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一億歳のお婆ちゃんの知恵袋  作者: しら玉草
第1章 白灼の竜姫
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第17話 白灼

連!日!投!稿!褒めてください!


 アイラは商館の屋根の上から明らみ始めた空を見て考えていた。オオノヅチの倒し方を?いや違う、オオノヅチの臭みの抜き方をだ。


「んー、お腹に草詰め込んだら肉の臭み取れるかなぁ、でもそこまでして食べる価値あるかなぁ、美味しそうには見えなかったしなぁ」


 フラウには臭みの強い肉を食べる時は香りの強い草で誤魔化せと教えられた。それが人間の知恵というものらしい。そういうフラウは草を詰む様な器用な手は持っていないし草を食むような口の構造も持っていない。そもそも大抵の肉は問題なく食べてしまうし、どうしても不味い時は消し炭にしてしまう為参考になった試しが無い。


「フラウ婆ちゃんならどうするんだろうなぁ。んー、やっぱ消し炭かなぁ。それも勿体ないよなぁ、どーしよっかなぁー」



 そんな時、木材やガラスの割れる大きな音とともに建物が大きく揺れるのを感じた。アイラが外へ出た時の窓が窓枠ごと弾け飛び、空いた穴から大きな顔が覗く。オオノヅチだ。


「おっと、来たね。………あれ?」


 しかし頭までは良かったものの、胴体で引っかかり、バタバタと暴れて頭を上下左右に振っている。意外と可愛いかもしれない。

 やっと胴体が抜けたかと思ったら今度は地面まで落ちていってしまった。あの体型では当たり前の事だろう。アイラは自分も降りるべきかと地面を覗き込んだその時、オオノヅチの身体が潰れるように平たくなったのが見えた。落ちて潰れた訳では無い、その姿はまるで跳躍する前に膝を曲げる様な動作に見えた。

 案の定その次の瞬間にはオオノヅチは二階建ての建物を遥かに越える華麗な垂直跳びを披露してくれた。なんという身体のバネだろう、そしてなんという強度だろう。

 オオノヅチが屋根へと降ってきたせいで屋根瓦が砕け建物全体が沈む様に揺れた。地上階に居た人達は立っていられないことだろう。もっとも…人が残っていればの話だが。



「さて…と、君はお母さんの財宝って事になるのかな?んー…違うか、持ち主の居ない財宝はただのゴミだもん。古竜の血は毒だからね、神聖なものでも何でも無い。耐えられなければ死ぬし、馴染んでも持ち主に捨てられれば何かが壊れていくんだ。君も死んだ方が楽だったね。私が…殺してあげる」


 死んだ方が楽…アイラは自分で言っておきながら心に棘が刺さる。

 リッシュを財宝にしてしまった。初めて出来た友達を自分の物にしたいと思った。魔が差したんだ。古竜の本能だったのかもしれない。血を飲ませようとした時に我に返り踏み止まった…つもりだった。まさかリッシュが血を舐めていたとは思いもしなかった。

 リッシュには捨てられた財宝の行く末を教えなかった。それは友達で居たかったからに他ならない。捨てられないように媚びを売る人を友達とは呼ばない。

 捨てるというのは興味を失い忘れる事。忘れた時、馴染んだはずの血が宿主を苛む事になる。つまりリッシュの事を忘れないでさえいればリッシュが壊れる事は無い。そう、忘れなければ良いだけの話なのだ。


 まぁ…そもそもリッシュがアイラを友達だと思ってくれているかどうかは別の話ではあるし、アイラは一度それを否定された身だ。

 全部自分の独り相撲なのではないかという考えがアイラの頭を過ぎり、悩ませた頭は更に重くなっていく。元々考えるのは苦手な性分なのだ。


 そうして考え込んでしまったアイラを我に返したのはオオノヅチの口から発せられた激臭。今まさにアイラを飲み込まんとして大口を開けていた。


「もう!臭くて何考えてたか忘れるでしょー!口閉じなさい!」


 オオノヅチの下顎をすくい上げるように蹴り上げ、強制的に口を閉ざされたオオノヅチは天を仰ぎ見る様に浮き上がった。


「ヘビかトカゲか分かんないけど、竜を食べようだなんて一億年早いよ!」


 今度は上がった頭に横から回し蹴りが入りオオノヅチは屋根から転がり落ちて行く。



「あれ?けっこう強めに蹴ったのに壊れてないな」


 オオノヅチの体は弾力性があり、衝撃を逃がすのに適しているらしい。蹴り飛ばして落とされても特にダメージを負った様子は見られない。


「ほへー…良いね。焼いちゃおうかと思ったけど、良い使い道があったよ。君は革にするね。良い服になりそうだ。と…なれば…体は無傷で殺したいな」



 アイラが口を大きく開けると口内に炎が揺らめき、煌々と輝く火球が出来上がる。青白く輝くそれは火球と呼ぶよりも光球と呼ぶ方がしっくりくる。

 オオノヅチを焼くのに過剰な火力を持つであろう光球。これこそがドラゴンブレス。これを吐き出せば熱線となり、全てを焼き付くし火の海が出来るだろう。

 しかしアイラはそれを吐き出すどころか口を閉じて飲み込んでしまった。


「行くよ、これこそがフラウ婆ちゃんのとっておきの強化魔法!」


 アイラの白い肌が熱を帯び始め、リッシュから借りているドレスがチリチリと煙を上げて焦げていく。その体はまるで焼いた鋼の様な温度となっていた。温度だけでは無い、アイラの白かった肌もまた…焼いた鋼の様に赤く染まっていく。


 オオノヅチの頭を目掛けて飛び降り、そのまま地面へと叩き伏せる。オオノヅチの頭蓋にはひびが入り、地面へと伝わった衝撃が小さなクレーターを発生させた。


 熱というのはエネルギーだ。温度で言えばドラゴンブレスをそのまま吐いた方が遥かに高温だろう。しかし本来一瞬で使い切ってしまうはずのそのエネルギーを体に宿す技こそがこれであり、白から赤へと体色が変わる様から付けられた異名こそが白灼びゃくしゃくである。


「あ、凄い。まだ生きてるんだね。それに私の体で焼けてない」


 オオノヅチの頭の上にまたがったアイラはそのまま何度も何度もオオノヅチの頭を殴り続け、頭蓋は粉々になるが革は破れていない事にテンションが上がっていく。


「あははは、良い、良いね!」


 テンションの上がったアイラの乱打はオオノヅチが絶命した後もしばらく続いた。落ち着いたのは殴っていた頭部の革がボロボロに破れた後だった。


「あ、あー…はははは、まぁ、頭部は要らないし別に良いや。あー…殴り足りないなぁ…まだ体が熱いよ」



 自分の役割は全うしたと判断したアイラは半壊した商館の中へと入っていく。実際は役割以上の事をした。やり過ぎていると言っても過言では無い。

 引き付けるだけで良かったフィディック商会の人達は生きている人を探す方が難しく、建物は今にも崩壊する寸前だ。

 もちろん直接の原因はアイラでは無い。オオノヅチを放った従業員のせいであり、殺したのも壊したのも大半はオオノヅチだ。

 それでもアイラであればその多くを守る事も出来たはずだった。もちろんそれもアイラが悪かった訳では無い。守る義務も義理も無い。ただ…その気が無かっただけだ。



「さて…とー、リッシュは無事かなぁー」



書きたかったシーンは筆が進みますねー。連日投稿出来ました!

次はリッシュと合流ですね。

一章もそろそろ終盤かな。いや、章分けしてないですけども。

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― 新着の感想 ―
[一言] めちゃくちゃ書くじゃないですか!!!!すごい!!!!(語彙力) 炎を飲み込んでの強化魔法ですかー。いよいよ化け物じみて来ましたねー。龍だから化け物みたいなものなのかもしれませんけども!!
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