパチと手を叩く美少女達は、もちろんアイシアとレイアだ。

彼女達の俺を見る目はとても優しい。その理由は、もちろん先程ゴブリンに剣術でコテンパンにやられているのを見ているからだ。

他の武器を使う方がいいと心の底から思っているから、彼女達はこんなにも優しい目線を送ってくれている。


本当にいい女だぜ!お前達は。


「さぁ、こちらに多種多様な武器をご用意しました。これを俺が一回ずつ使ってゴブリンと戦うので、使えてると思ったら教えてください」


「…りょ」


「うん、分かったよー」


うんうん、女の子声援はやる気が出る。さっきゴブリンパイセンに負けて負った心の傷があっという間に癒される。


よし、では行ってみよう!





槍の場合


俺は体の重心を意識しながら槍を両手で持ち、ゴブリン目掛けて突き出した。


「シッ!」


「ギャギャ(笑)」


俺の気合の籠もった一撃は、明後日の方向に飛んでいきゴブリンに擦りもしなかった。


「こなくそ!偶々当たらなかっただけだ!」


とパイセンに笑われながらも俺はもう一度構直し、突く、突く、突く、だが全く言っていいほど当たらない。間合いが剣や拳と違って遠すぎるせいで当てにくい。


「ギャギャ(笑)」


「うっせえ!パイセン」


「グギャ!?」


槍が全く当たらなくて、パイセンに八つ当たりしてこの戦闘が終わった。


「やめた方がいいと思うな〜」


「……下手」


「ぐはぁ!」


二人の評価を聞き、俺は分かってはいたことだが心に傷を負った。



短剣の場合


「まずは、接近戦で!」


そう言って俺はゴブリンパイセンに短剣を振るうも、


カキンっ!


俺の握りなんてどうでもいいだろう精神で持っていたナイフはゴブリンパイセンの切り上げによってあっさりと弾き飛ばされた。だが、今回はそのままでは終わらない


「ナイフっていったら投擲だよな、おら」


俺はもう一本片手に持っていたナイフをゴブリンに向けて投擲ひゅ!ガッ!


「ギャギャ(笑)」


目標から大きく離れた木に着弾、パイセンに笑われた。


「ゴブリンの巣に行った時から、何となく分かってたよ!」


「グギャ!?」


またも、俺の八つ当たりで戦闘は終わった。


もちろん二人の評価は


「他の武器を探した方がいいと思うな〜」


「向いてない」


「ぐはぁ!」


さらに深い傷を負った。




弓の場合


ターゲットを目標に入れて


「シュート!」


「グギャ?」


木の上から放った俺の矢はパイセンの足元に突き刺さった。

その後もエイムが悪いようで、矢筒の中にあった矢を全て使っても当たらなかった。


当然二人の評価は


「やめておいた方がいいよ」


「……矢が勿体ない」


「ぐぼぇ!」


さらにさらに深い傷を負った。


そんな感じで、最後の一つまで使ったが全滅どれも俺に適性は無かった。


そして、最後に残った武器は


「……ガントレット」


いやもう、勇者感ゼロ。分かってるさ、ここまで来たら俺に残されたものは拳しかないことくらい。だけど、その事実に目を背けてた。

男なら、槍とか剣で無双したいじゃん。普通。


だが、俺には無理だと分かった。

なら、俺はこれから拳一つで生きていく!


「行くぞ、パイセン!はぁぁーー!」


「グギャぁ?」


俺は気合の声を上げながら、パイセンに突っ込み拳を振り抜いた。


もちろん外れるなんてことはなくパイセンの顔に俺の拳がめり込み、吹っ飛んだ。


(きんもチィィィーーーー!)


「完全勝利!」


「流石レイクくん!カッコいいよ」


「ん……完璧なパンチだった」


こうして、苦難の末俺の武器はガントレットに決まった。

だが、俺は相棒を見つけたともに多くの物を失ったそんな日だった。



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